61 国王夫妻、話し合う
「南の森に行く前に、念のため、城の動きを確認しておくか」
アルフヒルドさんが、怠そうに歩きながら呟いた。
「え? どうやって」
ふん、と鼻を鳴らしながら説明してくれた内容に、またあたしは驚かされる。
「私の髪を一筋、こっそり国王のマントにくっつけてきたのさ」
髪の毛一筋だけで、向こうの会話が聞けるくらい、アルフヒルドさんは魔力が強いんだ。
髪の毛の魔力でのやり取りには、魔力が少ない人間はより多くの髪を渡しておかないと上手くいかない。
あたしの魔力は弱いから、いつも大目に髪を切って渡している。
こんなところでも、差がついてしまうんだな。
そっと溜息をついた。
ともあれアルフヒルドさんのおかげで、王城での動きが手に取るようにわかった。
王様が王室直属軍に、アルフヒルドさんとマックスを追わせるよう、命令している声が聞こえる。
せっかくマックスとアルフヒルドさんを、城内の別々の場所に軟禁させたのに、二人ともいなくなっていることがわかったのだ。
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「マクシミリアンめ、やはりあれが元凶だ。あの女に手を出したことは、一時の気の迷いだったが、結果的に私の一生の不覚となった。それさえなければ、あんな忌み子が生まれることはなかったというのに」
「あなた、いい加減になさいませ」
王様の独白を、王妃様が諫めている。
「あなたがマクシミリアンを追い詰めたとはお考えにならないのですか。可哀想に、あの子はこの城で、いつも孤独でした」
「だがあれには、母親がずっと一緒にいたではないか!」
ダン! と大きな音がした。
王様がテーブルか何かを叩いたんだろうか。
「本当に、そう言えるでしょうか」
「しかし実際……」
「少なくともマクシミリアンは、一緒にいたのが母親だとは知らなかったようですし、それに先ほどのアルフヒルド様の態度は、あまり母親らしいとは思えませんでした」
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「ふん! アグネータめ、好き勝手お言いだね」
アルフヒルドさんが毒づいたけど、あたしは王妃様の言葉にこっそり頷く。
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「実を申しますと、わたくしはエスビョルンを出産する少し前から、城内に妙な気配を感じていました。それがなんなのかわからず、今まで誰にも打ち明けませんでしたが……」
「なんの話だね。この忙しいときに」
「いいえ、今だからこそ告白します。その妙な気配を、ときどきエスビョルンからも感じることがあったのです。あの子は昼間に会うときと、夜に会うときではいつも印象が違いました。今思えばそれが、あの神話時代の邪霊だったのだと……」
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「おや、アグネータは魔法の才があるようだね。ラタトスクの気配を感じ取っていたとは……」
アルフヒルドさんがニヤリとしなごら独り言ちるけど、返事をする気力が湧かないので黙っていた。
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「だから、その話を今して、なにになるというんだ?」
イライラしている王様に、王妃様が溜め息をついた。
「あなたは、あのラタトスクに操られておられました。邪霊の言葉に耳を傾け、マクシミリアンを遠ざけておられた……。それがご自分の意思だと思い込んで」




