63 マグヌスの安否
「え? じゃあエシィも直属軍と一緒に飛行船に乗り込んだっていうのか?」
「あの体で、なにができるってんだろうねえ?」
エドラ姉さん経由で、エスビョルンさんも飛行船に乗り込んだことを知り、マックスは心配し、アルフヒルドさんはつっけんどんに言い放った。
確かにその通りなんだけど、アルフヒルドさんの言い方って、いちいち人の感情を逆撫でする。
マックスも不機嫌そうな顔で黙ってしまった。
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歩きに歩いて、あたしたちはようやく義父さんの家に帰ってくる。
夜だというのに明りはついていない。
魔法で紐に明かりを灯して、中を窺いながらそっと入る。
居間に血の跡を見つけるが、義父さん姿は見えない。
あたしは泣きそうになるのを、ようやっとの思いで堪えながら声を掛ける。
「義父さん? どこにいるの? 返事して!」
家の中を探し回ろうとしたあたしの腕を掴んで、アルフヒルドさんが止めた。
「感情にのまれて、我を忘れちゃいけないよ。マグヌスより、ラタトスクに気をおつけ」
「あなたの言葉は正しい。でも人は正しいだけでは生きられないんだ」
マックスが反発するけど、アルフヒルドさんも言い返す。
「情けない。私はお前を感情に流されずに生きるよう、育てたつもりだったのに」
それを聞いたあたしは、ついカッとなってしまった。
「じゃあ、よっぽどあなたはマックスを理解できていないのね。マックスほど優しい人を、あたしは知らない。誰かが苦しんでいるとき、それに寄り添うのがマックスなんだ」
あたしたちがケンカを始めそうになったとき、邪霊の声が響く。
あざ笑うかのような、ラタトスクの声だ。
「暢気なものだな。私の存在を忘れたか」
「見つけた! ラタトスク!」
あたしの言葉に、ギラリと目を光らせる。
「見つけただと?」
「そうだ。私たちはお前を追ってきたのだ」
マックスがジリ……と、ラタトスクに近づいていく。
「お前ら、自分たちの状況をわかっていないのか? 古老の命は、私の手の中だぞ」
「じゃあ、義父さんは生きているのね!」
初めて義父さんの命に希望が持てたあたしは、思わず叫んだ。
マックスも「よかったな!」と、あたしの肩をバンバン叩く。
「だからその古老の命運を、私が握っていると言っているんだ。少しは心配しろ!」
「そうだそうだ、少しはわしの心配をしなさい、ライラや」
聞き馴染んだ声がして、三人で振り返る。
玄関に立っている義父さんは、怪我をしているようだけれど、元気そうだ。
「義父さん……、生きてた……よかった……」
「ライラはここまで、ずっとあなたを心配していたのですよ! そして私も」
「あら、私だって少しは心配してたわよ」
マックスに続いて、アルフヒルドさんもバツが悪そうにそう言ったので、少し驚いた。
「きさま、どうやっていましめを解いた?」
「森の中にわしを繋ごうとしても、無駄だ。ほれ」
義父さんは、吸血樹の枝らしい蔓を投げて見せる。




