15.~他勢力~
「山田さん!浩平!大丈夫か!?」
化け物を倒しそのままの脚で二人の下へ向かう。
「遅いぞ!優!待たすんじゃねえよ」
「心配してたよ!」
2人はそれぞれに喜びの表情で俺を迎えてくれたのだが、
今のところはバリケードが効果を表しているか不安があった。
「バリケードの効果はどうだ?」
浩平が指差し言う。
「あれ見て見なって、アホだ」
視線の先には感染者の姿が、あったにはあったが唯一の広がりを見せる人1人が通れるスペースに五体ほどがぎゅうぎゅうに詰めて通れなくなっていた。
こいつらってこんなに馬鹿なんだなぁ、なんでこんな奴らが堂々と闊歩してるんだ。
直ぐ駆逐されそうなモンだが、やはり人数に問題があるのか?
通路を通れないでいる者たちの後ろに視線をやる。
これまたギチギチという音が聞こえそうなくらい詰め掛けていた。
多分後ろの方に居る感染者は俺らに気が付いてない、が前へ前へと押す力が増している様にみえる。
他の感染者に釣られてやって来ているのか?
それとも臭いか、音か?
もしかしたら熱か?それは無いか隠れてやり過ごすことが出来なくなるからな、感染者は基本的に鈍感だけど、こちらを感知しうるのであれば話は別だ。
何処かに隠れていても感染者は近付いてくるということになる。
そうなれば、常に逃げ続け移動しなければならなくなるのは明白だった。
それが出来ない者たちは戦うか、死ぬ、もしくは感染者となるだろう。
先の事は考えても仕方がない事だ。目先の脅威から離脱する事が先決だった。
今考えていた事なんかは瀬戸内とも話し合う時間を持たなければ、そう思考していると浩平から呼ばれる。
「なんだ?もしかして救出が終わったのか?」
「救出は成功だ。山本さんは助かったが瀬戸内さんが少し怪我をしたみたいだ」
「瀬戸内さんが怪我したのかい?」
普通の人間である瀬戸内の怪我について気になっていた。感染の疑いが出てくるのだが、そんなコトとは関係なく山田も心配しているようであった。
「ちょっと無茶したみたいですね。とりあえず俺たちはここから撤退だ、イケるか?優?」
山田の質問に返事をしつつ浩平は視線をこちらに向けて言った。
化け物の攻撃を躱し損ねた時に付いた傷はもう完全に治っていたが、衣服の袖に血が付いたままだったので確認をしているのだろう。
「ああ、俺も軽傷で済んだし直ぐにでも移動可能だよ。ところで帰りはどうする?いくらバリケードが強固でも感染者を引き連れて拠点に戻るわけにはいかないだろ?」
そう浩平に伝えたところで山田が発言をしてきた。
「ここからは俺の出番かな?さっき化け物が出てきた通路があるだろう?」
「まさか…」
何か嫌な予感がした。
「そう、そこを通ればちょうど他の館に繋がる道があるから、一旦は他の館を迂回して進もうかと考えていたんだけど、あんな化け物が出て来るなんてね…歩きながらで良いかな?」
そう言って山田は先行し、俺たち2人はそれに沿う形で歩き出す。
「このモールは大きく分けて6つ建物で構成されててね、その建物同士が廊下で繋がれてて扇状に広がって上と下の三つずつが繋がっている。北館と南館でさっきの化け物が来た道がその中心に繋がってたんだ」
「まぁそこを通って北館から元の場所に回って戻るつもりだったけど、もしかしたらあっちは階段の傾斜が緩やかに2Fに繋がってるもんだから、今考えてみると行かない方がいいかもしれない。」
そう言って山田は次に行く経路を考えていた。
「傾斜が緩やかだと感染者が上がって来てると見てよさそうですね」
浩平はそう言ってマイクに手をやる
「すみません今から中央広場に行くつもりだったんですがゾンビが多そうなので、誰かゾンビが少ない場所を探してくれませんか?今いる場所は出入り口がないので、とりあえず北館を目指そうと思うんですが…」
俺も浩平の意見には同意だった。
感染者が群がっていたバリケードのちょうど直ぐ横にそれると②番の出入り口がある。ここを使いたいのだがバリケードを作る場所がズレてしまったのだ。
もう少し早くに気が付いていればよかったのだけれど…。
そう考えていると浩平の様子が変わる。
「皆、どうやら中央方面はヤバいみたいだ」
皆が考えていたように中央広場は感染者でいっぱいなのか、はたまた既に上がって来ていて二階も危うい状況なのか?
「感染者が多いのか?」
俺の質問はどうやら半分が正解で半分が間違いらしい。
「ゾンビも多いが、さっきの変異体も何体か居るみたいなんだよ」
「あんなのが他にもいるのか?勘弁してくれ、今度ばかりはピンチか?」
浩平と話をしていると山田が割り込んでくる
「ねえ、二人ともちょっと良いかな?なにも二階部分だけで話を広げなくても良いんじゃない?ちょっと嫌だけど3階を通るのはどうだろ?」
普通に考えればそうだな、なぜその意見が出なかったのか?
「なぁ、山田さんもそう言ってるし時間もない。浩平3階から回れば良いじゃん」
「そうか、優は知らないのか山田さんが嫌がった理由が…3階は他の連中に占拠されてるんだよ」
モールの連中は瀬戸内達だけじゃなかったのか。
「後で話す、今は緊急事態だから3階へと進もう。」
そう言って浩平は1度引き返した道を急ぎ足で歩き出した。
しばらく3人で歩いて先程の簡易インフォメーションを通り過ぎた先には電源が通っていないエスカレーターがあった。
「ここから上がって他の場所からもう一度おりよう、3人で固まっても、見つかりやすくなるし、隠れて行動するのは慣れてるから俺が先にいく3Fで何もなければ呼ぶよ」
浩平は態勢を低くし音を殺しながらエスカレーターを登り始めた。昼なのに電気の節約のためなのかモール内は薄暗く、非常用の看板が緑色に発光して如何にもな雰囲気が漂っていた。遠目には分かりづらいだろう、そういった目論見もあったようで近くに居ても音さえ気を付ければ移動も困難ではない、そんな印象が浩平から伺えた。
少しして浩平が3Fに到達する…アレ?そのまま歩いて行ってしまった。俺は横にいる山田を見る。
山田は首を左右に振り多分偵察も兼ねてると言った。
程なくして浩平が戻ってきたのが見えた。なるほどね、焦って損した。後ろをみると感染者の圧力が大きくなっているような気がする。バリケードが突破されるのも時間の問題だ。なるべく早く移動しなければ…。
再びエスカレーターの3F部分に目をやると、浩平がジェスチャーで来いと促す。俺と山田は音を立てないよう、姿が捕捉されにくいよう、態勢を低くして注意深く上がって行った。
「どうやらこの階にゾンビの姿はなさそうだ、ただ見廻りをしている人間は変わらず居るみたいだけどな」
さっき言ってた3階の連中か、先程もそいつらとの接触を警戒して辺りをみていたんだな。
人気は無く、階下から聞こえる感染者の呻き声が辺りを埋め尽くしていた。
「お前には話しておこう」
俺達を先導しながら話しだした。
「俺とここに居る山田さん、そして瀬戸内さん達は元々は3階の連中と行動を共にしていたんだ」
占拠されていると言っていた事から多少のいざこざがあった事は想像していたが、まさか仲間だったとは…。
「今も繋がりはあるのか?」
3階部分にはレストランなどの店が多く、食料の調達や調理をすることも出来るし、調理器具の刃物なんかは、武器にも使えそうな気がする。
そして何よりエレベーターさえ気を付ければ、感染者はあまり上がって来ることは無い。
そういった条件が揃っているにもかかわらず、感染者の多い1階部分で籠城する理由はなんなのかわからなかった。互いに住み分けをしているのかもしれないが、何かあった際の危険度は1階の俺達の方が上だ。
「多少はな、あるにはあるけど基本お互いに干渉しないのが向こうのリーダーとの決め事になってる。結構危ない奴らなんだよ」
「危ない?」
感染者も脅威ではあったが切羽詰まった人間自体も脅威である事は俺にもわかるが…テレビや映画で観るような危険な行動をする者がいるという事なのか、何があったかを聞いてみれば分かることだ。
「先ずあいつらのグループを指揮する奴だ。新井はヤバい、今俺達がここに居る事を悟られたら殺されるかもしれん」
「それと、次に危ないのが笹川兄妹だ。あいつら2人はなかなかのサディストだ、敵対勢力と対峙した時なんかワザと追い込まれた振りをして獲物を捕まえる」
「で、捕らえたあとサディストの本領発揮ってワケか」
そう言って苦笑いをしながら山田をみると、思い出したく無い事があるかのように頭を振っていた。
トラウマ?
「普段の行いがサディストってわけじゃない、そういう趣味が発覚したのは、山田さんが発見したから露呈してしまったんだけどさ、まぁ他の勢力の情報とか聞き出したりするために、多少恫喝みたいな事もしていたが、まだ味方でいるウチは良かった。今は違う、俺達は前とは違いもう仲間じゃない。捕まったら最後だ、何をされるか分からないぞ」
何をされるのか気にはなったが殺されるよりまだマシだろう、そう考え発言をしたが、新井に見つかって殺された方がまだマシだと2人は言っていた。いったい過去にどんな事があったのだろうか、何を見ているんだこの2人は…。




