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天使と悪魔と…あんた誰?


光の中で、闇の中で、それぞれの場所で声がした。

『いつまでかかっている?』

優しいが迫力のある声だ。

「「申し訳ありません!」」

エリオルは神に、ゼルヴァは魔王に…

『あの娘に残された時間はもう、そう長くはない』

どうしたものかと考えた。


佐藤深和の死後の在処、それは天界か、魔界か


その時、神と魔王にメールの着信音が鳴った。

それを開き…固まる。


『急げ、あやつが動いた』


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


定時に職場を後にし、私は大きくため息をついた。

自動ドアの先にいるのは、人間のふりをしたエリオルとゼルヴァ。

以前、同僚たちがイケメンと褒めていたので味を占めたのかもしれない。

ついさっきまで、オフィスで人の仕事をのぞいては何か言って遊んでたのに、いかにも待ってましたという雰囲気で立っている。

「よう、お疲れ!」

片手を上げてエリオル。

「さあ、帰りましょう」

そしてわたしの腰を引き寄せてゼルヴァ。

いや、待って。

私、失恋したばっかりなんですけど?

勘弁して欲しい。

側からみたら、私、イケメン外人2人侍らせている最低な女じゃない?

そんな気持ちを感じとっているのか、ふふっとゼルヴァが悪戯っぽく笑った。

あとで殴る。

「今日は何が食べたい?リクエストはあるか?」

歩きながらエリオルはニコニコと聞いて「やっぱり肉だよな!」と自己完結させている。

その後ろを私とゼルヴァが歩く。

「ちょ、近いって!」

「良いじゃないですか」

その瞬間だった。

「危ない!」

突然、聞き慣れない声がした。

腰を抱かれているせいで身動きが取れない。

あっ…と思った時にはゼルヴァの肩がぐっと後ろへ引かれた。

つられるように私も下がる。

「……え?」

私たちの目の前を、自転車が猛スピードで通り過ぎていった。

「あ…っぶないところだったぁ…」

思わず息を吐く。そして、「ありがとうございます」と振り返る。

そこに立っていたのは、見覚えのない青年だった。

ドラマに出てきそうな、IT系企業の社長のような姿をした彼は

「お怪我はありませんか?」と私に手を差し伸ばした。

「あ、はい」と私は答える。

ふと、視界の端でエリオルが彼を睨んでいるのが見えた。

「……知り合い?」

尋ねると青年は穏やかに微笑んだ。


「申し遅れました。如来イムと申します」


……あなたを迎えにきました。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


にょらい?

あなたを迎えに?


と、いうことは…


「仲間?」

イムを指してエリオルに尋ねると、彼は首を振った。

「どちらかといえば、ライバルだ」

「おや心外ですね」とイム。

「ライバルだなんて…業務提携している仲間じゃないですか」

業務提携ときいて、そういえば初めて会ったとき、エリオルが成仏という言葉を使い、グローバル化とか叫んでいたことを思い出した。

「まあ、こんなところではなんですから、移動しましょう。私の家でいいですか?」

イムはそう言って、私の手を引いた。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢


イムの家はとんでもないマンションだった。

家賃だけで、我が家の3ヶ月分は絶対軽く超えるはず。

「楽にして」なんて微笑んでるけど、楽になんてできないよ。

「エリオルたちは家あるの?」

「天界に」「魔界に」

ですよねー…

「私はこちらでも仕事を持っているので特殊なんです」とイムは笑った。そして

「では、あらためて、如来イムです、よろしくお願いします」

と名刺を差し出してきた。

【転生アドバイザー 如来イム】

「てん…せい?」

「簡単に言えば生まれ変わりのことです」

イムは何故かプロジェクターを出してきて説明を始めた。


『死後の魂の行き先は複数あります。

深和さんの場合、エリオルさんと共に行けば天界へ、ゼルヴァさんと行けば魔界になります。

そこから先は神、もしくは魔王の御心のままになるわけですが、そこでこの私が第三の道を提案させて頂きたいのです。


それこそが転生!


一定期間の修行を経て、また再びこの地に新たな命として蘇ることができるのです』


「勝手に誘うな!」

とエリオルが割り込んだ。

「彼女は僕と魔界で暮らすんです」

ゼルヴァも深和を庇うように立つ。

「決めるのは我々ではありませんよ、深和さんです」

その口調だけでイムはエリオルたちとの格の違いを見せつけてきた…気がする。

「私…?」

「ええ、死を迎えるその瞬間までに、お決めください」

いつでも迎えに行きますと、イムは笑った。

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