62 王室直属軍、動く
フレドホルム司令官が王様に報告しにきたので、南の森に派遣される王室直属軍が、飛行船を使うらしいとわかった。
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「よし。フレドホルム、直属軍を全員差し向けよ」
「お言葉ですが、陛下。マクシミリアン様を追うだけでしたら少数で十分でございます。今はそれより、残りの部隊には吸血樹の対処を優先させたいと考えます」
王様が答えを渋っていたようだけど、王妃様がそれを受け入れて、さらにこっそり囁くのが聞こえた。
「マクシミリアンとアルフヒルド様に乱暴なことはしないでください。それからあのライラという娘にも。できる限り、丁重に扱うように」
王妃様の気遣いには、感謝しかない。
頷き合うマックスとあたしの横で、アルフヒルドさんは舌打ちをしていた。
「しまった。フレドホルムにも髪の毛をくっつけておけばよかった」
「でも、彼は勘のいいところがありますから、国王陛下のようにはいかなかったかも知れませんよ」
「そういえば、あたしがこっそり隠れながら後をつけたときも、気づかれていたみたいだった。さすが司令官ね」
感心するあたしを、アルフヒルドさんが鼻で笑う。
「あんたみたいな、訓練も受けていない素人の動きなんて、バレていないはずがないじゃないか」
ムッとするあたしを宥めながら、マックスが庇ってくれた。
「意地悪を言わないでください。とはいえ王室直属軍の動きを、どうにか探る方法はないだろうか」
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この時点であたしたちは知らなかったのだが、この件はエドラ姉さんがこっそり手を回してくれていた。
変装の魔法に長けた魔女を一人、直属軍の中に紛れこませている、とアンネリから連絡が入る。
あたしたちは思わず「やった!」と叫んでしまった。
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「エドララ姉さん、ライラたち、喜んでるるる」
「あんたもオオカミに乗りながらしゃべる練習をしな、アンネリ」
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軍は最初、汽車を借り切って移動する予定だったようだけど、南行きの汽車は止まってしまっていた(これは、あたしのお手柄だ)。
次に蒸気機関を利用した最新の自動車(なんと馬で引かなくて動くモノらしい)で移動しようとしたものの、大通りにまだ刈り切れていない吸血樹があふれていて通ることができなかった。
というわけで急遽、飛行船を使うことになったらしい。
「軍の蒸気自動車が立ち往生している横を、オオオオカミにまたがってすり抜けていくのは、おもしろかったわわわよ!」
さらにそのとき、軍に間者を紛れ込ませることを思いついたエドラ姉さんが、魔女のひとりに合図を送ったのだという。
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エドラ姉さんたちがオオカミに乗って颯爽と駆け抜けて行くとき、兵士たちは目を丸くして見ていたと、アンネリから連絡がきた。
連絡というより、自慢だったのかも知れない。
「なんだ、今のは?」
「オオカミの群れに、人間が乗っていたぞ」
魔女を見て戸惑う兵士たちの中にあっても、フレドホルム司令官は落ち着いていた。
「それより、我々も急ぐぞ」
直属軍の兵士に化けた魔女も、そのまま一緒についていく。
さらに彼女は飛行船が飛び立つ直前、エスビョルンが司令官に話しかけているのを確認した。
「フレドホルム司令官、私も連れて行ってください。この国の王子として、役に立ちたいのです」




