第41話 父親
アルカは馬に跨り、大地を蹴立てて疾駆する。
『ヘリクは離れにある森で毒を投与され、処刑される。死の直前に暴走した場合を考えて、王都から離れた場所で執行される。ヘリクが連れて行かれたのは、ついさっきだ。早馬なら間に合う』
アルカは馬に乗りながら、ムナからの情報を思い出す。
ヘリクを伴う一群には、騎士団がついている。騎士団に単身で挑むことがどれだけ無謀なことか、アルカ自身よくわかっている。だが、ヒオリの死を許容していい理由にはならない。たとえ刺し違えてもヒオリを救い出す。そして、親の仇であるヘリクを救うことになっても。
『それと、《《ツアー》》とは戦うな。ツアーはリズリアの弟、王族だ。そして、特級顕現使いでもある。それも王国最強の顕現使いだ。普段は地震を吸収する、物実の樹の警護を任されているが、今回の騒動を受けて戻ってきた。勝ち目はない。ヘリクの身柄を奪うことだけ考えろ』
馬で突き進むアルカは、遠くに騎士団の旗が立っているのを認める。アルカは馬の足を遅めて、近くの茂みに隠れながら追跡する。その一群は隊列を組んでおり、物々しい雰囲気を醸し出す。しばらく様子を見ていると、一群がいきなり歩を止めた。
何かが起きたのだろう。アルカは好機と捉え、馬から降りる。そして、茂みに隠れつつ、ヘリクを載せている馬車がどれだろうかと、一つ一つ近づいて目を凝らす。
「……ぃ――――ま…す――…」
そのとき、一群の先頭から話し声が聞こえた。気になるが、ヘリクを探すことに専念する。だが、傍から見るだけではわからない。そうして一つずつ見て行くと、一群の先頭まで近づいていた。
そのとき、気づく。先頭から聞こえて来る声が誰のものなのかを。
「どうか……ご再考を……。娘を犠牲にするなど……私にはできません――!」
そこには、血だらけのルードの姿があった。




