↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Arca  作者: あばんじゅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/63

第52話 咬合結界

 正八面体の咬合結界《こうごうけっかい》の各面に、人の口のようなものが出現する。束の間、咬合結界が展開図のように広がる。


 咬合結界を中心に、半径五メートルの境界線が浮かぶ。範囲内にはアルカとヘリクが入っていた。


「逃げるぞ…、ヘリク!」


 アルカは切羽詰まるように、ヘリクの腕を掴む。


 咬合結界は、境界線の範囲内にある物全てを封印する。しかし、封印までは猶予があり、一瞬でも境界線を超えれば、封印対象から外れる。そのため、アルカたちはすぐに境界線を跨がなければならない。


 アルカはヘリクに肩を貸し、歩く。


 そのとき――アルカの足が小太刀に貫かれる。シンの顕現だ。


 アルカは乱暴に引き抜き、ひた走る。創生の足にも痛みはある。だが、今はそれに構う暇はない。


 行く手を阻むように、ほう、とアルカの目の前に幾千もの軌道が浮かぶ。同時に、カエルの折り紙も迫る。


「どけ!」


 滑走する剣と折り紙を、刀で打ち払う。しかし、数に圧倒され、アルカは進むこともままならず、むしろ後退する。容赦ない集中砲火に当てられながらも、この場を切り抜ける策を考えるが、切れ目のない攻撃に頭は正常に働いてくれない。


 その瞬間だった。咬合結界の境界線が消えた。展開図のように広がっていた咬合結界はもとの正八面体に戻る。そして、境界線内を包むように黒い壁が現れ、囲まれる。


「まだだ!」


 アルカは塞がりかける壁の隙間めがけて、刀を投げる。しかし、すんでのところで壁は塞がり、刀は弾かれる。空虚な音を立てて、刀が地面に落ちる。


 咬合結界。一度閉じれば、二度と開くことがない。


 完璧な牢獄が完成してしまった。静かな空間の中、アルカとヘリクだけが取り残されるのだった。


 ◇


「ふざけるな!」


 感情のまま、アルカは咬合結界の壁を斬りつける。だが、傷の一つも付かない。鈍い金属音は結界内に反響する。音はやがて小さくなり、無音になる。あるのはアルカの荒い息遣いと、毒に呻くヘリクの声だけだった。


「なにか……なにか方法があるはずだ……!」


 願望に似た声で、諦めずに咬合結界の壁を観察するが、抜け出す方法など浮かばない。


 そのとき、アルカは結界内がやけに静かになったことに気づく。毒にもがき苦しむヘリクの声が、いつの間にか止んでいたのだ。


 ヘリクのほうを振り向くと、目前に命を刈り取るごとく、肉の触手が迫り来ていた。斬り払い、何事かとヘリクと向かい合う。


「久しぶりだな、アルカ」

「お前は――」


 久方ぶりの、邪悪さよ。


「お前に構ってる暇なんか…ないんだよ!」


 すぐにわかった。アルカの目の前にいるのが、シュドーを殺したヘリクだということに。善良だったヘリクの面影はなく、邪悪に満ちた笑みを浮かべるヘリクがいるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。