第二十六話 猛る地の底で
本話より第二章開始となります。
新たな領地、新たな登場人物達も加わり、物語はさらに動き始めます。
引き続きお楽しみいただければ幸いです。
そこは――現世と冥府の境界だった。
冷え固まった溶岩の海は、砕かれた巨大な黒曜石を敷き詰めたかのように鈍い光を返している。
その無数の裂け目からは、大地の血潮を思わせるマグマが細い脈となって脈動していた。
立ち込める火山ガスが陽光を遮り、火口内は常に黄昏のような薄闇に沈んでいる。
だからこそ――岩の隙間から滲み出る熱の光は、闇に灯る篝火のように不自然なほど澄んでいた。
「へぇ……“水のヤツ”が、そんなことをねぇ……」
男の声が、黄昏のような薄闇の中へ落ちる。
「……」
「そんなに不機嫌になるなよ」
軽くたしなめるような口調。
「……」
「なんだ? ビビってんのか?」
嘲るように笑う。
「……」
「冗談だって、冗談」
男は肩をすくめた。
「……」
「怒んなって。せっかく面白くなってきたんだしよ」
声に、わずかな高揚が混じる。
その瞬間――
ゴウッ、と。
岩の裂け目から噴き上がった熱気が、周囲の空気を大きく揺らした。
「……」
「……へいへい、わかりましたよ」
諦めたようにひとつ息を吐き――
「やるからに、俺のやりたいようにやらせてもらうぜ……“ヴォルガス”さんよ」
そう言い残し、男は火口から立ち去った。
残されたのは、煮えたぎる大地の鼓動だけ。
まるで火山そのものが、その名に応えるように低く唸っていた。




