津谷景子の二日目 その4
「次にどこに行くんですか?」
「着いてのお楽しみにしておこうか。まあ、でもケイさんにはそんなに良い所じゃないかも」
私たちはまた中央線に乗り、今度は高尾方面行きに乗った。吉祥寺を通り過ぎ、武蔵境で西武多摩川線に乗り換えて、降りた駅は競艇場前駅だった。
「まあ、駅名でばれてるやろうけど、目的地は競艇場。多摩川競艇場やね」
「へえ、競艇って何でしたっけ?」
「ボートが何着になるか賭けるギャンブルやね。ケイさんみたいな女性はかなり浮くだろうな。掃き溜めにツル。競艇場にケイさん」
そう言って明さんはにやりと笑っていた。
確かに周りを見ると、あまり格好を気にしていないおじさんばかりだ。
一人ではちょっと怖くて来れそうにないかな。
百円を払い入場すると、すぐにマスコットキャラクターの青い鳥の『ウェイキー』と大きなレース時計が見えた。
私はギャンブルをしたことがない。
パチンコ屋にも入ったことがない私にとっては、何だか別世界へ来たような新鮮さを感じた。
外は晴れ渡っているのに、何となく地下のような薄暗い雰囲気がある。
でもボートが走る水辺は明るくて、陰陽が入り混じる不思議な魅力のある場所だと思った。
「ところで何で競艇場に来たんですか?」
「俺が何の力を取り戻したか覚えてる?」
「予知能力ですよね」
「そう。だからここに来たわけやな。予知能力があるって言っても普通は信じへんやろ。だから俺の予知が本当か証明するにはギャンブルが一番やねん。まあ、ケイさんは信じてくれてるみたいやけど、念のためにな」
「じゃあ、もしかして当たるわけですね」
「もしかしてって、ケイさん本当に信じてる?」
「信じてますよ。明さんは嘘つくようには見えませんから」
「何か軽いなあ。でもまあ、いいか」
私は船券の買い方を明さんに教えられながらマークシートを塗りつぶしていく。
マークシートを塗るなんていつぶりだろう? 何だかちょっとこれだけで楽しい。




