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13.~囮作戦&遭遇~

浩平と山田は耳を塞ぎながら感染者達の動向に目を向けていた。

俺は手が痺れない様に、少し服の袖を引っ張って空間を作りバット握り締め、始めは軽くそして少しずつ手すりを叩く腕に力を込めていった。

感染者の呻き声を除き、モール内で音を発信する者はおらず、金属音が反響していた。

まばらではあったが感染者達はこちらに気が付いたのか一体、また一体と俺たちの方へ近付いてくる。

まだだ…手すりを叩く音がこだまする。

奴らのほとんどがこちらに意識を向けて来るまで続けてやる。

下を見ると一階にいる感染者達までもこちらに向いて呻き声をあげていた。

感染者のプールって感じだ。

そんな事を考えながら作業していたせいか、感染者が目の前に迫っている事に気が付くのが遅れた。


「優っ!!来てるぞ!!」


浩平の声に反応し横を振り向いてみると感染者の腕が伸びていた。すんでのところで身を躱し、距離を取る。

ちょっと驚かされたが、こんなもので良いか。


「すまん、とりあえず逃げるぞ!」


「言われなくてもわかってるよ!沢渡です!ゾンビのほとんどはおびき寄せました!後は頼みます!」

インカムに手をやり、摘まむ仕草で報告をしている。何だか見たことある風景だ。

避難経路確保のため先に行かせていた山田の方に身体を向けて浩平と走り始めた。

後方を確認しつつ山田がやや前、浩平と俺が横並びの体制で囮を続ける。

ノソノソと歩く感染者は冷静に観察すると中々にどんくさいものだ。

早足で歩く感染者、前へ進もうとするが足が曲がって思うよう進めない感染者、その感染者にぶつかって倒れる奴、倒れた奴を気にも留めず

こちらに向かって来ようとするので、そのまま転んで這いずり進もうとする感染者、ドミノのようにぶつかりバランスを崩して倒れていく。

本当に生きている人間にしか興味がないようだ。

立っていても歩いていても倒れても、皆一様にこちらを見ている。

そんなに旨そうに見えるのだろうか、彼らのこれほどまでの飢餓感に何も同情するような価値観は持ち合わせていないので、ただの能無しに見えてきてしまう。

こういう時外国の能天気な連中だったら、かわいそうな感染者に人権を!なんてシュプレヒコールしながら餌を与えたりするのだろうか。

そんなことを考えながら距離を保ちつつ感染者が俺たちを見失わない程度におびき寄せる。

逃げ切ってしまっては陽動の意味が無くなってしまう、

自分たちの重さで半分以上の感染者は呻き声を上げつつも前進する力は失われていたため、前方にいた感染者くらいしか自由に動けるものはいなかった。

一度に相手をするには先ほどまでなら躊躇していたかもしれない数だったものが少しの間だけ戦えそうな雰囲気だった。

いくら多くとも鈍重な感染者、自分で自分の行動範囲を狭め、更に行動が遅くなっている。

山田の誘導に従い後ろに続いて通路を移動しているとインターネットの回線契約のための簡易インフォメーションがちょこんと設置している区画を発見した。

チラシやペン、契約書類が置いてあり、持ち運び出来そうなほどの机が何台か連なり、休憩用にソファまである。


「なぁ、これバリケードにならんもんかな?」


こうして三人で通路を封鎖することにした。

連ねていた机を三人で運んで横倒しにするこれを四列ほど、その後ろにはでかい観葉植物が植えてある植木鉢で横に倒れた机が滑りにくいようにする。

ソファも積んでおきたいので三人がかりで一番大きく重さのあるソファを運んで設置しようとするところで感染者は間近まで迫っていた。

早く早く早く!!何とか急いで設置して高さを稼ぎたかったのだが、そのまま横置きにして通れるスペースを埋めることにした。

封鎖した…とまではいかないが、通路を極力狭く通りにくくすることには成功したと思う。

感染者を面で制圧するのは中々難しい、そこで点でなら制圧とまでいかなくとも足止めや、更に進行速度を遅らせることも可能だろうとも考えていた。

ガタガタと足元の机を意に介さず進もうとする感染者はそのまま転ぶ、やはりオツムが足りんようだ。

力は強いが使い方がわかってはいないような感じだ。


そのまま壁のようにして障害物を利用してもそのまま押し切られるのは目に見えている。

では視点を変えてみようというわけだ。真っ直ぐにしか来ないのなら馬鹿でもわかる。歩いていてもトロイのに、足元が見えてないもんだからコケる。

壮大にコケる。もっと時間があったら刺さって抜けなくなるような罠でも作りたいもんだ。

と言って余裕でいれるような時間はない。

倒れるがゆっくりと立ち上がり…後ろから押されて再び倒れこちらをみて進んでくる、這ってでもくる。


「時間稼ぎになってはいるけど、結局のところ逃げなきゃいけない、まだ瀬戸内さんから連絡はなさそうだね」


山田のため息交じりな意見はもっともだった。


「結構な距離と時間は稼いだはずなんだけどまだ連絡はないのか?」


連絡手段の一つのインカムを持つ浩平に視線を向けた時、浩平の遥か後方に黒い影を発見した。

動物の様に四つん這い?であったが移動の速度が尋常で無く早い!!何だコイツ!?

見る見るうちに大きくなる影に驚き浩平を咄嗟に突き飛ばすと、そいつは俺の目の前で飛び上がって襲い掛かってくる!


「んなっ!?」


驚きのあまり変な声が出てしまったが、かなりテンパっていたようで、バットを振りかぶる仕草も忘れて、突き出してしまっていた。

ややカウンター気味に襲い掛かる影にヒットする。勢いが付いていた分ダメージがあったのか倒れ込むが、それでも牙をむき出しにそいつはグルグルと唸っていた。

毛むくじゃらの、人間??サルではない。でかいサルに人の顔がそのまま付いたような生き物、もっともこれを生き物と言ってしまってよいのだろうか。


顔面は血管が膨れ上がり、だらしなく垂れた涎に血走った目、地面にモール内の絨毯にめり込んだ危なそうな爪、殺傷能力は高そうだし、明らかな敵意を持っていた。




何か出た!すんごいの出たよ!

山田の存在が薄い、どこかで活躍してもらいましょう

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