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49 分かたれた一族

「アルフヒルド殿……母上……いやウリカと呼ぶべきか。あなたは一体何者なのですか?」


「え? ウリカさん?」


 マックスの言葉に、思わず振り向いた。


「ああ、見た目は違っているが、この声は間違いなくウリカだ。私が聞き間違えるはずがない」


 あたしは目を凝らしてアルフヒルドと名乗る人を見つめる。

 そしてウリカさんの姿を思い出したとき、やっと気づいた。

 ウリカさんの姿は魔法による「変装」で、こちらの方が本当の姿だと。


 この人は魔力が強くて、そのうえ変装魔法が得意なんだ。

 変装魔法の名人は、一度に何人もの姿を変装させることができるけど、それ以外に自分の姿を長時間変えることもできると言われてる。


 長年この城に潜みながら変装の魔法を続けることは、並大抵の力ではない。


「マックスのお母様、アルフヒルド様……でしたっけ? その……やっばりあなたも魔女なんですね?」


「その通り。そしてあなたと同じ根をもつ一族」


「つまり、ニーズヘッグの一族ということですね」


 あたしたちの会話を受けて、王妃様が頷いた。


「そなたの名は?」


「あ、はい。ライラ・ライルです」


 そこにアルフヒルドさんから訂正が入った。


「それは、マグヌスに引き取られてのちの名」


「では、本当の名前はライラ・アルテアン殿ですね」


「左様にございます」


 王妃様の言葉に、マックスも、第一、第二王子も、そして勿論あたしも驚いた。

 だって、だってあたしの名前がこの国と同じだなんて!


「ライラの名が、なぜ私と……、王族と同じなんだ?」


「現在の王家は、我々『森の女王』の血を引く一族から派生したのです。ラグナロクののちに、人の世を治める王家と、より広き世界を治める我々魔法の一族とに分かれました」


 マックスの疑問にアルフヒルドさんが答えるけど、この二人、親子だとわかったのに、まったくそんな感じがしない。

 マックスはいきなり、ウリカさんが本当はお母さんで、しかも別人みたいな姿だと聞かされて実感が湧かないんだろうと思うけど、アルフヒルドさんはどうなっているんだ?


「嘘だ、認めないぞ。胡散臭い魔女と我々高貴な王家が同じ先祖だなんて……」


「その通りです、ねえ父上?」


 第一王子と第二王子からそう言われても、王様は真っ青な顔で震えるばっかり。

 代わりに、王妃様が静かに王子たちの言葉を否定した。


「その方の仰るとおりです、ダーヴィド、ニクラス」


「神妙な態度だこと、アグネータ。それならなぜ、我々魔法の民がこの国の民に蔑まれ、追いやられるのを黙って見ていたのか」


 控えめな王妃様に対し、アルフヒルドさんは皮肉な目を向ける。

 マックスのお母さんに、そういう目はして欲しくないのに。


「申し訳ございません。鉄道事業に関しては、完全にわたくしの目算違いでございました」


「いいや、アグネータ。お前だけの責任ではない」


 心痛な面持ちの王妃様を王様が庇う。

 やっぱり夫婦なんだと、ちょっぴりホッとした。


「そうですよ! 実際他の国に先駆けて、早くから鉄道を敷いたことで、我が国は他の国を出し抜き、繁栄を謳歌しているのですから」


「見せかけだけの、繁栄だな」


「見せかけ、だと?」


 第一王子の言葉にアルフヒルドさんが鋭く言い返して、一触即発の雰囲気になった。

 もう、どうにかして欲しい。

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