間話 眼帯少女の1日(朝)
眼帯の少女、香坂有栖。爆発に巻き込まれて重傷を負う。死を覚悟したが、その場にいたストリートギャング『ブラッカーズ』によって命を救われた。現在はブラッカーズの仲間となり、人生のリベンジを行っている。
「…ん、朝?」
午前6時。彼女の1日が始まる。ベッドから出て身支度をし、部屋のドアを開ける。彼女の部屋は203号室。2階の部屋で最も日当たりが良い。
「さて、と。」
他の者を起こさないよう、静かに廊下を歩く。階段を下りて食堂に向かう。有栖は朝食担当の1人である。他はアルドとシルヴァーノ、そしてもう1人。合わせて4人で作っている。それ以外のメンバーは朝に弱い。特にクリスは激務のため、ギリギリまで寝て疲れをとりたい。一方で有栖達は早起きに慣れている。特に有栖は決まった時間に起きる。しっかりとした体内時計を持っているのだ。
だがそんな彼女よりも早く起きる者がいる。有栖が食堂に着くと、その者はコーヒーを片手に本を読んでいた。
「ルークさん。」
「おはよう、有栖。」
「おはようございます。」
ブラッカーズのリーダー、ルーク・レインラントは毎朝5時に起きる。その時間が最も気持ちいいから、ということらしい。
「コーヒー飲むか?」
「あっ、はい。いただきます。」
「ミルクや砂糖は?」
「いりません。」
「分かった。すぐ淹れる。」
そう言うとルークは立ち上がり、カップにコーヒーを注いだ。混じり気のないコーヒーが彼女の前に差し出される。
ブラックコーヒーを飲めるのはルークと有栖の2人だけである。他のメンバーはミルクや砂糖なしでは飲めない。
更に言えば、ルークは途中でミルクを入れる。最後まで何も入れずに飲めるのは有栖ただ1人なのだ。
「いつもありがとうございます。」
「気にするな、好きでやっていることだ。」
ルークは席に着くと再びコーヒーを飲み、本を読む。有栖もカップに口をつけて少しずつ、静かに飲む。苦味が口に広がり、それからすぐに酸味がくる。香ばしい香りが鼻を抜け、最後にほんのりと甘味が顔を出す。ルークの淹れるコーヒーが1番美味しい。有栖はそう確信している。
(機会があれば教えてもらおう。)
そんなことを思いつつ、気付けばあっという間に飲み干していた。ふぅ、と息を吐く有栖。気にせず読書にふけるルーク。穏やかな朝のひと時を過ごす2人の間に言葉はない。だがこの空間の居心地が悪くなることはない。言葉がないことで互いを気にすることなく、好きなように過ごせるからだ。ブラッカーズに入る前の有栖にそんな時はなかった。常に周りと自分を気にしながら生きていた。安らげる場所も、頼れる人もいなかった。そんな辛く寂しい日々を乗り越え、やっと出会えたのだ。今の有栖は、これまでの中で最も幸せな時を過ごしている。
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30分後、シルヴァーノとアルドが起きて来た。
「おはよう〜。」
「御二方、おはようございます。」
「2人ともおはよう。」
「おはようございます、アルドさん、シルヴァーノさん。」
挨拶を終え、4人はキッチンへ向かう。朝食作りの開始である。朝はルークの要望で和食と決まっている。ルークが米を炊き、シルヴァーノは味噌汁を作る。アルドは食卓を整え、有栖は魚を焼く。手の空いた者は他のおかずを作る。できること、やるべきこと、そして協力すること。この3つに対する意識の高さがブラッカーズの強さであるのかもしれない。
そうこうするうちに朝食が完成した。それと同時に、残りのメンバーも降りて来た。
「おはよう〜。」
「眠い…。ルーク、コーヒー淹れて。」
「おはよう。クリスは先に顔を洗ってきな。」
あくびをしながら挨拶するロイス。クリスはまだ眠いのか、足取りがおぼつかないでいる。
「おはよう…。」
「おはようございます!」
「朝から元気だな、白蘭は。おおっ!今日は魚の塩焼きか。」
呟く様に挨拶する白刃とハキハキと言う妹の白蘭。マルコは豪華な朝食に目を輝かせていた。
「それじゃあ、席に着いてくれ。」
ルークがそう言うと、それぞれがいつもの席につく。最後に座ったのは顔を洗い終えたクリスだった。まだ眠そうな顔をしている。
「全員そろったな。では。」
ルークが席を立ち、号令をとる。朝食前に必ず行う習慣だ。
「始まりに感謝を。今日を良き1日にするために、いただきます。」
『いただきます。』
一斉に箸をとり、料理を食べる。今日もまた、有栖とブラッカーズの忙しく、刺激的な1日が始まるのだった。
因みにガストーネとエルモは仕事でいません。




