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眼帯少女の1日(昼)

朝食を終えたブラッカーズは支度をし、それぞれの仕事場へ向かった。歓楽街ベドウィン地区にある店の多くは日中を準備にあてる。夜に来る客の為に酒や食料を買い、店内を清掃する。

特にマルコが営むカジノクラブは人気店だ。それだけに準備も忙しい。


「助かったよ、有栖。シルヴァーノを買出しに行かせたから手が足りなかったんだ。」


「いえ、お気になさらず。ちょうど暇だったので。」


数分前にマルコからの連絡でやってきた有栖。先程まではクリスを手伝っていた。メンバー全員が店や職を持っている中、有栖はまだ何も持っていなかった。自分にできることがないと思っているため、今は店を手伝ってまわる日々を送っている。


「このお酒はどちらに?」


「それはカウンターから見て左側の棚に置いてくれ。こっちの酒は右側に。」


「分かりました。」


簡単な指示であるが、有栖の動きは素早くそして丁寧である。隣の瓶と当たらないように一定の間隔をとり、グラデーションにも配慮して瓶の配置を変える。

酒の補充を終えると今度は掃除に取り掛かる。埃(ほこり)が舞い上がらないよう優しく掃き、マルコ達の邪魔にならないよう隅の方へゴミを1ヵ所に集めて回収する。ちょっとした気配りを自然に行えるのが有栖の良いところだとマルコは評価している。


(接客とか向いてそうだな・・・。)


自分にできることはないと言ってるが、彼女の中にある隠れた能力に可能性を見るマルコだった。

・

・

・

マルコの店を出た有栖はその後、アルドの経営する大浴場を手伝い、白刃と一緒に住民の依頼をこなした。白刃も有栖と同じでフリーな状態だが、彼には夢がある。いずれ資金を貯めてクリーニング店をしたいと考えている。


「妹のためにも手に職を付けたい。何かをきれいにしていくのは、好きだからな・・・。」


「服とか、靴をですか?」


「それから部屋もだ。特(・)殊(・)な(・)汚(・)れ(・)を(・)落(・)と(・)す(・)の(・)が(・)得(・)意(・)な(・)ん(・)だ(・)・・・。」


「・・・。」


どういう汚れなのか、有栖は聞かないことにした。ちなみに今回の依頼は比較的平和だったため、白刃の腕が振るわれることはなかった(それでも多少戦闘はあったが)。

・

・

・

こうして今日の仕事を終えた有栖は白刃と別れ、夕食の買い物をしに市場へ向かった。必要なものを買い、市場を出ようとした時、ある人物と鉢合わせた。


「やぁ、有栖さん。ここで会うとは奇遇だね。」


「圓龍さん、どうも。」


圓龍に軽く頭を下げて挨拶する有栖。あの事件以後、彼女とはよく出会うようになった。かつて敵対したチームのリーダーがベドウィン地区にやってくる。これも友好的になった証なのだろうと有栖は思っている。実際は有栖を目的にやって来ているだけで、今回も偶然を装って有栖に出会っている。


「買い物してたのかな?」


「はい、今日の夕食の買い出しです。」


「重そうだね。半分持つよ。」


「えっ、いや、大丈夫ですよ…。」


「いいからいいから。」


圓龍は多少強引ながらも優しく買い物カゴを持つ。有栖も彼女の厚意に甘えることにし、2人並んで帰ることにした。


「ねぇ、有栖さん。この後予定はあるかな?」


「予定…いえ、特には。」


「それじゃあ、一緒にお茶でも…。」


少しでも長く有栖と過ごしたい圓龍。だがその望みは簡単に打ち砕かれてしまった。


「有栖。」


後ろから名前を呼ばれて有栖が振り向くと、ロイスとマルコがそこにいた。彼等を視界に入れた圓龍は心底嫌そうな顔をして睨みつける。


「ありがとな圓龍。わざわざ持ってくれて。後は俺がやるから。」


「いや私はだいじょ…。」


「いいからいいから。」


マルコはそう言うと有無を言わさず、圓龍の持っていた買い物カゴを取る。


「先に帰っといていいぞ。俺はこいつと話があるから。」


「了解。じゃあ有栖、帰るぞ。」


「あっ、はい。では、また。」


有栖は圓龍に挨拶をしてマルコと共に帰っていった。圓龍もまたねと言い、笑顔で手を振って有栖を見送った。こうして、圓龍の目論見は外れてしまったのだった。


「何で邪魔するのさ。」


「彼女を守るためだ。」


「私は何もしていない!」


「何もしていないから余計に警戒するんだよ!彼女に付きまといやがって。」


「付きまとうとは失礼な!彼女に話しかけるタイミングを窺っていただけだ!」


「お前朝からずっと彼女の後ろをついてまわっていただろ。」


「なっ!き、気づいていたのかよ…。」


「変な奴がいるって住民から苦情が来てな。全く、RAIDのリーダーが何やっているんだ。」


「私だって普通に声をかけたいよ!でも仕方ないじゃん!慣れてないから!」


「はぁ〜〜。」

(面倒な奴に好かれて、有栖も苦労するだろうなぁ。)

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