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パパの寝室に潜む『美少年』の侵入者

 コン、コン、コン。


 再びノックの音が響く。

 続いて、私がよく知る冷たい声が聞こえてきた。


「お父様、私です。カレンよ。朝食のトレイを持ってきたわ。どこに置けばいい?」


 ――ドクンッ!


 若返った10代の胸から、心臓が飛び出しそうになった。

 カレンだ! アカデミーに入学してまだ半年の、私の愛する長女!


 私と同じ、青い瞳と深い紫の髪を持つ美しい娘である。


「ま、待ってくれ! とりあえずベッドの端にでも座っていてくれ!」

 私は洗面所の中からパニック気味に叫んだ。


 待て、私の声……なぜこんなに高く、澄んだ声になっているんだ!?

 35歳の男性特有の、あの重く威厳のある低い声は跡形もなく消え去り、完全に思春期真っ盛りの青年の声にすり替わっている!


 ドアの向こうで、心底面倒くさそうな、長いため息が聞こえた。


「はぁ……勝手にするわ。早くしてよね、もうすぐアカデミーに行かなくちゃいけないんだから。それに、お父様……声が変よ? 風邪でも引いたの?」

 カレンが興味なさそうに呟き、続いてベッドの端に腰を下ろす微かな軋み音が聞こえた。


(ヤバい、ヤバい、ヤバい!)

 私は心の中で悲鳴を上げた。


 絶望的な気分で鏡を見つめる。

 普段着ている最高級シルクのパジャマは、肉体が極端に縮んだせいで片方の肩からだらしなくずり落ち、細く白い鎖骨と胸元を無防備に晒していた。


 袖に至っては、私の手のひらを半分以上隠してしまっている。

 これではまるで、一晩中飲み明かして起きたばかりの不良少年のようではないか!


 私は慌ててパジャマの袖をまくり上げ、寝癖のついた青銀色の髪を、少しでも『父親らしく』整えようと必死に手ぐしで梳かした。


 大丈夫だ、カレンにゆっくりと説明すればいい。

 私は彼女の父親なのだ! 聡明な彼女なら、論理的に説明すれば必ず分かってくれるはずだ。うん、絶対に!


 私は深く深呼吸をして、洗面所のドアノブを回し、外へと足を踏み出した。


「カレン、まずはパパの話を聞いてくれ。これには事情が――」


 私の言葉は、空中でピタリと止まった。


 ベッドの端では、アカデミーの制服をきっちりと着こなしたカレンが、足を組んで座っていた。

 しかし、サイズの合わないだらしないパジャマ姿で洗面所から出てきた私を見た瞬間、彼女の無表情な顔からスッと血の気が引いていった。


 彼女は目を限界まで見開き、私の頭の先から爪先までを凝視している。


 一瞬の静寂。

 窓から吹き込む朝の風が、やけに冷たく感じられた。


 次の瞬間、カレンは乱暴に立ち上がり、膝の上にあったパンと紅茶のトレイをあわやひっくり返しそうになった。


「あ、あ、あなた誰よ!?」

 カレンの悲鳴は、窓ガラスを割るかと思うほど高く甲高かった。


 彼女の手は小刻みに震え、私を指差している。

 その表情は、恐怖と、混乱と……そしてなぜか『真っ赤に染まった』顔が入り混じっていた。


「待ってくれカレン、これは――」


「ど、どうしてあなたが、あんなだらしない格好で、お父様の洗面所から出てくるのよ!?」

 カレンは一歩後ずさりし、私がまるで変態のバケモノであるかのように、胸の前で両腕を交差させた。


「本物のお父様はどこ!? あなた、お父様に何をしたのよ、答えなさい!?」


 私は言葉を失い、痒くもない頬をポリポリと掻いた。


 なんてことだ、実の娘に完全に侵入者だと思われている!

 だが、優しく模範的な父親として、ここでパニックになってはいけない。


 私は父親としての威厳を見せつけ、彼女を安心させなければ!

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