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Arca  作者: あばんじゅ


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48/63

第48話 罪と罰

「聞きたいことがあります」

「なんだ?」


 走る馬車の中。ヒオリの具合を看ていたアルカの背後から声がかかる。


「アルカさんの、育ての親についてです」

「ああ…」


 ヘリクの恐縮した表情を見れば、言いたいことはすぐわかる。


「ああって…なにも思わないんですか? 僕はあなたの親を殺したんですよ? 恨まないんですか!?」


 ヘリクは、罪の所在を表すように自分の胸に手を当てた。


「そう…だな。最初は死ぬほど憎かったよ。でも――今のお前は別人だ。だから、気にするな」


 その言葉は本心だった。そして、アルカの中でも腑に落ちていた。


 肉を纏う邪悪なヘリクと、骨を纏う善良なヘリク。以前のアルカは違いを受け入れられず、懊悩していた。だが、今のヘリクはただの善人だ。そのおかげでヒオリは一命を取り留めた。昔のヘリクの罪を、今に問うのはお門違いだ。


 時間の経過で心の整理がついた。諦めと言ってもいい。振り返ると、なぜそれだけのことを当時理解できなかったのだろうと、アルカは思った。


「いや、納得できない」


 しかし、一人頷くアルカに対し、ヘリクは納得できない様子だった。


「罪と罰は、例え記憶を無くそうとも消えない! 赦しなんて、いらない」


 それはほとんど懇願に近いものだった。しかし、アルカはヒオリを見つめる。


「今の俺は、ヒオリのことしか考えられない。だから正直、お前に対する怒りはもうないよ」

「だったら…! ヒオリさんの無事を確保できたとき、そのときにもう一度話し合いましょう。二人を救って、罰を受ける。それが僕の使命です」


 使命。アルカはその言葉に頭を抑える。


 『奴らを根絶やしにしろ。それこそがお前の使命だ』

 『これまでお前の肉片を採り続けたのは、お前を殺す毒を調合するためだ! お前にはまだ使命があるんだろう!? 誰か、大切な人がいるんだろう!? このままじゃ見つけることもできないまま終わってしまう! いいのか!? ここで終わっても!?』


 ミラから古今統一《ここんとういつ》を受けた日から、アルカはその言葉に引っかかりを覚えていた。しかしなぜかは、アルカにもわからない。わからないが、確かなことが一つある。


 ――俺の使命は、ヒオリを守ることだ


 アルカはヘリクに話は終わりだと言わんばかりに、眠りにつくのだった。

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