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47 第三王子の謎

 そのとき、あたしのポケットの中に突っ込んであった、マックスの髪が入っている布袋が反応した。


 元々あたしら魔法の民は、親しい間柄の人間とは互いの髪の毛を持ち合って、連絡を取ったり無事を確認したりする。

 さっきウリカさんに渡された布袋は、それ自体にも何かの力が働いているようで、髪の毛と相俟って強くあたしにマックスの存在を示してきた。


(髪の毛の魔法で、こんなに誰かの気配を強く感じたのは初めて。ウリカさんて、何者?)


 あたしは魔力が少ないから、誰かの髪の毛を持っていても「元気そうだな」とか「引っ越ししたかな」くらいしかわからない。

 アンネリはもっと強くて、彼女からなら王都内での簡単な連絡くらいは取ることができるけど、あたしだけではそれは無理だ。


 でも今は、マックスの存在を強く強く感じる。

 たぶん、近くにいるんだ!


「マックスー! あたしはここよー!」


「騒ぐな! 下賤の女が!」


 叫んだあたしを、第一王子が突き飛ばした。

 仰向けに転がされ、後頭部を押さえながら起き上がろうとしたそのとき。


「いったたた……痛い……い、いた!」


「大丈夫ですか?」


 なんと王妃様みずからあたしを起こそうと手を差し伸べてくれたけど、あたしはそれどころじゃない。


「大丈夫です、それより、マックスがあそこに」


「ライラ! 助けにきたぞ」


 義父(とう)さんが作った羽にのって、空を飛んできたのだ!


 庭に降り立ったマックスが羽を軽く押すと、背中の箱に折りたたんで収納される。


「その羽! お前、ついに化け物になったのか!」


「まあ、髪が短くなっているわ」


 第一王子がなにやら騒いでいるみたいだけど、あと王妃様が髪型に驚いているけど、マックスに会えた喜びが大きくてあたしには聞こえない。


「マグヌス氏に改良してもらって正解だった。汽車に乗るよりずっと早く着けたぞ」


「マックス!」


 あたしは周りのことを忘れて、マックスの腕に飛び込む。


「生きてた! よかった! 生きてた!」


「それはこちらのセリフだ。ライラ、君が生きていてよかった」


「うん! あたし、生きててよかった!」


 王家の人々も司令官や兵士たちも、呆然としてあたしたちを見ていたけど、我に返ったのか第一王子と第二王子が口々に兵士に命令した。


「なにをグズグズしている。マクシミリアンを捕らえろ!」


「あの女も同罪のようだ。一緒に逮捕せよ!」


 そこにフレドホルム司令官が一喝する。


「殿下がた、お止めください! 兵士への命令は私が下すものです。いくら王子殿下とはいえ、私を通さずに勝手に命令するのはお控えくだされ!」


「それなら、早く命令しないか!」


「そうだ、お前がさっさと捕まえないから、私たちが命令したのだぞ」


「違います!」


 あたしは王子二人に、大声で否定した。


「止めてください! 人違いです!」


「お前が『犯人は第四王子だ』と証言したのだぞ」


 あたしの腕を掴もうとする第一王子の手を、マックスが払ってくれる。

 第一王子はマックスを睨みながらも、引き下がった。

 そこにあたしは畳みかける。


「マックスは第五王子だと聞いていたからです。本当の犯人はトールビョルンという人です!」


「この城にトールビョルンなどという者はいない」


 皮肉な表情を崩さず、第二王子があたしの言葉を否定した。


「え……?」


 マックスの動きが止まる。

 眼を見開いて第二王子を見、王様や王妃様を見た。


「……どういうことだ?」


 混乱するマックスを余所に、また第一王子と第二王子が懲りもせず兵士に命令する。


「おい、なにをぐずぐずしている。さっさと()()()()のマクシミリアンを引っ立てろ」


「マクシミリアン、お前にはたくさん聞きたいことがある。そこの女、お前もだ」


 命令を聞いた方がいいのかどうなのか、迷っている兵士たちに、無言のままフレドホルム司令官が手の動き一つでそれを止めた。

 おお、かっこいいな。


 そこにまるで煙のように、トールビョルンが皆の前に姿を現した。

 あたしを睨みつけながら、歯をむき出して憎悪の表情を露にする。


「どこから抜け出した、ニーズヘッグ」


「その男です! その男が、吸血樹を操っている張本人です! マックスじゃありません!」


 訴えるあたしを、第二王子がわからずやの子供を諭すように話しかける。


「女、そのような口を利いて許される相手ではないぞ。彼は第三王子エスビョルンだ」


「なんだって? 彼がエスビョルン? この邪悪な男が? まさか! エシィはいつも穏やかで優しくて……」


 頭を振りながら、マックスが呟いた。

 あたしもなにがなんだか、頭を整理しないと追いつけない。

 そんなあたしたちを、トールビョルン(というかエスビョルン?)が嘲笑う。


「まだわからんか、愚かな弟よ。私こそエスビョルン。この国の第三王子。そしてお前が第四王子」


「嘘だ……」


 そこに、よく通る女性の声が響きわたった。


「本当です、マクシミリアン」

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