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どうやら私は魔法が使えないらしい。※ジュード視点もあるらしい。

日間の異世界転生/転移ランキング3位になりました!!皆様のおかげです。

本当にありがとうございます!!

少々ジュードさん視点を変更しております。


「うむ。貴様は思っている以上に魔法の才が欠片もないの。」


1週間、自室で魔力をどうにか扱えるようにリリイちゃんに修行をつけてもらっていたが、魔法が使えていない。自分の属性じゃないからかもしれないけれど。


魔法は体内で魔力を練り、属性に変換。それを出力することで、様々な現象となって現れる。

魔法の属性はあくまで魔法が得意というだけで、属性適応外の魔法も全く使えないわけではない。

ただ、魔法の現象の純度に影響するだけ。

例えば、火の属性の場合だと、属性を持たないものでも火を出すことくらいはできる。だけど、温度調整や大きさは膨大な魔力消費と魔力の精密さが必要となる。

属性があるということは、その大きな魔力消費と精密さが必要なくなるということで、簡単に魔法が使えるらしい。

つまり、属性が違うからその属性の魔法がまったく使えない、ということはまずない。

そして魔法を習う際にはあえて自分以外の属性から習得する。

これは、魔力の扱いの精密さと魔力制御を覚えるためでもある。他の属性の魔法を扱えるということはそれだけで属性魔法の質の高さにも比例しているからだ。

だが例外の属性が存在する。それは浄化の属性。これは神の使徒のみが使えるとされており、浄化の属性がないものは浄化の魔法を使うことが出来ない。

つまり、お判りいただけているかもしれないけれど、その魔法の常識が私に当てはまっていない。

今の私にはまったく魔法が使えていない。魔力を練って魔力を属性に変換しても、現象としてそれが現れない。

魔力の感覚を感じ、体内で練る。そして魔力を圧縮するまではうまくできるのに、それを出力する、この1点に置いてだけは破滅的にできない。

魔法の書は読んだ。理解もできるほど読んだ。なのに、なのに使えない。

リリイちゃんもわからないと言う様に首をかしげて呟いた。


「・・・すみません師匠。」


魔法自体を使えていないはずなのに、なぜか魔力は消費している。自分に流れる魔力もそれを放出する感覚も自分ではっきりとわかっているのに、それが現象として現れない。

火も出ない、水も出ない。風も雷も光も音も出すことが出来ない、出せない。出ていない。

魔力が底をつきかけてベッドにお世話になりながら、リリイちゃんに謝る。

申し訳ない。という気持ちももちろんあるけれど、それよりも自分の無能さに悲しくなってくる。

元いた世界には魔法なんてない。そんなもの、一度だって見たことも聞いたこともない。

私が使えないのは当然と言えば当然なのかもしれない。

例えあの水晶が反応したとして、それが扱えるなんて、もしかしたら自分はすごいんじゃないかって、思っていた私の理想は淡く消えて行った。


「だがそんなはずは・・・いや、もしかしたら。」


少し深刻そうに考えてリリイちゃんは私を見る。魔法を極めた。これが本当かどうかはわからないけれど、それを自称するくらいには魔法に対して詳しいはずのリリイちゃんにそんな顔をさせてしまうほどに絶望的なのか。

なんだか悲しい気持ちになった。


「すまんが教え方を変えよう。魔力をまともに扱えるようになってから、貴様の属性魔法をと思っていたのだが、まずは貴様の属性、癒しと浄化の魔法を教える。

我はどちらも属性を持ち合わせていない故に、浄化に関してはモドキになってしまうが、教えるに不足はしなかろう。」


本当は気分も落ち込んでいる上魔力もほぼなくなっているので今日の修業は終わりになる予定だったけど、ベッドの上でもできると言われ、そのまま魔力変換とその出力方法を教えてもらった。

もしかしたら自分の属性魔法でさえ使えなかったならどうしよう。押し寄せる不安ともしかしたらと期待で高鳴る心臓に冷や汗を浮かべながら、その通りに魔力を変換し放出する。

するとあら不思議。先程までの苦労が嘘のように簡単に使えた。浄化の魔法のつもりだったし、掌くらいの魔力に調節したのに、掌から淡い光が溢れ出してこの部屋全体を包んだ。

そして不思議とベッドで横にならないと辛かったはずの体が少し軽くなっている。



「え!?どうゆうこと!?!?私魔法が使えないわけじゃなかったの!?しかもなんか思いのほか広範囲なんだけど!?」


初めて自分が起こした現象を目の当たりにして驚きと戸惑いで頭が混乱している。

リリイちゃんは何か確信めいた様にうなずいてため息をついた。


「なるほどのぅ。通りで魔法が使えんはずじゃ。貴様は魔法そのものに適性がない。

それなら普通は魔水晶に何も反応がないはずだが、魔力そのものは保有しておる。

それゆえにその魔力に反応し、貴様の持ちうる能力の色を示したのだろうな。

貴様のそれは即ち魔法ではない。貴様のそれも能力の一つだ。

でなければ魔力の流れが出力の際絶えるなんて現象の説明がつかん。」


魔力があるのに魔法を使えない。魔法は使えないけど、癒しのと浄化の能力は使える。

リリイちゃんの説明でわかったのはこれだけで、私は半分も内容を理解しないのに、不思議と安堵を覚えていた。

ファンタジーな世界の中で、私は何もできなかったわけじゃない。その事実だけが何よりうれしかった。

私の表情とは真逆の絶望と焦りの表情をしていたのはリリイちゃんだった。


「これでは魔法を教えるなんてこと、できぬではないか・・・!これでは我はこの者に魔法を教えられんとなれば、あの庭師との約束が・・・!!

しかもなんじゃその力は!!ほぼ聖域と変わらんではないか!!聖域の仕方を教える話もなくなってしまった!!

もう貴様は我なんぞ要らなかったではないか!!」


そう言って涙を浮かべたしたのだけれど、どうしよう。これは私のせい・・・?な、なんかごめんなさい。

側にいるジュードとリカルドを見ても、首を横に振るだけでどうしようもできない。

リリイちゃんはああでもない、こうでもないとうんうん悩み、何か思いついた様に顔を上げた。


「いや、これなら・・・・・!」


急に明るくなったリリイちゃんは、どこからか複雑な模様がある紙をいくつか出した。


「魔力があるが、魔法に出力不可なら!精霊に頼ればよい!!貴様の魔力には浄化と癒し!!どれも精霊にとっては栄養剤と言っても過言ではない!!貴様は精霊使いになれるぞ!!」


私のベッドに駆け上り、くしゃくしゃになりながらその紙を突きつけられた。


「せ、精霊、ですか?」


その言葉に驚いたのはジュードだった。


「精霊使いってもういないんじゃなかったのぉ??もう歴史上のお話でしょお?」


リカルドはくすくすと笑っている。

私はよくわからず3人を見ていると、リリイちゃんが説明してくれた。


「なんじゃ、歴史があるということはなれる者が今の段階でいないだけで、昔はそれが豊富におっただけにすぎんじゃろうが。

・・・貴様らもその程度しか知らんようだから説明してやるが、精霊使いは精霊に力を借りて魔法を使うものの事だ。

それは精霊魔法とも呼ばれ、己の魔力を使って魔法を使うわけではない。精霊は使役すると使役したものから離れることがない。つまりは命令するだけで魔法を使ってくれる魔法奴隷に近いな。

だが使役するにも無属性の魔力の出力が出来るものが必須でな。それに精霊は気まぐれでな、使役するための契約もそうだが、中々姿を現すことはない。

その可視化の魔法陣も魔族の手にあるから、人の歴史から消えたにすぎん。魔族は元から魔力も高い上頑丈だから、精霊に頼るなど、自らに力がないと宣言するようなものだから余り使役するものもおらん。

本来人に教えるのは禁じられているが、貴様なら問題あるまい。さすれば魔法が使えるし、まあ使うのは精霊だからな。問題はあるまい。」



ふふん、と自慢げに語っているリリイちゃんがとてつもなく可愛く見えた。まあ可愛いんだけれどね。

恐らく取り出した紙に書かれてあるのがその可視化の魔法陣らしいけど、そんなにくしゃくしゃで使えるのかそれだけが心配だなぁ。と思っていたら、こっそりリカルドがリリイちゃんの手からかすめ取っていた。

それをジュードに渡して、真っすぐな紙に戻されている。

さりげない気遣い、流石っす。


「だが今日は貴様の魔力がまだ戻っておらんからな、今日はここで休むがいい。この部屋全体が聖域、とまではいかないものの浄化の力で満ちておる。まあその代わりに治癒しの力も漂っている。

ここに居れば、魔力の回復も早かろう。明日も1日休みを出す故、魔力の圧縮に努めるのだぞ。

属性がない以上、複数の精霊を使役して貰うしかあるまい。いくらでも貯めておけよ。だが我は明日も来るぞ!!

師をねぎらうのも、弟子の役目であろう?」


リリイちゃんはかわいらしく笑ってこの部屋から出て行った。

その後、何故かリカルドとジュードも私に一度頭を下げて部屋を出て行った。

2人で出ていくなんて、珍しい事だったから。

私に魔法が使えないのはそんなにまずい事なんだろうか。







ジュード視点


急に王から呼び出された。

それは、聖女を召喚すると話がったその日の夕暮れだった。

聖女様はこの国を救うためだけに異界からこちらに送られてくるとされる贄。

俺たち騎士は、王に忠誠と、その贄に敬意を捧げている。

いつも着ている騎士の象徴の服を身にまとい、俺は騎士として王の元へ向かう。


「貴殿には聖女様の近衛を務めてもらう。これには行動を監視し、それを報告する義務もある。受けてもらえるね。」


優しく冷たい目。その目に見下され、優しくも目が笑っていないその笑顔の下で、俺は傅く。


「はい。喜んでお受けいたします。」


俺に残されたのはその一言のみだった。

受けたかろうが受けたくなかろうが、関係なく俺の返事ははい。

俺の返事を聞くと、聖女様がどういう人物なのかを聞かされる。

どうやらその聖女様は2人いるらしい。

浄化の儀を行える素質のあるものは王宮にて教育が決まっているが、もう一人の方に監視兼護衛を務めてほしいとのことだった。

その屋敷に勤めているものの資料を見て驚く。

俺の妹も含め、訳アリの連中ばかりだったからだ。

誰がどのような事情を抱えているかはこの際割愛させてもらうが、この4人だけで、聖女様を任されるには荷が重い。

普通であれば4人の中の誰かが不敬罪で切り殺されてしまう者たちだからだ。

何故、と思ったが、そんなこと考えるだけで恐ろしい。

震える拳を握りしめて俺は配属された屋敷へと向かった。


騎士として挨拶すべく部屋をノックする。何の反応もない。

失礼を承知で扉を開けると、聖女様が見たこともない衣装をまとい、ベッドであられもなく寝ていた。

俺よりも小さいその体。細く珍しいその黒い髪色。

寝ているはずなのに、苦悩に歪んだ様な眉間の皺。誰が見てもただの少女にしか見えない。

なんのオーラもない、だがどこか気品を感じる佇まいの女。

こんなちっぽけなものに頼らないとこの世界は破滅するのか。

いや、この女は聖女とは名ばかりの女。

聖女ですらない女を俺は聖女様と呼び、無力なその体を守り、無抵抗なその行動を監視し報告せねばならない。

蝶よ花よと育てられた女に仕えるよりか、この哀れな女に仕えた方がマシだろう。

俺が偽りの忠誠を誓ったのはその時だ。


まだ眠り続ける女を後にし、俺はメイド服を身に着ける。

何故かそれを身に着けると心が和む。

そして部屋の中で待機する。

どれ程時間がたっただろうか、女の気配が近くまで感じる。


「いかがなさいましたでしょうか聖女様。」


俺が声を掛けると驚いたように声を上げた。

少しの沈黙の後、飲み物を、と旨く笑えていないその顔でそう言った。

好みなどを聞いて、女も普通に好みを答えた。

少し顔色が悪い。確か召喚の儀は昼頃だと聞いた。それから恐らく食事をとっていないのだろう。

異界の地にいる者は米という穀物を好んでいる。

あれはあまり味をしない。味付けが必要な代物だ。

それと甘いものは体にいいと聞く。

厨房で米を探し調理にかかる。

中々米に火が通らず、それを見守っていたら時間が掛かってしまった。

体に身体強化魔法をかけ、急いで給仕台へ紅茶のポットのカップ、作った粥を乗せて零れないように急いで戻る。

小さな明かりの中、ぼうっと天井を阿呆面で見上げていたその女に作った粥と紅茶を注いで渡す。

嬉しそうな顔をして受け取って食べるが、どうもお気に召さなかったらしい。

女にはクッキーとかそういう甘いものさえ渡していればとりあえず問題ないとリカルドが言っていたのだが、どうやらそれは聖女様には当てはまらないらしい。

ありがとうと言いながらも女の顔は先ほどよりも青くなっている。

この女は馬鹿か。まずいならまずいと言えばいい、どこぞの令嬢の様に笑顔で下げなさいと言えばいい。

だが、女は俺に対して助かったと言った。

使えられたことがないのは意外だったが。仕える人間を切るのはお前のはずだが、なぜそれを俺に委ねる。嫌だとしても俺にそんな権限があると思っているのか。

俺にさんまでつけて。素っ気ないといつも怒られる俺の態度にも不満がないだと。

こいつは変わりすぎている。俺がこの格好を好んで着ていると言った時も、驚きはしても否定することもなかった。

なんなんだこの女は。なんの力もない聖女の名を使ってでもこれでいることを許すなど、本当になんなんだ。

よくわからない。こういう格好をするのは女からすれば嫌なのだろう?リカルドが俺に扮したものの間違えてメイド服で勝手に任務を受けそうになった時の周りの視線はまるで化け物を見るそれと同じだった。

そうか、ここでなら、別にそのような視線に遭わずに騎士としても、この服通り給仕としてもいられるのか。

仕方ない。貴様が俺を切るその日までは役目を果たしてやらんこともない。




そして聖女様は暇をつぶしたいと仰った。短い期間第1王子の護衛したときに大量の難しい本を読みながら寝ていた。

うむ、俺は寝れないなどよくわからないので、とりあえずこの世界に来たのであれば魔法の書ならば知らないはず。

そう思い、王宮にある極一部しか入ることが許されない書庫にある本をありったけ持っていった。

聖女様はどうやら難しい本は苦手ではないらしい。

不満そうな顔をしたが読み出せばずっと読んでいた。

女というのは、少なからず本を読むのはあまり得意でないと聞くが、彼女はスルスルと本のページを進めていた。


このままいけば問題など怒らないかと思っていたが、彼女は半端者を師として招き入れていた。


幼い容姿、ただの子供かと思わせる見た目をしているが、見ただけで聖女様の性質を見抜くほどの力、魔法帝でもできない。

それだけであの女の力がどれ程なのかを察することが出来る。


・・・これは放置できない案件だ。すぐに国王へ報告せねば。


聖女様が事の重大さを理解していないならば、俺だけでもしっかりとせねば。

その思いを抱えながら、焦りで荒くなる呼吸を抑え込んだ。













最後まで読んでいただいてありがとうございます。

少し前回から更新が遅れてしまいましたが、多くの方に読んでいただけていたことが何よりも嬉しく思いました。

拙くまだまだ話数の少ない状態ですが、それでもブックマークしてくださった方々、本当にありがとうございます。

感想なども励みになっています。

皆さま、よろしければ、まだまだ続くこのお話を愉しんでいただければ幸いです。

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