79 ごちゃ混ぜのままで
マックスとアルフヒルドさんの話し合いは続いていた。
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「母上」
「そう呼んでくれるのかい?」
「今更、ウリカとも呼べませんし」
「それも、そうだね……」
マックスがアルフヒルドさんに、椅子替わりに倒木を勧める。
自分は古い切り株に座って、相向かいになった。
「前にも言いましたが、あなたをウリカと呼んでいた頃、あなたを通して『母とはこういうものなんだろうな』と思っていました」
それを聞いたアルフヒルドさんが、自嘲気味に笑う。
「本当の母だと知ってから、がっかりさせてしまったみたいだね」
「あなたには、あなたの事情があったことは、さっきのエドラさんとの会話でわかりました。……それでも、ライラを犠牲にしようとしたことは、許すことができません」
「それでいいよ。好きになった女を殺されかけたんだ。許せなくて当然」
アルフヒルドさんは足を組み、自分の膝に頬杖をつく。
なんだか妙にハマっていて、かっこいい。
そして、ちょっと悔しい。
「でも、それはそれとして、あなたに感謝している気持ちもあるのです。憎む気持ち、恨む気持ち、感謝する気持ち、慕う気持ち……。そのどれもが私の中では嘘のない感情で、それがごちゃごちゃに混ざって、今とても苦しいのです」
コートの胸元を、ギュッと握りしめるマックス。
泣きそうな顔をして、身体の大きな迷子のように見えた。
「……マクシミリアン」
「あなたへの気持ちを、自分でも扱いあぐねています。なんだか、光と闇がゴチャ混ぜに入った万華鏡を覗いている気分です」
「……その気持ちは、少しわかる。私の中にも魔女としての誇りと、魔法の民を憎む気持ちとが、常にない交ぜになっているからね」
「つまりこれからも、この気持ちを抱えたまま、生きていくしかないのですね」
「今更だけど、……お前のことは誇りに思っている。次期国王にはできなかったけど、今でもお前は王に相応しい人間に育ってくれたと思うよ」
アルフヒルドさんが自分に向けて伸ばした手を、一瞬避けようとした後、マックスは受け入れた。
「あなたが、育てました」
マックスの手を、アルフヒルドさんは何度も撫でる。
「そう、私がそういう風に育てた。……そして悔しいけれど、アグネータもまた、あなたを育てた一人」
「ある意味、国王陛下も兄上たちも、ね。もし彼らから普通に受け入れられて育っていたら、きっと違う私になっていた。……もしかしたら一緒になってエシィをいじめたり、魔法の民を蔑んでいたかも」
「それは、さすがにないでしょう」
マックスの手を撫でていた手を離し、その甲で彼の胸を叩いた。
「どうかな……。今となっては、わかりません」
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ずっと難しい顔で話し合っていた二人の表情が、少しずつ変わっていった。
ちょっとずつ穏やかになっていって、最後は少し笑顔も見えた。
ホッとしていたところで、マックスがあたしを呼ぶ。
「ライラ! 一番星が光ったよ。おいで」




