第二十八話 旅路、新しい仲間
「おや? 思ったより早く降りてきましたね」
馬車の前に、三つの人影があった。
その中央に立つ男――デンスが、柔らかな声音でそう言う。
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デンス・クローム 宰相
STR+2 VIT+2 DEX+2 AGI+2 INT+2 LUK+1
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未だに底の見えない男だ。
だが、その博識と判断力においては疑いようがない。
リオデルカが信頼を寄せている以上、俺もそれに倣っている。
「馬車の準備はできてるっすよ」
デンスの隣で、軽い調子の声が上がる。
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ジェイク・セイン 騎士 ファイター
STR 7 VIT 4 DEX 2 AGI 4 INT 2 EXP 1
グラインダー(拳) ライングレード
STR+2
ハードレザーアーマー ライングレード
VIT+1
ハードレザーゲートル ライングレード
VIT+1
ハードレザーグローブ ライングレード
STR+1
ハードレザーブーツ ライングレード
AGI+1
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この国で見つけたサブクラス持ちの一人。
髪を刈り上げ、小柄だが無駄のない体つきと軽快な身のこなしは、いかにも前線向きだ。
「……ん、待ちくたびれた……」
かすかな声が、デンスの陰からこぼれた。
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セシル・アナキム 騎士 アーチャー
STR 2 VIT 4 DEX 7 AGI 3 INT 2 EXP 2
コンポジットボウ(弓) ライングレード
DEX+2
ハードレザーアーマー ライングレード
VIT+1
ハードレザースカート ライングレード
VIT+1
狙撃者のグローブ ライングレード
DEX+1
狙撃者のブーツ ライングレード
AGI+1
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同じくサブクラス持ち。
水色の髪を顔にかかるほど伸ばし、小さく身を潜めるように立つ少女だ。
この三か月で、人を見るたびステータスを確認する癖がついた。
だから彼らの能力も、自然と頭に入ってくる。
「待たせて悪かった」
軽く会釈し、馬車へと乗り込む。
「いえ、思ってたより早かったですよ」
続いて軽口を叩きながらデンスが乗り、ジェイクは御者台へ。
セシルは軽やかに屋根へと上がった。
最後に、リリィが頭を押さえながら乗り込んでくる。
全員が乗り込むと――
「ジェイク、出発してくれ」
「了解っす!」
短い返事とともに、馬車は西へと走り出した。
アレースの内側は、ある程度整備されている。
だが街を抜けた瞬間、それはただの“道”へと変わった。
車輪が石を踏むたび、鈍い衝撃が体を突き上げる。
「今回、この街道整備の話もするんだよな?」
揺れに顔を歪めながら、俺はデンスへ視線を向けた。
「えぇ。主目的は軍事戦略の協議ですが……アレースとアテーナを結ぶ街道整備も重要な議題です」
デンスは続ける。
「今日はアレース西の駐屯地で一泊していただきます」
「駐屯地で?」
「はい。ウエストガード達が是非ご一緒にお食事をとのことです」
「まじか……」
「これも陛下の仕事です。騎士達を労ってあげてください」
「……わかったよ」
俺たちの目的地は、元十四番領地――アテーナ。
今はリオデルカが代官として治めている。
本来なら彼が来るはずだった。
だが俺は、それを断った。
また体に走る鈍い衝撃に顔をしかめると、リリィが呆れたように言った。
「そんな顔するくらいなら、アレースで待ってればよかったのに」
「……現地を見ておきたかったんだよ。サスペンションでもあれば話は別なんだがな」
「さすぺんしょん?」
リリィが首をかしげる。
「いや、なんでもない」
納得していない目で睨まれるが、それ以上は追及してこなかった。
「そういえばリリィ、体調はどうだ?」
「……なんともないわよ。今は」
短い返答。
その視線は、ずっと窓の外へ向けられていた。
リリィの武器――オディウム・デュアルダガー。
それは憎しみを糧にする。
もし、その感情を失えば。
武器は飢え、やがて持ち主を喰らう。
だが今のリリィに、その“憎しみ”があるのか。
それは本人にすら分からない。
沈黙が、馬車の中に落ちた。
アレースを出て一日半。
俺たちは元十四番領地、東の村へと辿り着いた。
今は軍事拠点として使われている村。
兵士たちが規律正しく駐屯している。
ここで、束の間の休息。
「あと半日ほどでアテーナです」
デンスが告げる。
馬車の導入によって、移動は飛躍的に効率化された。
徒歩で一日かかる距離が、大きく縮まっている。
「夜には着くか……」
水を一気に飲み干し、息を吐く。
「思っていたより、荒れてないな」
「荒れてたのは領主邸の村と西の村だけよ」
リリィが周囲を見回しながら言う。
「知らない土地に飛ばされて……その先が地獄だったら、普通は生きていけないわよ」
淡々とした口調。
だが、その奥にあるものは重い。
西の村での彼女の二週間。
それがどれほどの密度だったのか――想像に難くない。
「……そうだな」
俺はそっと、彼女の肩に手を置いた。
彼女の体は、一瞬だけ強張った。
再び出発し、日が落ちた頃。
俺たちはアテーナへと到着した。
街は――明るかった。
至るところに灯された火が、夜を押し返している。
暖かく、柔らかな光。
「……思っていたのと違うな」
「ご存知の通り、かつては逆でした」
デンスが静かに語る。
「夜の火は恐怖の象徴だった。領主の“身内”たちが“狩り”を始める合図だったそうです」
だが――
「リオデルカ様は言いました。
“火が怖いのではない。闇の中に、ぽつりとあるから恐ろしいのだ”と」
だから――街を光で満たした。
「なるほど……」
「人は、光の中では安心するものです」
「デンス様、なんで安心するの?」
リリィが問いかける。
「悪さをするやつは、大体夜に動くからな」
俺が答えた。
「ふーん……私のいた村は昼でも関係なかったけど」
思わず苦笑が漏れた、その時――
馬が激しくいななき、車体が大きく揺れた。
「敵襲っす!!」
ジェイクの叫びが夜を裂く。
次の瞬間、デンスが俺の上に覆いかぶさる。
視界が遮られる。
「リリィ――!」
手を伸ばす。
だが。
彼女は、その手を軽やかにかわし――
躊躇なく、闇の外へと飛び出していった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
足早にアテーナへ到着……したと思ったら、さっそく何やら騒がしいことになりました。
次回もお付き合いいただけると嬉しいです。
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