RAID
raid
意味:急襲、奇襲
バルクス病院事件から1ヶ月が経ったある日のこと。ブラッカーズの拠点である蝙蝠の巣では、非常に重い空気が漂っていた。
「…。」
ブラッカーズのリーダーであるルーク・レインラントは眉間にシワを寄せ、険しい表情を見せ、彼の後ろに控えるサブリーダーのロイス・シュバイニーと、メンバーのマルコ・モンテーロは気まずい表情をしていた。何故ルーク達がこの様な表情をしているのか。それは、彼らの前に立つ2人の男が原因だった。
「…誰にやられた?」
ルークが怒りのこもった口調で言った。八文字の言葉を発しただけで、部屋の中に緊張が走る。ブラッカーズ結成からいる彼らは理解していた。ルークの怒りが、どれほど恐ろしいのかを。
「申し訳ありません、ルークさん。またアイツらにやられました。」
ルークの前に立つ男の1人、シルヴァーノ・モンティはルークに謝罪した。彼の左頬は赤く腫れ、口は切れ、右目の周りに痣が出来ていた。
「突然だった!何の気配も音もなく襲ってきやがった、おかげでこのザマよ!痛っ!」
シルヴァーノの隣に立つ男、アルド・コンティーニは声を荒げて言った。彼の方は顔に怪我こそないものの、腹を殴られたのか、猫背になって抑えている。
「…分かった。とりあえずクリスに手当てしてもらえ。」
「すいません。」
「すまん。不覚をとった。次は下手をしない!」
「ああ。」
シルヴァーノとアルドは頭を下げると痛みに耐えながら部屋を退出した。
「「はぁ〜〜〜。」」
無事に終わって緊張が解けたのか、ロイスとマルコが大きなため息をついた。するとルークが吐き捨てる様口調で言った。
「全く忌々しいな。RAIDの奴等め。」
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東西南北と中央の五区に分かれている自治街ネグル。その中で最も繁栄しているのがベドウィン地区である。かつてこの地区では利権を巡ってギャング同士の抗争が常に起こっていた。日に日に増す抗争は堅気の住民を追い出す形となり、入れ替わって粗野な者達が住み着き、一時期はネグル全体の支配者である大迫一家も手を出せないほどの無法地帯と化していた。
その様な時にやって来たのがルークとロイスであった。ネグルで偶然出会った2人は、互いに打ち解け合い、『ブラッカーズ』を結成した。2人は敵対する者達を次々に倒し、更にマルコ率いるモンテーロ一家を仲間にして勢力圏を広げた。そして、当時ベドウィン地区で最大のギャング、『ナイトメア』を壊滅させたことによりルーク達はベドウィン地区の利権を獲得したのである。
だが、これをよく思わない者達がいた。ブラッカーズによって潰されたギャング達である。多くはネグルから追放されたが、一部は秘かに集結して組織をつくり、力をつけていた。そして現在、ブラッカーズのシマで店や人を襲い、金品等を盗む様になっている。
ブラッカーズを悩ませるそのギャングの名は『RAID』。その組織形態、リーダーの名前、戦力、そしてアジトの場所、全てが謎に包まれている。ただ分かっていることは、彼等の攻撃は的確で、かつ予測がつかないことである。
「奴等の実態が分からない以上、大規模な攻撃は出来ない。全く、もどかしいときたらありゃしない。」
ルークは頭を抱え、悩ましい表情を浮かべた。金品等の強奪は少額であるが、積もり積もれば大きな損失となる。このままでは資金難により、ブラッカーズだけでなく、ベドウィン地区の存続も危うくなる。それだけは避けたい。だが何も分からない以上、対策も立てられず、時間だけが過ぎていた。
「ひとまず、白刃にアジトを突き止める様に言った。今はとにかく、彼の報告を待つことにしよう。」
「そうだな。」
ロイスの提案に、ルークは同意した。そしてマルコの方に向き、口を開いた。
「マルコ、シマの人々に警戒するように伝えてくれ。もちろん、有栖や白蘭にも忘れずにな。そういえば有栖はどこに行った?」
ルークの疑問に、ロイスが答える。
「有栖なら夕飯の買い物に行った。もうすぐ戻ってくるはずだ。」




