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正五角館の日常  作者: 青空森
嬉野と歩田の画策

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嬉野と歩田の画策1.3

「まず定義するのはこの館の存在理由についてだ」

 館について考えるときアプローチは二つだと思っていた。一つは証拠を集め考察する方法、もう一つが仮設をたて検証する方法だった。

「そもそも、俺たちがこの場所にいる理由が説明できないよな」

「ここへ来る前、一般人だったはずの僕たちが招待される理由は、とくに」

 その頃の生活を思い出してみても、隕石が地球に到来するだとか、異常気象で取り返しがつかなくなったとか、危機感を思い出す話は記憶になかった。

「この場所の存在、現実離れしたテクノロジーは当然だけど、巻き込まれている状況も不可解」

 僕はそう思っていたことを口にした。

 説明を考えようとすると、話は段々と飛躍する。異常気象と世界人口の減少で九人だけが生き残った。その考えは、話としてはありそうでも、事実としての確率はどれほどか。

 真実は一つでも、推論の数だけ不確定なパーセントが刻まれていく。宇宙が存在するように、地球に人類が誕生したように、そこに理由を見いだすことは重要ではない。そう諦観するのも答えの一つだった。

 要するに、何も分からないということ。

「どんな可能性なら考えられるか、シミュレートしてみるんだ。この場所が存在していると聞いて、俺たちはどんな目的だったら、この場所へ入る?」

「この場合は入れられた、というより、自ら入ったって認識?」

「そうだな」

「前提に緊急性の有無は」

「含めない」

 自分の中での答えは一つに決まっていた。

 入らない。

 よほどの理由が無い限り、現実からそれて、この場所には来なかった。外の世界での僕は満たされていたとは言えなくても、不満だったとも思っていなかった。例えば最新のテクノロジーがこの場所にあると聞いて、その技術に興味があって来ることにしたといった説明も、機械にはうといし、自分が選定される理由も特別考えられない。

「もし、これがゲームだったら」

 嬉野はそう問いかけてきた。

「俺たちの認識がズレているだけで、行動の方向性としては間違った話ではないと俺は思う」

「ここから出ようとする方針なら」

 僕はその場合だったときを考えた。

 理由を聞かされず閉じ込められたときは、とにかく外へ出ようと試みる。それは自分の不安定さと生命の危機感からくる焦りだった。

 その認識が強く優先されるために、ゲームをゲームとして認識できなくさせた。エンターテインメントとしての存在。

 有りか無しかで言えば有りで、その理由以外でこの場所に入ろうとする可能性の方が低くそうだった。

 ゲームだったら奇跡的な確率で自分が選ばれることもあるだろうし、参加することもないとは言えない。

 憶測になるのは、失った記憶の空白だった。なにより、『いる』事実に対して『いない』とは考えられない。

「脱出ゲーム?」

「ジャンル分けするならそうなるだろうな」

 テンプレートを思い出す。情報を集め、謎解きをして、出口の扉を開ける。

「情報を集めるにしても、今までと変わらないように思うけど」

「情報の解釈が変わるだろ」

 この館の存在理由に意識して情報を集めると、設立情報へ意識が向いて、その他の情報に気が付かなくなる、そう指摘された。

 僕は思わず周囲を見回した。

「だからこの場所?」

「安直だったか?」

「ゲームなら親切さはあると思う」

 情報が無いときは、きっかけを探す。無ければ類推する。

 しばらく考え込んだ。

「まさか、筐体を全部移動させる、とか」

「やるつもりなら付き合うぜ」

「却下で」僕は即答する。

 ただ、そう言って、却下できないことも理解していた。他のことを調べて成果が上がらなかったとき、最終的にはこの可能性も調べる必要があった。脱出ゲームの解釈が正しくて、例えば筐体の下に脱出口があるとなると、面倒だからといって調べなかったら、脱出口へ光は当たらない。

「まあ、この場所を選んだのはなんとなく。気分でしかないと思ってる。それに、こっちの扉は厄介だからな」

「扉って、景品所のやつ?」

 以前、嬉野からゲームエリアに景品交換があると聞いたとき、どんなものなのかを調べたのを思い出す。ゲームではないタッチパネルが壁に埋め込まれており、その隣に大きな扉があった。

「景品が通過するゲートに見えたけど。付近に景品の取り出し口が無かったし、出てくるならあそこぐらいって判断だった」

「不確定だろ」

「怪しいって言われると怪しくはあるけど……」

 僕は思わず「え、じゃ今日は、あれを壊すつもり?」と聞いた。景品交換のポイントと実際の獲得できるポイントには大きな差がある。一日でどうにかなる問題ではなくて、交換ができなければ、その扉の目的を知ることができない。

 一日で知りたければ壊す必要があった。

「だから厄介だって言ったんだ。金属製、ノックすると厚さもある」

「そこを否定されるとは思わなかった。壊すことは確定なんだ」

「今日は重労働だろうな」

 嬉野は「あるだろ、もう一つ扉が。これを壊しておこうと思ってな」と鋭い笑みを浮かべた。


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