69 母への不信
「エシィの封印を、解いてくれませんか?」
エスビョルンさんの説得に成功して、マックスがアルフヒルドさんに頼み込む。
だが、アルフヒルドさんの表情は渋い。
「それはいいけど、解いた途端にラタトスクが逃げ出すよ?」
「他に取り憑く先を用意して、誘導したらどうかしら?」
珍しく、アンネリが発言した。
アルフヒルドさんの魔力の強さや、エドラ姉さんに遠慮したのか、今まで大人しかったのに。
いや、単にオオカミに乗り続けた疲れから、立ち直っただけかも。
「それがいい。と言いたいところだけど、どれに憑かせよう?」
エドラ姉さんも、アンネリの案に賛成のようだ。
二人の言葉に、考え込んでいたアルフヒルドさんが、口を開く。
「それなら、世界樹のひこばえがいいんじゃないかい? 元々ラタトスクの望みは、世界樹の復活だ」
「うむ……なるほど、それなら……」
義父さんが賛成したのに続き、エドラ姉さんたちも頷いた。
「じゃあ決まりだね」
アルフヒルドさんと義父さんが先に立ち、皆を先導する。
一方、王室直属軍の兵士たちは不満そうな顔でフレドホルム司令官に訴えた。
「魔女たちが勝手にどんどん決めてしまっておりますが、いかがしましょう」
「しかし、神話時代の邪霊となると、これは魔法の民の管轄だ。下手に手を出すとエスビョルン様のお身体を損ねかねない」
エスビョルンさんのためと聞いて、兵士たちも不承不承従う。
けれど、マックスはどこか不安げな表情をしていた。
そっとあたしの隣に近寄ると、耳元で囁く。
「ライラ、気をつけてくれ。母上はなにか企んでいるかも知れない」
「うん……」
お母さんのこと、こんな風に警戒しなくちゃいけないほど、信用できないなんて。
普通、死んだと聞いていたお母さんが生きていたと知ったら、泣いて再会を喜ぶんじゃないの?
それができない二人に、胸が苦しくなった。




