【8話】ビーストテイマーの勇者
午前九時。
営業部。
蛍光灯の白い光。
コーヒーの匂い。
キーボードの音。
いつも通りの朝。
だが――
「ええええ!?」
新入社員の山城が、スマホを握りしめて立ち上がる。
「推し、復帰してる!!」
周囲の視線が集まる。
「朝からうるさいぞ」
「営業部だぞここ」
だが山城は止まらない。
「いや聞いてくださいよ!」
スマホを掲げる。
画面にはニュース。
“人気アイドル 星琥珀 活動再開”
「昨日あんな事件あったのに、もうコメント出してるんですよ!」
先輩が呟く。
「メンタル強いな……」
山城は興奮気味に続ける。
「しかも今日、地方イベント出るらしいです!」
「ファンミーティング!」
「動物テーマのイベントで、牧場みたいなとこでやるらしくて!」
営業部の誰かが笑う。
「アイドルと動物か。平和だな」
山城が頷く。
「絶対可愛いですよね!」
正義は、パソコン画面を見たまま。
何も言わない。
山城が振り返る。
「正義さん!」
反応なし。
「推し復帰ですよ!」
正義はキーボードを打つ。
「そうか」
短い。
山城が苦笑する。
「興味ないですよねぇ……」
その時。
正義のパソコンにメールが入る。。
背後で山城の声。
「正義さん、動物好きですか?」
正義は答えない。
山城は続ける。
「俺、犬とかめっちゃ好きなんですよ!」
「推しが動物と触れ合うとか、絶対神回ですよ!」
山城が笑う。
「いいですよね、動物って」
「裏切らないし」
正義は一瞬だけ目を閉じる。
裏切らない。
人間より。
「さあ、無駄話は終わりだぞ。」
正義は山城に仕事に戻るように促す。
正義はメールを開く。
黒い画面。
文字だけが浮かぶ。
【監視指令】
対象世界:ノワール国
対象:ビーストテイマーの勇者
罪状:魔獣による多数の村襲撃
任務:アイドルの勇者の補助
正義は眉をひそめる。
「補助?」
正義は静かに席を立つ。
「外回りだ」
課長が振り向く。
「え? 今日アポあった?」
「急ぎの案件です」
課長は肩をすくめる。
「真面目ねぇ」
営業部を出てから一時間後。
古い商店街。
昼前だというのに、人通りは少ない。
その奥。
小さな看板。
松金物店
錆びたシャッターの横に、ガラス戸。
包丁。
ドライバー。
金槌。
ありふれた町の金物屋。
正義は戸を開ける。
チリン、と鈴が鳴る。
店内は薄暗い。
鉄の匂い。
棚の奥。
カウンターの前に――
一人、少女が立っていた。
長い髪。
サングラス。
帽子を深く被っている。
だが。
正義は一目で分かる。
星 琥珀。
琥珀は振り向く。
一瞬だけ、目を見開く。
「……あ」
小さな声。
その横。
カウンターの向こうで、松が腕を組んで琥珀の手元を見ている。
「使い方は分かったな」
低い声。
琥珀は手の中の細長いケースを見下ろす。
黒いケース。
中身は見えない。
「……うん」
まだ慣れていない声。
松は鼻で笑う。
「勇者を斬る道具だ」
「飾りじゃねぇ」
琥珀の手が、わずかに強張る。
松は視線を正義に向ける。
「来たか」
正義は頷く。
「任務だ」
松は肩をすくめる。
「知ってる」
カウンターの下から、布を取り出す。
油で黒くなった布。
それを琥珀のケースに巻く。
「目立つもんじゃねぇ」
「街中で振り回すな」
琥珀が小さく息を吸う。
「……分かってる」
松は一瞬だけ琥珀を見る。
その目は、職人の目。
「初仕事か」
琥珀は答えない。
松はそれ以上聞かない。
ただ言う。
「壊すな」
短い。
それだけ。
正義が言う。
「初任務だ」
店の空気が、一瞬だけ止まる。
琥珀の指が、ケースを握る。
松はゆっくり息を吐く。
「そうか、まあ頑張んな。」
琥珀は数秒黙る。
それから、ケースをしっかり握る。
「……はい」
松は何も言わない。
ただ顎で扉を指す。
「行け」
外の光が差し込む。
正義は振り返らず歩き出す。
数歩遅れて、琥珀が続く。
チリン、と鈴が鳴る。
扉が閉まる。
店内に残るのは、鉄の匂いだけ。
松は作業台に戻る。
小さく呟く。
「最近の勇者は……ガキばっかだな」
商店街を抜け異世界へのゲートをくぐる。
琥珀は黒いケースを抱えて歩く。
まだ少しぎこちない。
正義が前を歩く。
その時。
誰かが座り込んでいる。
小学生くらいの少年。
肩を震わせている。
正義が足を止める。
「どうした」
少年が顔を上げる。
目が赤い。
「……犬が」
かすれた声。
琥珀がしゃがむ。
「犬?」
少年は腕を見せる。
袖が破れている。
歯形。
うっすら血がにじんでいる。
琥珀の眉が寄る。
「噛まれたの?」
少年は小さく頷く。
「でも……」
声が震える。
「いつもはそんなことしないんだ」
琥珀は静かに聞く。
「君の犬?」
少年がうなずく。
「テロっていうんだ」
「小さいころからずっと一緒で」
息を吸う。
「急に……」
「急に変になった」
正義が聞く。
「どこで」
少年は震える指で道の先を指す。
「公園」
「散歩してたら……」
言葉を探す。
「急に、吠えて」
「俺に噛みついて」
琥珀が驚く。
「飼い主に?」
少年は頷く。
「それで……」
少年の声が小さくなる。
「そのあと」
「誰かに向かって走っていった」
正義の目が細くなる。
「誰だ」
少年はゆっくり言う。
「女の子」
琥珀の手が止まる。
少年は続ける。
「知らない子」
「公園に立ってて」
「犬が吠えてるのに」
「逃げなくて」
正義が聞く。
「それで」
少年は唇を噛む。
「その子……」
少し迷う。
「笑ってた」
沈黙。
琥珀が顔を上げる。
「その子、今どこ?」
少年はまた指を向ける。
丘の方に指差す。
「向こう」
「テロ、あっち行った」
「呼んでも戻らなくて」
正義は歩き出す。
「行くぞ」
琥珀が立ち上がる。
少年が慌てて言う。
「待って!」
二人が振り向く。
少年は青い顔で言う。
「近づかないほうがいい」
小さな声。
「だってあの子……」
言葉が止まる。
それから、ぽつりと。
「テロに」
「何か言ってた」
公園を抜ける。
その先。
ゆるやかな坂道。
草の匂い。
風が強くなる。
やがて視界が開ける。
小さな丘。
その時。
低い唸り声。
「グルル……」
琥珀が足を止める。
正義は丘の上を見る。
そこに。
少女が立っていた。
年は十歳くらい。
長い髪。
ワンピース。
その手に――
細いムチ。
少女の足元。
犬が何匹もいる。
いや。
よく見ると様子がおかしい。
牙をむき。
目が赤い。
そして、その中に一匹。
茶色い犬。
小さな体。
怯えたように震えている。
琥珀が小さく言う。
「……あの子」
正義は何も言わない。
少女がこちらに気づく。
ゆっくり振り向く。
「誰?」
軽い声。
まるで公園で話しかけるような口調。
琥珀は丘を見上げる。
「その犬……」
少女は足元の犬を見る。
「この子?」
茶色い犬。
少女はムチを軽く振る。
パシッ。
空気を裂く音。
犬がビクッと震える。
琥珀が叫ぶ。
「やめて!」
少女は首を傾げる。
「どうして?」
またムチを振る。
パシン。
その瞬間。
犬の体が震える。
骨が軋む音。
背中が盛り上がる。
毛が逆立つ。
牙が伸びる。
琥珀の目が見開く。
「……!」
犬の体が大きくなる。
倍近く。
目が赤く光る。
唸り声。
もう普通の犬じゃない。
魔獣。
正義が静かに言う。
「ビーストテイマー」
少女の顔が明るくなる。
「そう」
嬉しそうに笑う。
ムチを肩にかける。
「わたし、動物と遊ぶの好きなの」
魔獣化した犬が地面を爪で掻く。
少女はその頭を軽く撫でる。
「この子、さっき会ったの」
楽しそうに言う。
「テロっていうんだって」
琥珀の手がケースを握る。
少女は続ける。
「最初は弱かったけど」
ムチをくるっと回す。
「強くしてあげた」
テロが唸る。
少女は丘の下の二人を見る。
「あなたたち」
少し考える。
「なに?」
正義が前に出る。
「勇者」
短い言葉。
少女は目を細める。
それから笑う。
「そう」
嬉しそうに言う。
「じゃあ遊べるね」
ムチを振る。
周りの魔獣たちが唸る。
風が強く吹く。
丘の上。
少女は楽しそうに言う。
「いけ」
その瞬間。
魔獣になったテロが――
丘を駆け下りる。
地面を蹴る音。
速い。
牙をむき、一直線に二人へ向かってくる。
琥珀が一歩前に出る。
「正義さん」
短く言う。
「ここは任せて」
正義は止めない。
ただ一歩下がる。
琥珀が黒いケースを開く。
中から取り出す。
マイク。
銀色のステージマイク。
少女は丘の上で目を丸くする。
「……なにそれ」
琥珀は答えない。
マイクを握る。
足を踏ん張る。
テロがすぐそこまで迫る。
牙。
唸り声。
琥珀が息を吸う。
そして。
マイクに向かって叫ぶ。
「――っ!」
声。
同時に。
空気が震える。
ドンッ。
見えない衝撃が広がる。
地面の草が揺れる。
衝撃波。
テロの体が空中で止まる。
次の瞬間。
吹き飛ぶ。
ドサッ。
丘の途中に叩きつけられる。
テロの体が痙攣する。
数秒。
そして――
動かない。
気絶。
丘の上。
少女の目が輝く。
「すごい」
心から楽しそうな声。
ムチをくるくる回す。
「それ、音?」
琥珀はマイクを下ろす。
息を整える。
丘の上の少女を見る。
正義が静かに言う。
「勇者」
少女は笑う。
「うん」
ムチを握る。
周りの魔獣たちが唸る。
少女は楽しそうに言う。
「もっと見せて」
風が吹く。
丘の草が揺れる。
少女は楽しそうに笑う。
「すごいね」
倒れているテロを見る。
「でも弱いなぁ」
ムチを軽く振る。
パシッ。
空気を裂く音。
その時。
少女の背後。
草の影が動く。
ズシン。
重い足音。
琥珀が目を細める。
丘の上に現れた。
黒い影。
三つの頭。
赤い目。
巨大な犬。
ケルベロス。
三つの口から唸り声が漏れる。
「グルルル……」
さらに。
もう一つ。
地面の影が広がる。
獅子の体。
背中から生える山羊の首。
長い蛇の尾。
キメラ。
琥珀が息を飲む。
「……大きい」
少女は誇らしげに言う。
「この子たち」
ムチを肩に乗せる。
「お気に入り」
ケルベロスの三つの頭が唸る。
キメラの蛇の尾が地面を叩く。
少女が指を差す。
「遊んであげて」
その瞬間。
ケルベロスが丘を駆け下りる。
一直線に琥珀へ。
地面が揺れる。
琥珀がマイクを握る。
正義が前に出る。
視線はキメラ。
正義が言う。
「分担だ」
短い言葉。
琥珀が頷く。
「うん」
ケルベロスが吠える。
三つの口。
同時の咆哮。
琥珀がマイクを構える。
「そっちは任せた!」
正義はそう言うと、キメラに向かって歩き出す。
蛇の尾が襲いかかる。
正義は避ける。
一歩。
間合いに入る。
丘の上。
少女は楽しそうに笑う。
「いいね」
ムチを振る。
「それそれ」
ケルベロスが琥珀へ飛びかかる。
キメラが正義に牙を向く。
丘の上。
二つの戦いが始まった。
キメラが正義へ近づく。
獅子の頭が牙をむく。
山羊の目がぎょろりと動く。
蛇の尾が地面を打つ。
正義は動かない。
ただ一歩、前へ出る。
蛇が襲いかかる。
速い。
だが正義は避ける。
半歩。
体をずらす。
そのまま懐へ入る。
キメラの三つの顔が同時に噛みつこうとする。
その瞬間。
正義の刀が動く。
一閃。
獅子と山羊の首が同時に宙を舞う。
大量の血が草に飛ぶ。
ドサッ。
その巨体は静かに横に倒れる。
丘の草が揺れる。
正義は刀を振る。
血を払う。
振り返らない。
正義は琥珀を見る。
丁度その頃、琥珀とケルベロスの戦闘が始まる。
ケルベロスが咆哮する。
三つの頭。
三つの牙。
巨大な体が丘を駆け下りる。
琥珀はその場から動かない。
マイクを握る。
静かに息を吸う。
ケルベロスが飛びかかる。
地面が揺れる。
琥珀がマイクを前に突き出す。
「――!」
声が放たれる。
空気が震える。
音が一点に集まる。
細く、鋭く。
一本の槍になる。
音の槍。
次の瞬間。
ドンッ。
槍が一直線に走る。
ケルベロスの胸へ突き刺さる。
そのまま――
巨体を貫く。
背中を抜ける。
地面に突き刺さる。
ケルベロスの三つの頭が止まる。
唸り声が消える。
数秒。
巨体が崩れ落ちる。
ドォン。
丘の上に静けさが戻る。
琥珀はマイクを下ろす。
大きく息を吐く。
「……終わり」
丘の上。
少女がぽかんと立っている。
キメラを見る。
ケルベロスを見る。
それから二人を見る。
「……え?」
小さな声。
「強すぎない?」
正義はゆっくり歩き出す。
丘を登る。
草を踏む音だけが響く。
琥珀も後ろからついてくる。
少女の前で止まる。
少女は一歩下がる。
ムチを握る手が震えている。
「ま、待って」
さっきまでの余裕が消えている。
「戦わなくていいでしょ?」
琥珀が言う。
「村を襲わせたの、あなた?」
少女は目を逸らす。
「……」
正義は答えを待つ。
沈黙。
やがて少女が小さく言う。
「……そうだよ」
琥珀の表情が固くなる。
少女は言葉を続ける。
「でも」
必死な声。
「理由があるの!」
ムチを胸の前で握る。
「わたし……前の世界で」
少し息を吸う。
「動物保護団体でボランティアしてた」
琥珀が眉をひそめる。
少女は早口になる。
「捨て犬とか」
「虐待された猫とか」
「いっぱい見てきた」
声が震える。
「人間って最低だよ」
丘の風が吹く。
少女は続ける。
「飼うだけ飼って捨てる」
「殴る」
「売るためだけに繁殖させる」
「金のためだけ」
ムチを握る手が強くなる。
「動物は何も悪くないのに」
「なのに」
少女の目が赤くなる。
「誰も止めない」
琥珀は黙って聞いている。
少女は言う。
「ある日」
「気づいたら」
空を見る。
「この世界にいた」
小さく笑う。
「そしたら」
ムチを持ち上げる。
「動物と話せた」
「強くもできた」
目が二人を見る。
「だから思ったの」
静かな声。
「もう人間に好き勝手させないって」
丘の下を見る。
村の方角。
「動物をいじめる人間なんて」
少女は言う。
「いなくなればいい」
沈黙。
風だけが吹く。
正義は言う。
「だから村を襲わせた」
少女は頷く。
「……うん」
「動物を苦しめた人間だけ」
必死に言う。
「悪い人だけだよ」
琥珀が口を開く。
「でも」
少女が顔を上げる。
琥珀は静かに言う。
「動物は選べない」
少女の目が揺れる。
琥珀は続ける。
「命令したのは」
「あなたでしょ」
少女の言葉が止まる。
正義が一歩前に出る。
「勇者」
冷たい声。
「監視対象」
少女の顔が青くなる。
「……まって」
小さな声。
「殺さないで」
ムチが手から落ちる。
草の上に転がる。
少女は震えている。
「わたし……」
涙が滲む。
「動物を守りたかっただけ」
沈黙。
風が吹く。
正義は少女を見たまま言う。
「琥珀」
琥珀が顔を上げる。
正義は静かに言う。
「さあ」
短い言葉。
「仕事の締めだ」
琥珀の体が止まる。
少女を見る。
まだ子供だ。
震えている。
琥珀の手が、マイクを握る。
しかし。
動かない。
指が震える。
「……」
声が出ない。
琥珀は小さく言う。
「わたし……」
目が揺れる。
「人を……」
言葉が続かない。
正義が横に立つ。
低い声。
「これが」
一瞬の間。
「うちらの仕事だ」
琥珀の手が震える。
マイクを見る。
ステージで歌うための道具。
なのに。
今は違う。
琥珀はゆっくりマイクを構える。
マイクの下部。
小さなロック。
カチッ。
仕込み刀が滑り出る。
細く、鋭い刃。
少女の目が見開く。
「……やだ」
一歩下がる。
「やめて」
琥珀の足が動く。
一歩。
また一歩。
震えながら。
少女の前に立つ。
目を閉じる。
そして――
刃を突き出す。
ザッ。
鈍い音。
少女の体が止まる。
目が大きく開く。
口が少し動く。
「……どうして」
小さな声。
そのまま。
体が崩れる。
草の上に倒れる。
丘の上に静けさが戻る。
琥珀の手からマイクが落ちる。
カラン。
琥珀はその場に立ったまま。
動かない。
正義は少女の体を見る。
そして言う。
「罪は世界を選ばねえ」
丘を下りる。
二人は何も言わない。
やがて公園が見える。
広場で少年と犬が戯れている。
少年が追いかける。
「テロ!」
犬が跳ねる。
尻尾を振る。
少年に飛びつく。
転びそうになって、二人で笑う。
琥珀の足が止まり。
琥珀の手の中のマイクが少し揺れる。
目が潤む。
一滴、落ちる。
琥珀は顔を伏せる。
正義は振り返らない。
そのまま歩いていく。
営業部。
昼休み。
テレビの前に数人が集まっている。
山城もその一人。
画面の中では、星琥珀が笑顔で立っていた。
背後には広い牧場。
牛がのんびり草を食べている。
「はい!今日は動物ふれあい牧場に来ています!」
明るい声。
琥珀が子牛を撫でる。
「かわいいですね〜!」
山城がうっとりする。
「うわぁ……」
隣の先輩が笑う。
「推しだもんな」
山城は頷く。
「動物と推しとか最高すぎる……」
テレビの中。
琥珀が羊を抱く。
「もふもふ〜!」
スタッフが笑う。
ほのぼのした空気。
山城が満足そうに言う。
「癒やされますねぇ」
その時。
テレビ画面が切り替わる。
テロップ。
【続いてはグルメレポート!】
山城が首をかしげる。
「ん?」
次の瞬間。
画面に映ったのは――
焼肉屋。
網の上で肉が焼けている。
ジュウゥゥ……
琥珀が笑顔で箸を持つ。
「はい!こちら特選カルビです!」
肉を持ち上げる。
油が光る。
山城の顔が固まる。
琥珀が一口食べる。
「ん〜〜!」
満面の笑み。
「柔らかい!美味しい!」
営業部が静かになる。
山城がテレビを見る。
牧場。
牛。
焼肉。
山城がぽつりと言う。
「……え?」
先輩が笑う。
「さっき牛撫でてなかった?」
山城は真顔。
「……撫でてました」
テレビの中。
琥珀が元気に言う。
「お肉最高です!」
山城が遠い目をする。
「情緒が追いつかない……」
背後で。
正義がパソコンを打っている。
画面を見たまま。
何も言わない。
ただ一度だけ。
小さく息を吐いた。
琥珀の初任務はどうでしたか?
登場して欲しい勇者とかいましたら必殺しますね。




