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Arca  作者: あばんじゅ


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51/63

第51話 開門

 大量の折り紙が、まるで横殴りの大雨のようにアルカたちへ降りかかる。だが、ヘリクが骨の礫《つぶて》で迎え撃つ。


 ヘリクが撃ち落としたカエルの折り紙は爆発せず、ひらりと落ちる。他の形の折り紙も同様で、破損させることで顕現の効力を消せるようだった。


 折り紙一つ一つは脆い。だが、量が多すぎる。加えて小さいため、少しの風圧で折り紙が舞い、仕留め損ねてしまう。


「う、ぐッ――」


 そのとき、幾千剣がヘリクに迫る。予兆もなく、突然のことだったため、ヘリクは兜鎧加装《とうがいかそう》ごと斬り裂かれる。ツアーは幾千剣を大量の折り紙の中に紛れ込ませていた。そのため、ヘリクは直前まで気づけなかった。


「すまないな」


 ツアーは謝罪を示すが、堂々とした態度だった。

 

 破壊されたヘリクの兜鎧加装の隙間を狙い、再び大量の折り紙が飛来する。ヘリクは迎撃するが、撃ち漏らした折り紙に容赦なく爆撃される。


 ――このままじゃ埒が開かない


 アルカは姿勢を低くし、ヘリクの背後から離れる。そして、迂回するように折り紙を操るフーリエへ走る。


 刹那、アルカはなぜか次の一歩を踏んではいけないと直感した。そして、それは当たっていた。アルカが逡巡した一歩先の地面からいきなり小太刀が現れた。


「いや、なんでわかるんだよ」


 それはいつか見た、シンという少年だった。両手には小太刀の創生があり、地面から生える小太刀と同じものだ。地面に小太刀を仕掛ける顕現を持っているのだろう。アルカは足元へ留意し、シンと対峙する。


 一瞬で決着を付けなければならない。背後に味方を庇《かば》う戦いでは、味方を気にしなければならないため、守る側が不利となる。今はヘリクが、ヒオリとムナを守ってくれているが、いずれジリ貧になる。自由に動けるのはアルカだけ。ここでシンを倒し、すぐに加勢する。


 ――一分、いや三十秒で倒す


 アルカはそう意気込むが、そんな猶予はもうなかった。


「がはッ――!」


 ヘリクが血反吐《ちへど》を吐いて倒れた。強く痙攣《けいれん》し、顔は真っ青になっている。いつもならすぐ再生するはずの傷も塞がっていない。


 その様子には覚えがあった。


「毒…!?」


 アルカは近くの地面に、蜂の形をした折り紙を見つける。蜂の尾は湿っていた。そして、ヘリクの周りにはその残骸が大量に落ちていた。


 急ぎ、ヘリクの下へ駆ける。考えるまでもない。ヘリクに不死性を破壊する毒が投与されたのだ。


 ――毒の投与はまだ少量のはずだ! 間に合う!


 倒れるヘリクに、毒瓶を手に近づくツアーの姿が目に入る。本格的に毒を投与されれば、終わる。


「させるかよ」

「くっ――……!」


 だが、走るアルカにシンが追随してくる。そのせいで一瞬、足止めされる。焦る気持ちが加速する。


「邪魔だ!」


 シンはアルカより小柄だ。アルカは体当たりし、強引に退ける。


 しかし、一歩遅かったか――。


 ツアーはヘリクの顎を斬り裂き、毒瓶ごと喉奥へ突っ込んでいた。ヘリクは拒むこともできず、されるがままだった。


「やめろ!」


 アルカはツアーへ刀を振るう。ツアーはすぐに離れていった。その手には空になった瓶がある。


 ヘリクを見ると、肉体の再生が完全に止まっていた。悶え苦しみ、地面にのたうちまわっている。


 ――え? これ終わりじゃないか?


 アルカの思考が止まる。冷や汗が止まらない。吐きそうなほど立ちくらみがする。


「仕上げだ」


 追い打ちをかけるように、アルカの足元に真っ黒い正八角形の物体が投げ込まれた。


「開門」


 咬合結界《こうごうけっかい》だ。一度閉じれば、二度と開くことのない封印装置。ヘリクと、そしてアルカもまとめて封印しようと開かれてしまうのだった。

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