津谷景子の二日目 その3
「アシュタンガヨガはどうでした?」
私は起き上がった明さんにタオルを渡した。
「こんなハードなんもあるんやな。めっちゃ疲れたわ」
そう言いながら明さんはにこりと笑っていた。
「アシュタンガヨガはパワーヨガでアクティブに動くヨガですからね。慣れるまでけっこう疲れますよね」
「ほんまやなあ。ケイさんは女性にしては肩がごっついから何でかなって思ってたけど、このヨガのためなんやな」
アシュタンガヨガは腕立て伏せのような動きがポーズの合間に入るため、腕の筋肉も付く。
肩が角ばっていると言われるのは、アシュタンガヨガを愛する女性の宿命だろう。
「あ、面白いことしましょうか」
そう言って私は自分の手を明さんの顔にそっと添えた。
「うわ、凄い熱気を感じる」
「でしょう。私は気だと思うんですけど、アシュタンガヨガをすると気のめぐりが良くなるので、やったあとは手からガンガン気が出てるんです。気功の先生みたいで面白いでしょう」
そう言って私は映画で見た拳法の構えを真似して見せた。
「お、いいね。この状態だったら暴漢が来ても撃退できるかもな」
明さんはそう言って笑っていた。
私たちは着替えると朝食を取ることにした。
朝の九時から開いている店は多いようで限られてくる。
牛丼チェーン店の松屋に私たちは入ることにした。
明さんは松屋の常連らしく、私は行ったことがなかったので一度行ってみたかったのだ。
明さんは朝定食を注文し、私はせっかくなので牛丼の大盛りを頼んでみた。
せっかくだからと言ったけどそれは見栄で、食券を買うときに並と間違えただけなのだけどね。
だって後ろで人が待っているとみんな焦るでしょう?
「ケイさんってけっこう食べるんだね。何となくヨガのインストラクターをやってるから、食べ物を選ぶのかなと思ってたわ」
「うーん。そういう人もけっこういますよ。菜食主義の人もけっこういますし。ただアシュタンガヨガをしている人はあまり気にしない人が多いかも」
「あれだけ動いたら食べてもスタイル保てるか。逆に食べないと動けなさそうだもんな」
松屋で朝食を終えて、次にドトールに入ってコーヒーを飲んだ。
店を二件はしごして、千円も使っていないのは凄いと私は思った。
日ごろだとランチを食べただけでも千円は行くのにね。




