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16.~3階通路~

薄暗いレストラン街と階下から聞こえる感染者の発する呻き声のおかげで不気味な雰囲気が一層深まっていた。


「ここからだと、南側まで移動することになりそうだな?見張りの姿も…早速見つけたぞ、向こう側から1人歩いて来てる、反対側から迂回するぞ」


浩平は見張りの人間とは正反対の通路へと低い態勢を保ったまま移動しはじめ、それに続き山田と俺も移動を開始する。

モール内には各店舗を回るための通路がある、店に沿って通路がありその通路同士を架橋させる橋があり要所要所に各階に移動するためのエスカレーターが設置されていた。

南側へ向かったとして次にエスカレーターがある場所はそんなに離れた位置ではない、仮にそこから降りれ無くとも建物の壁際にも階段があるハズ、ただ感染者と居合わせた時に階段だと逃げ道が限られるというだけのことだ。

そのように次の展開を予想していたが、このモールについて地理に疎い優の考えは否定されることになる。通路を進みながら壁際にあるはずの階段に目を向けていたが階下に続く階段は姿を現すことはなかった。そのことごとくがシャッターに阻まれ通ることが出来ないようになっていた。

いつまでも使用不可な階段に思考を張り巡らせ、一つの情報に脳を占拠させることは愚策だと感じたのもあり、次に友人や知人のことを思い浮かべていた。

確かこの館の南側っていうとラ・フォーレというフランス料理店がある。といってもフランス風なだけで客のオーダーに自由度があって、いきなりカレーが食べたいと言えばそれなりのモノが出てくるような創作料理店でもあった。たまに愛オンモールにに来ても通り過ぎるだけでその他と同じレストラン街の店って感じだったが、この店では大橋元康の彼女が働いていた。何処かに避難しているなら助けたいとも考えていた。

すると突然前にいた山田とぶつかる、前を確認すると浩平が手をかざし俺達を制止していた。

見張りがいるのだろうか?

その先を確認したい所だったが死角になってみえない。無理にみようとしてこちらの動きが向こうにバレてしまっては、隠れて進んできた意味がない。何より捕まったらどうなるか、それとも見張りの人数が少ないなら俺がどうにかしても良いかもしれない。…違うなそれでは3階のグループを刺激してしまうかもしれない。やはりここは静かに行動するのが良作と言えるだろう。

暫く待っていると浩平が口を開いた。

「行ったみたいだな。優には言ってなかったな、多分見張りの態勢は今の感じだと前に居た時とあまり変わらないみたいだ。30分から1時間に2人ずつ南側から北に向かって様子見をするだけだ。異常があれば後ろに戻るか直ぐ連絡する。それを持ち回りの者がローテーションでやっている。俺達も抜けたから人数も少なくなってるハズだし警備もザルになって居そうな感じがする」


「そうだね、前は2人態勢だったけど、何故か1人になってるみたいだしね。皆あいつらが少しおかしいのに気付き始めたのかな?」


安心したのか山田は少し饒舌な感じで話出した。見た目には分からないが意外と臆病な部分があるような気がする。いや、ここでは浩平も含め2人して前のグループの異常性をなまじ知っているだけに馬鹿には出来ないのかもしれない。


「それで、これからどうする?見張りも少ないんなら早く下の階に行って他の人と合流した方が良くないか?」


恐ろしいのならこんな場所は早く退散するに限る。守る対象が2人居るだけに少し心配性になってしまう。


「ああ、分かってる。だけど焦るのはいけない、見つかってあいつらとイザコザになるのは不味いからな。瀬戸内さんの怪我も心配だしよ、ただ見つかった時は頼むぜ、優、山田さん」


「何を頼むんだよ」


「俺の安全だよ」


「いやそこは各自全力で逃げの一手でしょ」


少し冗談を交えながら俺達は進み出した。


俺たちはその後も注意深く進み、目的地のエスカレーターまでの道のりを少しずつではあるが埋めていく形で進んでいた。


間もなくしてエスカレーターに着くという辺りで異変に気が付いた。


「…が!……べぇ!早く!!逃げろ!!」


「やばいやばいやばい!!!ぎゃあぁーーーー!!」


遠くから人の叫び声が聞こえてきていた。

何か出たのか?明らかに異常事態だ。


「なんか向こうの方で誰か叫んでるように聞こえてないか?」


「ああ、ん?ちょっと待て、隠れろ、見張りが戻ってきてる!」


浩平が前に進もうとする俺たちを静止し、エスカレーター側から隠れるように身を潜める。

またか、慎重に行かなければいけない場面であるが、さっきから隠れてばかりだったことに辟易していた。


一人また一人と人間の声が少しづつではあるが増えていることに気がつく。

なんだ?言い争いか?


何人かの男が一人の女に詰め寄っている。


「また暴走したのか?ちゃんと管理してんだろうな!!笹川!」

「ちょっと!あたしに生意気な口きかないでくれる!?部下の教育はちゃんとしなさいよ?それと、あんまりお兄ちゃんを刺激しないでくれる??」


女は先に詰め寄っていた男とその後ろで手を組み様子を覗う男にそう話していた。


「兄貴ってもう化けっ」

「なに?誰のこと言ってるわけ?どんな姿をしててもお兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから!今度はアンタを喰わせるわよ」


喰わせると言われた男は言葉が出ないようであったが怒りに顔を歪ませており、その様子に後ろにいた男が仲裁に入っていた。


「分かった!分かったから!!」


「そう?わかったんならさっさと配置に戻りなさい?ここはお兄ちゃんに掃除させるから!」

「掃除ったって、喰わせるだけだよな…。」

「もう!うるさいわね!新井!!アンタは早く部下を落ち着かせてきなさい!!」

「分かってるけど!あんまり餌以外ってか仲間を襲わせないようにしてほしいんだよ!それだけは覚えていてくれよ!そうじゃないと益々逃げる奴が増えちまう!」

「それはそれで困るわねアンタたちの命なんかどうでもいいけど私らが飢えるのは勘弁なんだから」


そういって女が目線を下に向けた先には四足歩行で連れ添う筋骨隆々な何かがいた。

口は裂け牙が生え、目は無く退化しているようであったが筋肉の発達が異常ではち切れそうなほど膨れ上がって脈動していた。


「浩平、なんかあのエテ公以外にもヤバい奴がいるみたいだな。どうなってんだ?」


「知らねぇよ、あんなの見たことなかったし…」


どうやら以前いたグループの情報もあまり当てには出来ないようだな。


「ねぇ、二人とも何があったの?俺には暗くてあまり見えないんだけど」


どうやら山田の視力はあまり良い方じゃないみたいだ。ガタイの良さと視力は関係ないものな。


「リーダーみたいなやつと化け物を連れた女が何かもめているみたいです、女はさっき言っていた笹川と同じ名字で、人を引き連れていたのは新井と呼ばれていました。力関係は女の方が上みたいですね」


「女の人と対峙していた男が新井なのか?それにしても弱気だったね、もっともあんな化け物がいれば流石に威張り散らすこともかなわないか。女の方が俺の知る笹川という女性なら本性を出したとみるのが良いかもね」


はっきりとは会話の内容が聞き取れないようで予測を立てているような話し振りをしている山田に浩平は答えた。


「そのとおりですよ、山田さん。あいつらさっき言ってた新井と笹川です。妹の方は表向きおとなしそうでしたが、もしかしたら今は猫かぶるのも、辞めたのかもしれませんね、それにしても新井の弱腰っぷりにも驚きましたが…」



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