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14.~遭遇者~

囮作戦決行中だというのにトラブルが発生した。

感染者の誘導に成功して、何とかバリケードも築いたもののどう駆逐したものか考えていたところであったが、目の前には凶暴な何かが襲い掛かっていた。

くそ、目の前のコイツをどうするか。倒せるのか?


「山田さん!浩平!コイツは俺が引き受けるから、感染者の方をできるだけ減らしておいてくれないかっ!?」


こうやって化け物と対峙している間にもバリケードの隙間から感染者が少しずつ這い出てきていた。


「それはわかったけどよ!無理はするな!感染者だけでも手いっぱいなんだからな!ヤバくなったら逃げるぞ!」


「てか今すぐ逃げたいけど、目を離したら殺されそうだ」


意味がわかったのか周りの雑音駆除のため浩平はバリケードの方へ向かおうとしているのを確認した。

そんな浩平に向かって山田は緊急時にも関わらず俺の身を案じて何かを話している。


「そんな!小此木君に加勢しないのか?」


「あいつなら大丈夫ですよ、それにバリケードの方もちゃんとしなきゃ全員奴らの餌食です。すぐるに加勢してもゾンビに囲まれたら終わりですよ。」


浩平が言い終えた瞬間毛むくじゃらの化け物は覆いかぶさるように俺に体当たりをしてくる。

躱せるか…?横っ飛びに躱したものの服の袖が引き裂かれていた。いやギリギリ掠めていたのか腕から赤い液体が伝っていた。

前足の爪で攻撃してきたのか、異形な姿をしているがちゃんと手は使うんだな。

ちょうど俺と浩平たちの間に挟まるような形になっていたが、身体能力が向上した俺でもなかなか躱すのが難しい。



「はやくいけ!!周りには構ってられん!!」



後ろの浩平たちを気にも留めず化け物は、こちらの出方を覗っているようだ。

だいぶと好まれているのか?何で俺を狙うんだコイツは、こんなのにモテてもしゃあない。

化け物は執拗に爪による攻撃を俺に繰り返し行っていた。全身ひやひやしながら躱しつつその風圧に恐怖を感じていた。

すっとろい感染者なら何とかごり押しで通せるものを中々に俊敏な攻撃を繰り出す化け物に嫌気がさす。

これまで優は痛みを感じないということと、すぐに治癒してしまう体に舞い上がり危機感が少なくなっていたが、その考えもこの事態ですぐに修正しなければいけないと感じていた。

ただ何処まで身体が破壊されれば危なく感じるのか、これまで一人で感染者狩りを行う優は何度も、傍から見れば窮地と言える状態に陥っていたがその度に生きて自宅のマンションまで帰っていた。

どうすれば自分より大きな相手に通用する攻撃が出来るか、こちらから攻勢に出るか?しかしながら相手は中々早く鋭敏だ。かわされれば自分の動きはコンマ数秒隙が出来てしまう。そこに攻撃を受けたら大きなダメージを負うだろう。自身の経験から今回導き出された答えはカウンターだった。

イノシシのように猪突猛進してくる者にはカウンターをお見舞いするのが効果的だと先ほどから考えていた。


「いい加減に!しろおお!!!」


単調になりつつある攻撃の瞬間を狙ってバットを渾身の力で叩き込む。

金属が固いものを打つ時のような音が響き渡り二度目のスイングをたたき込もうとしたが、すぐさま反対の手で攻撃を阻まれ、それを回避する。

ダメージがあったのか追撃の手が鈍くなっていた。もしかしてイケるか…。

そう頭に考えがよぎったが、油断は許さない。

攻撃の手が止まったのはこの一瞬だけで、再び攻防が続いていた。

少しだけ片方の攻撃が遅い、どうやらさっきので化け物の手は痛めていたようだ。

痛めている方で攻撃を仕掛けてきたところを突く、これを何度も繰り返し行っているとついに片方の手がぐちゃぐちゃになっていることに気が付く。

それでも単調な交互に爪による攻撃を繰り返してきた。ここまで来ると滑稽だな。

初めは早くて避けるのもギリギリで見えなかった攻撃にもカウンターを繰り出すことが可能になり冷静さも取り戻していた。

次はどこをつぶそうか、そんな考えさえよぎっていた。バランスよくもう片方も潰してやるよ…。

そうして単純な攻撃を避けもう片方の手を潰してやろうとバットを振った瞬間、相手の動きが止まる、やばい…。

そう思った時にはバットを握られていた。おかしいな、少しは知恵があったのか油断してしまった。化け物はバットを持ち上げ振り回す。

一瞬の出来事でバットを握ったままでいた俺はそのまま地面に打ち付けられてしまった。

地面が反転し身体が思うように動かない。痛みはなくても平衡感覚なんかは健在なのかグワングワンと景色が歪み黒い影が近寄ってくる。

頭に圧力が加わる、持ち上げられているのか…?やべぇなあ、身体は思うように動かないしこのまま殺されるのか…。

少しづつ景色が戻ってくる、化け物は大口を開けてこちらに近づいていた。

ブラリと垂れた腕には何かの感触があった。これは!

その瞬間、化け物の血走った目に向かって身に着けていた山人刀の刃を渾身の力で突き立てた。

聞いたこともない奇声を上げ、俺の頭を掴んでいた手が離れ、放り出される。化け物は無茶苦茶に暴れだしたが、この時には身体の感覚は戻っていた。立ち上がり走って近づくと、踵を返し反対方向を向いて逃げようとしたので相手の毛を掴み素早く背に飛び乗った。

暴れ続ける化け物だったが山人刀を掴み奥へ奥へと差し込んでいくと倒れ込み痙攣の後、静かになった…。

…助かった、今度ばかりは自分の自惚れに殺されるかと感じた。


➂番出口での準備中バットだけでは心許ないということで山田に持たされた山人刀。

これがなければ喉を噛み千切られ俺の回復は追い付かず絶命していたかもしれない。

いくら身体能力が向上していても一瞬の油断が致命的になることを優は自覚しているつもりだっただけに自分の認識の甘さに嫌気がさしていた。しかし、ただの感染者以外にこんな化け物が存在したとは考えもしなかった。

人間が死んで腐っても動き回るくらいだし、噛みつかれても俺のように身体能力が向上し、しかも発症せずにいる者もいるんだ。

あんな化け物もいると考えることも出来る、動物も発症するのか?そう考えながら絶命した化け物の顔を除く。

人間の顔だよなぁ、しかも変なおっさん。人間が発症すると不死者のようになる、俺のようになる、化け物に変化する?

もしかしたら俺も危ないかもなぁ。不安だが今は考えてもしょうがない。こんな世の中だ、少しの自惚れがが命取りだ。こうして倒れているのは自分だったかもしれないと優は考えていた。

今は浩平たちが気になる。あっちのバリケードは何とかしてこちらまで広がらないよう頑張ってくれてるみたいだな。

こちらの方には感染者の姿がない。早く言って合流しよう。

俺は化け物から山人刀を引き抜き再び腰に刺した後、飛んでいったバットを拾って、浩平たちの方へ向かった。



いい仕事した、山田は優秀

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