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百年後の未来で価値を失った俺が、世界のルールを壊すまで  作者: レモンティー


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第九話:最適化の番人

地下室を出ると、空気が変わっていた。

さっきまでの静けさじゃない。

張り詰めている。

「……気づかれた」

ノアが小さく言う。

「何に」

「ネットワーク」

短い答え。

だが十分だ。

「ログを開いた時点で、痕跡は残る」

「消せねえのか?」

「完全には無理」

ノアが周囲を見渡す。

「監視が来る」

その言葉の直後だった。

――カチ、カチ、カチ。

規則的な足音。

人間のものじゃない。

もっと正確で、無機質な音。

俺は振り返る。

通路の奥。

暗闇の中から、白い影が現れた。

「……来たか」

それは、人の形をしていた。

だが――

どこかが違う。

歩き方。

視線。

無駄のなさ。

「都市の管理ユニット」

ノアが呟く。

「“番人”」

番人。

なるほどな。

見張り役ってわけか。

そいつは、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

顔は人間。

だが、目が違う。

光っている。

「対象、確認」

機械的な声が響く。

「未登録個体、2」

「排除対象に指定」

「……即断かよ」

俺は肩をすくめる。

「話し合いは無しか」

「無理」

ノアが一歩下がる。

「完全に“最適化側”」

つまり。

俺たちは――

「“不要”ってことだな」

番人が、腕を上げる。

その動きに無駄はない。

一瞬で距離を詰めてきた。

速い。

「――っ!」

俺は横に飛ぶ。

直後、床が砕けた。

「おいおい、力も化け物かよ」

「戦闘特化ユニット」

ノアが言う。

「都市の秩序維持用」

「便利すぎるだろ」

再び、番人が迫る。

一直線。

迷いなし。

「ノア!」

「右!」

言われた通りに動く。

その瞬間、番人の拳が空を切る。

ギリギリだ。

「分析されてる」

ノアが言う。

「動きを読まれてる」

「じゃあどうすんだ!」

「パターンを崩す」

簡単に言うな。

だが――

やるしかない。

俺は、あえて逆に動く。

普通なら避ける方向に、踏み込む。

「――!」

一瞬。

ほんの一瞬だけ、番人の動きが遅れた。

「そこ!」

ノアの声。

俺は、手近にあった鉄パイプを掴む。

振り抜く。

――ガンッ!!

鈍い音。

だが。

「……硬えな」

手が痺れる。

まるで壁を殴ったみたいだ。

「外装強化されてる」

「じゃあ意味ねえじゃねえか!」

「関節部!」

ノアが叫ぶ。

「可動域に弱点がある!」

「最初から言え!」

再び突っ込む。

番人の腕が振り下ろされる。

今度は、避けない。

ギリギリまで引きつけて――

滑り込む。

「ここだろ!」

膝関節。

そこに、全力で叩き込む。

――バキッ!!

鈍い破壊音。

「……!」

番人の動きが、止まる。

完全じゃない。

だが、明らかに鈍った。

「効いてる!」

ノアの声。

「もう一回!」

「言われなくても!」

今度は反対側。

同じように叩き込む。

――バキッ!!

番人が、崩れた。

片膝をつく。

だが――

「再起動シーケンス開始」

「……しつけえな」

完全には止まらない。

「コアを破壊」

ノアが言う。

「胸部中央」

「了解」

俺は、息を整える。

そして――

踏み込む。

番人が腕を上げる。

遅い。

もう見えてる。

「終わりだ」

鉄パイプを、突き刺すように振り下ろす。

――ゴンッ!!

一瞬の静止。

そして。

「……」

番人の目の光が、消えた。

完全に。

沈黙。

「……はあ」

息を吐く。

「やっと止まったか」

ノアが近づく。

番人の残骸を見下ろす。

「これが……都市の守り」

「厄介すぎるだろ」

「もっといる」

さらっと言うな。

「マジかよ」

「ネットワークで繋がってる」

ノアが、空を見上げるように言う。

「一体がやられたら、他も来る」

「……時間ねえな」

俺は、壊れた番人を見る。

そして――

さっきの画面を思い出す。

《人口最適化プロトコル》

「なあ、ノア」

「なに」

「これ、どこで動いてる」

ノアは、少しだけ考えてから言った。

「中枢」

「あるのか」

「ある」

即答だった。

「都市のどこかに」

「そこ潰せば?」

「最適化は止まる」

シンプルな答え。

だが――

「行くしかねえな」

俺は笑う。

「敵の本丸ってやつだ」

ノアは、静かにこちらを見る。

「危険」

「今さらだろ」

肩をすくめる。

「もう目つけられてる」

確かに。

番人も来た。

これ以上、隠れる意味はない。

「だったら」

一歩、前に出る。

「壊しに行く」

ノアは、少しだけ目を細めて――

そして、小さく頷いた。

「……案内する」

「頼む」

俺たちは、歩き出す。

所持金もあまり無い、家族も友人もいない、生きていても意味のない

崩れた世界の中で。

管理された都市に、喧嘩を売るために。

その奥にある――

“最適化の中枢”へ向かって。

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