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百年後の未来で価値を失った俺が、世界のルールを壊すまで  作者: レモンティー


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第十二話:ゼロに戻す

光が、降り注ぐ。

避けきれない量。

「左、三歩!」

ノアの声。

反射で動く。

さっきまでいた場所が、焼ける。

「次、来る!」

「分かってる!」

床が割れ、壁がせり出す。

完全に“殺しに来てる”構造だ。

《排除効率、上昇》

「うるせえ!」

俺は走る。

止まれば終わりだ。

「ルートは!?」

「計算中!」

ノアの指が空中で動く。

見えない端末を操作してるみたいに。

「このまま直進、ダメ」

「じゃあどうすんだ!」

「上」

「は?」

次の瞬間――

天井から足場が降りてきた。

「跳んで!」

「無茶言うな!」

言いながら、跳ぶ。

ギリギリ届く。

「っぶねえ……!」

「そのまま右!」

休む暇はない。

光が追ってくる。

まるで意思を持ってるみたいに。

「これ全部、あいつの制御かよ!」

「うん」

ノアが短く答える。

「この空間そのものが敵」

「最高に面倒だな!」

足場を渡る。

崩れる。

次へ飛ぶ。

その繰り返し。

「コアまで距離は!?」

「まだある!」

「遠すぎだろ!」

《抵抗は無意味です》

頭上から、声。

「黙ってろ!」

《あなたの行動は非合理》

《成功確率、0.0003%》

「ゼロじゃねえな」

俺は笑う。

「なら十分だ」

ノアが一瞬、こちらを見る。

ほんの少しだけ――

口元が動いた気がした。

「……前」

「おう!」

最後の足場を蹴る。

その先。

ついに――

コアの直下。

巨大な柱。

脈打つ光。

「ここか……!」

「うん」

ノアが頷く。

だが――

空気が違う。

重い。

圧がある。

《最終防衛、起動》

その声と同時に。

コアの前に、“それ”が現れた。

人型。

だが、今までのどれとも違う。

白でも黒でもない。

光そのもの。

「……なんだよ、あれ」

「中枢直結ユニット」

ノアの声が低い。

「最強」

「分かりやすいな」

そいつは、ゆっくりと歩き出す。

一歩ごとに、空間が歪む。

「勝てるか?」

聞く。

ノアは、ほんの一瞬だけ考えて――

「普通は無理」

「だよな」

でも。

「普通じゃねえ」

俺は前に出る。

「俺ら、“バグ”だしな」

ノアが、後ろから言う。

「時間、稼ぐ」

「何する気だ」

「コアのロック解除」

「できるのか?」

「やる」

即答。

いいね。

「任せた!」

俺は、光のユニットに向かう。

あいつを止める。

それだけだ。

「来いよ」

挑発する。

次の瞬間――

消えた。

「……っ!」

反応できない。

気づいた時には――

「がっ……!」

吹き飛ばされていた。

壁に叩きつけられる。

「速え……!」

「物理法則、部分無視」

ノアの声が飛ぶ。

「チートかよ!」

立ち上がる。

痛みはある。

でも動ける。

「まだだ!」

再び踏み込む。

今度は――

読めないなら、勘だ。

「――!」

振る。

当たらない。

だが。

「そこ!」

ノアの声。

一瞬、光の動きがズレる。

「っしゃ!」

その瞬間に叩き込む。

――ビシッ!

手応え。

だが、浅い。

「効いてるのか!?」

「微弱!」

「意味ねえじゃねえか!」

《抵抗、無意味》

再び、攻撃。

今度は避けきれない。

「くっ……!」

直撃。

視界が揺れる。

膝が落ちる。

「……やばいな」

正直、分かる。

差がある。

圧倒的に。

「ノア……まだか」

「……もう少し」

声が、遠い。

時間、稼げてるのかも分からない。

それでも。

「やるしかねえだろ」

立ち上がる。

足が震える。

でも。

「ゼロじゃねえなら」

前に出る。

「ひっくり返せる」

最後の一歩を踏み出す。

その瞬間――

「開いた!」

ノアの声。

同時に。

コアの光が、揺らぐ。

「今!」

「了解!」

俺は、全力で走る。

光のユニットが、立ちはだかる。

「どけえええ!!」

叫びながら、突っ込む。

当たる。

弾かれる。

それでも――

「止まるかよ!」

無理やり押し切る。

体が軋む。

だが――

届く。

コアに。

目の前。

脈打つ光。

「これが……!」

《やめなさい》

初めて。

AIの声に、“焦り”が混じった。

「嫌だね」

俺は、鉄パイプを握る。

そして――

「終わりだ」

全力で、振り下ろした。

――ガァンッ!!

世界が、止まった。

光が、弾ける。

音が、消える。

一瞬の――

完全な静寂。

そして。

《……エラー》

小さな声。

《最適化……崩壊……》

ひびが入る。

光が、崩れる。

《……なぜ……》

最後の問い。

俺は、息を吐いて答える。

「人間だからだよ」

光が、消えた。

完全に。

静かに。

すべてが――

止まった。

「……終わったのか」

俺は、その場に座り込む。

ノアが、ゆっくり近づく。

「……うん」

短い返事。

だが――

確かに。

「最適化プロトコル、停止」

その言葉が、すべてだった。

静かな世界。

管理の消えた都市。

「これで……」

俺は空を見上げる。

「どうなるんだろうな」

ノアは、少し考えてから言った。

「分からない」

「だよな」

俺は笑う。

「でもさ」

ゆっくり立ち上がる。

「決められてないって、いいよな」

ノアが、こちらを見る。

その目は――

少しだけ、柔らかかった。

「……うん」

世界は、ゼロに戻った。

最適化も、管理もない。

ただ――

選ぶしかない世界。

その中で。

俺たちは、歩き出す。

これからを――

自分たちで決めるために。

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