第24話 秋
宿舎で待機を命じられたアルカだったが、現在、王都の住宅街を歩いている。宿舎は王宮の近くにある。今のアルカの心境からすれば、できるだけそこから離れていたかった。
夕暮れ時の住宅街には人の往来がある。仕事帰りだろう彼らは帰路へと就く。アルカはその流れに沿うように歩く。
石畳の通りには、靴の足音と、馬車の車輪の音が重なり、少しだけ賑やかだった。立ち並ぶ家々からは、窓板を閉める音や子供を呼ぶ声が聞こえる。
「懐かしいな」
ここは、アルカとシュドーが暮らしていた街の一角だった。そして、ある家の近くに辿り着く。
そこには全く知らない人たちが生活している。まだ遊びたいと駄々をこねる子供が母親が引き連られ、家に入れられる。そして、仕事から帰って来た父親も家に入り、窓の隙間から蝋燭の灯りが漏れ出す。
一家団欒の様子を、アルカはぼんやりと眺めた。
その家は、アルカが騎士団に入る前にシュドーと暮らしていた家だった。賃貸契約で住んでいたが、アルカが騎士団に入り、宿舎で暮らすようになってからは、シュドー一人では持て余すようになったため、解約したのだ。
ふと、通りに夕食の匂いが流れ込む。アルカは住宅街の奥へ歩を進めながら、 シュドーの墓のことを思い出す。肉片の収集任務が終わったとき、墓参りに行ったほうがいいとシアハに言われた。
墓はシュドーの故郷に建てられたらしい。シュドーは田舎の村出身で、王都からずっと遠い。行くにはそれなりの日数がかかる。
そもそも、任務は終わったと言っていいのだろうか。いや、任務から外されることは無事終わったとは言えない。怨敵が記憶喪失になった今、シュドーの墓前にはまだ立てない。アルカはそう確信していた。
もうすぐ夜になる。この時間帯はいつも教会の鐘の音が鳴る。だが、今日は鳴らなかった。
アルカは自分が手ぶらなことに気づく。金がなければ腹を満たすことも、宿に泊まることもできない。しかし、それすらどこか他人事に感じていた。
――今は、何も考えたくない
そろそろ夜になる。夏の夜の涼しさはもう無く、風に当たるとむしろ肌寒い。
夏が終わり、秋が来る。




