どうやら修行はまだらしい。
水色の髪の幼女が師匠になりました。
その日、マッテオに師匠としてリリイちゃんを紹介すると、幼い女の子という部分に食いついていた。
そしてお菓子でその幼女を釣ろうとしていたので、ジュードに頼んで一発蹴ってもらった。
エルティアにも師匠になった報告をすると、エルティアは笑ってもう一度頭を撫でていた。
顔を真っ赤にしながら、それでも口角が上がりそうになっている姿は微笑ましいの一言に尽きる。
そのまま魔法を教えてくれるのかと思ったら、エルティアが目線を合わせた上に顔を近づけたせいで逃げる様に帰っていった。
それを見て不思議そうに首を傾ける男2人に、エルティアがとった行動に同情しえない複雑な気持ちの女2人が暫くいなくなった彼女の事を思っていた。
リリイちゃん見送った後、エルティアを除いた私たちは自室に戻った。
「そう言えば魔導士ってなんなの?」
魔法を極めた職だと思っていたけど、リカルドは魔族かどうか聞いていた。これは早めに聞いておかないといけないと思ったから。
「あー。そっかぁ、カオリ様はこの世界の人じゃなかったもんねぇ。
魔導士って魔力量が多い魔族がさっきリリイししょ-も言ってたけど魔法を極めた人が名乗る事を許される特殊職なんだ。
魔族って言うのは、瘴気の影響を一番受ける種族で、正気を保てず亜人や獣人、人間を襲ったりしちゃうんだ。
魔族なんていうけど、理性を簡単に失う化け物みたいなものかなぁ?
・・・・だから僕は魔族のあの子をいくら魔法を極めた魔法に詳しい魔導士だとしても、師匠にはしてほしくはなかったなぁー。しかも半端者でしょ?百歩譲っても魔族までだなぁ。」
私のベッドでゴロゴロと寝転がっている。
リカルドは声や表情こそは拗ねたように見えたけど、何故かひんやりとした冷たさを言葉から感じた。
ジュードもリカルドの言葉に頷く。
「同感です。魔族は敵に回すべきではないですが、いつ瘴気に当てられ敵になるかもしれないそんな相手を浄化できないカオリ様の近くに置いておくなど、私は許したくはないです。
例えカオリ様が安心しきっていたとしても、私はあの娘を警戒せずにはおれません。しかも半端者とも言っていました。尚警戒を怠れない相手です。決めた後で言うのもなんですが、やめておいた方がいいかと。」
ジュードは表情を変えずに声色だけは嫌悪感をにじみだしていた。
「・・・その半端者って言うのは何なの?」
魔族よりも警戒される半端者、それがなんなのか気になった。
ジュードは一度目を閉じて息を吐くと、こちらを見た。
「・・・半端者とは人として生まれながらに魔族の特異性を持ちうるものです。
魔族の特異性を持つものの特徴として、魔族と同じ高い魔力、そして瘴気の耐性のなさ。
魔族には頑丈な体がありますが、半端者はそれ以外のエルフやドワーフ、獣人や人間に生まれるので、
体の頑丈さはない。魔力の高さは人よりも多く、それは時に魔族をも超えるとされていますが、
その分、魔族でもおかされることのない瘴気の量で正気を失う。
魔族としても人としても中途半端、それが半端者です。」
初めて見たジュードの表情は、嫌悪にまみれた顔だった。
「私にだって全く浄化の光がないわけじゃなかったし、もしかしたらこの屋敷くらいは浄化し続けられるかもしれないね。
そうなれば、あの子だってここでは大丈夫な気がしてこない?リカルドとかジュードが守ってくれるなら安心だし。」
そう、私は全く浄化できないわけじゃないはず。緑と白い光があるのは確認しているので、浄化の魔法を教えてもらったらこの屋敷にかけられないか相談してみるつもりでもあった。
ジュードの顔はまだ晴れていないけれど、今は私が浄化の魔法が使えるまで待っていてほしいと思った。
それにしても、どうしてジュードもリカルドもそんなに半端者に対して厳しいのだろう。
それとも、この世界の住人はその半端者に対して厳しいのだろうか。
どうやら私はまだまだこの世界の常識を何も知らないらしい。
わからないことがあれば即座に聞くようにしようと改めて思った。
まあそれでも可愛かったので師匠を変えるなんてことはするきはないのだけどね。
心配してくれたのに、申し訳ないけれど、師匠はリリイちゃんです。
その時だけリリイちゃんが師匠になる事に対して文句を言っていたが、私が変える気がない事がわかっていたのか、そのままの態度で過ごしてくれた。
翌日、リリイちゃんが魔法を教えるべく私の部屋にまたノックもせずに乗り込んできたため、また押さえつけられた。
「なんでじゃあ、なんでなのじゃあ!!」
入ってきたのがリリイちゃんだとわかると、少し観察した後にその拘束を解いた。
多分彼女が暴走していないかを確認しているんだろうと思った。
ノックして入れば拘束されるなんてことは恐らくないはずなのに、勢いよく扉を開けて乗り込んでくるからそうなるって彼女はわかっていない。
やんわりと伝えても首を傾けるだけで分かってはくれなかった・・・・。
私はいつもの本を読んでいる椅子に座り、リリイちゃんはジュードが用意した椅子に座った。
「して、お主は何の魔法の資質がある?魔力の感じからして、‥‥浄化か?いや癒し・・・?どれもあまり感じたことのない心地いい魔力の波動をしておる。」
不貞腐れているままリリイちゃんはぶつぶつとつぶやいた。
「えっと、一応癒しが強いみたいなんです。濃い緑色に光っていて、その次に白い光が淡く光っていたので、浄化も少しあるのかなって。」
一応水晶で見てあの禿げが言っていたことを考慮して伝える。
リリイちゃんは驚いたように目を見開いた。
「なんと、そなたはほんに聖女の器であったのか・・・!」
リリイちゃんの反応から私は聖女だと思われていなかったらしい。
けれど、その反応がどうして聖女の器と言えるの?不思議に思って聞いてみることにした。
疑問はすぐに聞かないと後々後悔することは分かっているから。
「聖女じゃなくて聖女の器?それってどういうことですか?」
リリイちゃんは痛々しいものを見る目で私を見てくる。
「なんじゃ貴様、聖女などと名乗っておきながら聖女が何たるかを知らぬと申すか。
聖女とは、そもそも神の器になりうる存在を指す。その器であるから、聖女の器とは、神の器となりうるものの器、つまり聖女の卵ということじゃ。
聖女の卵である聖女の器には、瘴気を体内に取り込まないように浄化の力と信仰の対象となるべく癒しの力を持つとされている。
聖女は自ら住む場を聖域として定め、一切の瘴気が入らないようになる。
お師匠様の話では、その聖域を国全体に施すための聖女様であると聞く。・・・ここまでで何か聞きたいことはあるかの?」
リリイちゃんの説明のおかげで聖女が何たるかはわかった。ん?でもそうなると一つ引っかかる。
私にはその聖女の器としての能力があるけれど、もう一人の聖女様には癒しの力はない。
そうなるともう一人の聖女様はどういうことになるの?
「そうなれば、浄化の力しかない聖女様はどうなるの?聖域って言うのを作れるの?」
いつの間にか私が本当の聖女っぽい話になっているけれど、それだと何故あの禿げはあの子を優遇したの?
「まあ聖域を作るだけなのだとしたら、浄化の力が強いだけで事足りる。癒しの力なんぞ、他の者が補えばよい。聖域に必要な魔力を10とすると、7が浄化、3が癒し。魔力は杖などを媒介すれば2人だろうが問題ないしな。
3程度の魔力なら、多少癒しの魔法が使えずとも、癒しの適性があるだけで事を成せる。恐らく貴様に十分な浄化の力がないため、そのもう一人の方をえらんだのではないか?癒しの力が強い貴様ではどの道国を包めるほどの聖域など張れんからな。」
なるほど。聖女様ってつまり聖域を張るための存在ってわけね。
聖女と聖女がなぜ必要なのかを知ったところで、また一つ疑問が出てきた。
「師匠は何故そんなに聖女について詳しいんですか?それに聖域の事も。」
聖域も魔法であると言えることはなんとなくはわかったけど、魔導士ってそこまで詳しいのかな。
「まぁ、魔導士は全ての魔法に通じるとはいえ、聖域について記されている書物が魔族の図書にある。
私もそれを師匠から借りて読んだのだ。聖域は我の生活にもかかってくる問題だからな。
魔族ならだれでも知りえる事実と言っても過言ではない。魔族は長く生きる。それ故受け継ぐ歴史も多い。
聖女の器であるなら、小さき聖域の作り方くらいなら教えてやらんこともない。」
まさかリリイちゃんが聖域の作り方まで知っているとは思わなかった。
もし聖域をこの屋敷だけでも作れたなら、リリイちゃんに関する不安がなくなる。
そうなれば、あまりよく思っていなかった2人も考え方が変わるかもしれない。
「よろしくお願いします!!!まず聖域から教えてください!!」
皆が安心できるような、そんな場所を作りたい。この屋敷に勤めている皆が不安になる事がなく、リリイちゃんも遊びに来ても安全な場所でありたい。
そして、私は私自身で自分の居場所にしたい。
休んでてなんて、そのままで放置されているなら、どのような場所になったって問題ないよね!!
けれどそんなにうまい話はなかった。
「バカか貴様。まずは魔力の感じ方からに決まってるだろうが。その後に魔力の出し方、純度の高い魔力の練り方、魔力量を貯めておく魔力圧縮、これらをこなせてようやくこの屋敷に聖域を張れるほどの魔力がたまるというもの。
いくら小さい方の屋敷とはいえ、貴様1人の魔力では、魔力を尽くし暴走して瘴気を集める結果になってしまうぞ。」
すぐにできると思っていた私がバカでした。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
幼女な師匠、どことなくいいですよね。
個人的な趣味で幼女が師匠です。
幼女、可愛い。




