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71 罠

 あたしの目?

 あたしの目がどうかしたの?


「ライラの右目が青に、左が金色に光ってる!」


 アンネリ、変なこと言わないで……


「目覚めたね、『森の女王』に……」


「痛……っ!」


 世界樹の枝が蔓のようにしなって、あたしの肩を突き刺した。

 あたしを囲む世界樹が、心臓の鼓動にあわせて「ドクン!」「ドクン!」と動く。


 そのたびに、あたしの身体から力が抜けていった……


「世界樹が、ライラの血を吸っている? や、止めろ! ライラを殺すな!」


 マックスが叫んでる……

 血を、吸われている?

 あたし、死ぬの?

 炭坑の、あの子みたいに、あたしも、死ぬの……?


「セカイジュダ! セカイジュダ! ココカラダセ! セカイジュガ ヨミガエル!」


 エスビョルンさんの中のラタトスクが、世界樹の復活に興奮している。

 ラタトスクの意識がエルビョルンさんの中から出ようと暴れていた。


「ううっ! うああ……」


 エスビョルンさんが苦しむ。


「エスビョルン! ライラ!」


 マックスも苦しんでる。

 エスビョルンさんと、あたしの(はざま)で苦しんでる。

 あたしが世界樹に命を捧げて、エスビョルンさんを助けられたら、マックスは苦しまなくてすむのだろうか……


「これは一体、どういうことだい? なんでライラが!」


 エドラ姉さん、本気で心配してくれるんだね。

 いつも、うるさがってごめんなさい。


「だから言ったでしょう。ラタトスクを確実に捕らえて封印するために、世界樹を復活させているんだよ」


「待って! ライラはどうなるの?」


 アルフヒルドさんの言葉に、アンネリが声を上げる。

 ああ、あんたもあたしのこと、ちゃんと友達だって思ってくれてたんだね。

 今頃わかった。遅すぎたかな。


「ライラは、世界樹復活のための肥やしになるのさ。『森の女王』とは世界樹の栄養。歪められた木々が人間の血を吸おうとしたのと同様、世界樹は『森の女王』の血を啜り、それを糧として巨大化する」


「そんな……! 止めさせてくれ! ライラを失うなんて、だめだ!」


 ああ、あたしのマックス。

 泣かないで。


「止めたら、エスビョルンを助けられないよ」


「アルフヒルド殿! お止めください」


 フレドホルム司令官まで、ついこの間初めて会った人なのに、アルフヒルドさんに抗議してくれている。


「あんたたち王立軍の軍人は、エスビョルン殿下の命を優先させるのが筋でしょう?」


「……しかし」


 そうだ、あたしのために悩まないで。

 マックスとエスビョルンさんを、支えてあげて。


「ライラが世界樹の生贄として死んだら、また私が『森の女王』になる。そうしたら堂々と、マクシミリアンを次の王に、いや、すぐに国王に任命させることができる」


「そんな……ライラや……」


 義父(とう)さんの声……

 ああ、義父(とう)さんごめんね。

 今ちょっと義父(とう)さんのこと、忘れかけてた。

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