表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走転生勇者を最強監視者が必殺しちゃいます。〜罪は世界を選ばねえ〜  作者: がお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

【12話】通販の勇者

午前九時。

営業部。

蛍光灯。

コーヒーの匂い。

キーボードの音。

いつも通りの朝。

だが――

「見て見てこれ!」

課長がやたら上機嫌で声を上げる。

手には革のバッグ。

黒。

シンプル。

だが、やけに艶がいい。

「通販で買ったんだけどさ〜」

営業部の視線が集まる。

「またですか」

先輩が苦笑する。

課長は気にしない。

「これがさ、めちゃくちゃ安いのに品質ヤバいのよ~」

バッグを机に置く。

ドン。

妙に重い音。

山城が身を乗り出す。

「いいっすねそれ!」

課長は満足そうに頷く。

「でしょ?」

バッグを開ける。

中には書類。

ペン。

そして――

見慣れないタグ。

小さな文字。

びっしりと英数字。

山城が首をかしげる。

「どこのブランドすか?」

課長が笑う。

「知らないわよ!」

山城が笑う。

「なんすかそれ」

「まじで怖いっすよ」

課長は気にしない。

「いやいや、レビューも星5ばっかなのよ」

スマホを見せる。

画面には通販サイト。

評価:★★★★★

レビュー。

【人生変わりました】

【もう手放せません】

【これ以外使えない】

山城が笑う。

「なんか宗教っぽいっすね」

課長も笑う。

「やっぱりそう?」

その時。

正義の手が止まる。

ほんの一瞬。

視線が、バッグに向く。

課長が言う。

「これさ、注文してから届くのも異常に早くて」

「昨日の夜頼んで、朝にはもう来てた」

山城が目を丸くする。

「え、当日配送っすか?」

課長は首を振る。

「いや、それがね」

少し間を置く。

「配送履歴、出てこないのよね」

空気が、少しだけ変わる。

「それって、バッタもんでは、」

課長がひきつった。


その時、正義の画面に――

メール。黒い画面。

【指令】

対象世界:シャンバリ

対象:通販の勇者

罪状:通信販売による違法薬物の蔓延

任務:抹殺


正義の目が細くなる。

「……薬物」

小さく呟く。

背後で課長の声。

「どこのだろうと便利よこれ!」

バッグを叩く。

ドン。

その音が、やけに重く響く。

正義は静かに席を立つ。

「外回りに行ってきます。」


昼前。

空は白い。

人の流れ。

車の音。

日常。

その中で。

正義だけが、少しだけ外れている。

ポケットからスマホを取り出す。

短く打つ。

【来い】

送信。

数分後。

駅前のベンチ。

帽子。

サングラス。

琥珀が座っている。

膝の上。

黒いケース。

正義が前に立つ。

琥珀は顔を上げる。

「……また、仕事?」

小さな声。

正義は頷く。

「任務だ」

琥珀の指が、ケースを軽く握る。

一瞬の間。

「……うん」

立ち上がる。

二人、並ぶ。

少しだけ距離がある。

歩き出す。

雑踏の中。

誰も気にしない。

信号を渡る。

ビルの影。

人通りが少なくなる。

裏路地。

静か。

正義が足を止める。

壁。

ただのコンクリート。

だが――

正義が手をかざす。

空間が歪む。

光。

揺らぎ。

ゲート。

琥珀がそれを見る。

何度目か。

それでも、慣れない。

小さく息を吸う。

正義が言う。

「行くぞ」

一歩。

ゲートへ踏み出す。

光に包まれる。

正義も続く。

二人の姿が消える。

――

転移先の町の路地裏に転移する。

路地を抜ける。

昼前の光が、少しだけ眩しい。

ビルの隙間。 生活音。 遠くの車の音。

その中に――

怒鳴り声。

「おい! どこ行く気だ!」

振り向く。

古びたアパートのドアが勢いよく開く。

中から、少年が転げ落ちた。

体勢を崩し、 地面に手をつく。

後ろから出てきた男。

目が虚ろ。 頬はこけている。 苛立ちが、そのまま形になったような顔。

「金はどうした!? あぁ!?」

少年は何も言わない。

ただ――

立ち上がる。

そして、

走った。

男は追わない。

ドア枠に寄りかかり、 荒い呼吸を繰り返すだけ。

「……チッ」

舌打ち。

その手は、わずかに震えていた。

正義は、視線を外す。

「……薬物」

琥珀も、頷く。


――数分後。

公園。

広場。

昼前の、少しだけ緩い空気。

子どもが走り、 犬が吠え、 ベンチには老人。

その中で――

少年がいた。

さっきの少年。

息を切らし、 立ち止まっている。

視線が合う。

一瞬。

沈黙。

少年の目に、 わずかな警戒。

そして――

「……あんた、見てたろ」

低い声。

正義は、否定しない。

「少しな」

少年は顔をしかめる。

しばらく黙る。

視線が、地面に落ちる。

靴の先で、小石を軽く蹴る。

転がる音。

小さい。

「……昔はさ」

ぽつり。

「普通だったんだよ」

正義は何も言わない。

少年は続ける。

「優しかったし」

「ちゃんと働いてて」

少し、笑う。

だがすぐ消える。

「飯も、一緒に食ってた」

間。

風が吹く。

「それがさ」

少年の声が、少しだけ低くなる。

「変なもん、使い始めてから」

顔を上げる。

目の奥に、怒り。

「急に、ああなった」

正義の視線がわずかに鋭くなる。

琥珀も、黙って聞いている。

「最初はさ、元気になるとか言ってて」

「仕事も楽になるって」

少年が笑う。

乾いた笑い。

「そしたら、どんどん使うようになって」

「気づいたら――」

言葉が止まる。

拳が、少しだけ震える。

「……あんなだよ」

沈黙。

公園のざわめきが、遠くに聞こえる。

少年は続ける。

「うちだけじゃねえんだ」

「近所の大人も、みんな似たようになってる」

「なんか……」

少し迷う。

言葉を探す。

「変なもん、買ってるんだよ」

正義が静かに聞く。

「どこで」

少年はすぐに答える。

「通販」

その一言で、空気が固まる。

「“勇者様の店”ってやつ」

琥珀の目が細くなる。

少年は吐き捨てるように言う。

「そいつが来てからだよ」

「街、おかしくなったの」

風が止まる。

正義は、わずかに目を伏せる。

「……そうか」

小さく呟く。

その声には、感情がほとんどない。

だが――

次の瞬間。

視線が上がる。

冷たい。

「対象、確定だな」

琥珀が、静かにうなずく。


――夕方。

少年の父親の家。

ドアが開く。

男が出てくる。

足取りは不安定。

目は焦点が合っていない。

「……くそ……」

ポケットをまさぐる。

小銭。

数枚。

足りない。

舌打ち。

それでも、歩き出す。

――その少し後ろ。

正義は人の流れに紛れながら尾行する。

琥珀が隣に並ぶ。

「当たりか」

小さな声。

正義は視線を外さない。

ただ、見る。

観察する。


やがて――

街の外れのやけに立派な建物。

看板には

【勇者の店】

正義の目が細くなる。

「ビンゴだな」

男がドアを押し開ける。

カラン。

音。

正義は少しだけ間を置く。

「……入るぞ」

琥珀が頷く。

二人。

気配を殺す。

ドアの横。

死角。

中の様子を、わずかに覗く。

――店内。

男がドアを押し開ける。

カラン。

音が、静かに鳴る。

店内。

甘い匂い。

男はふらつきながら進む。

「……くれ」

カウンターに手をつく。

勇者が微笑む。

「いらっしゃいませ」

「いつものですね」

男は頷く。

呼吸が荒い。

「早く……」

勇者は商品を手に取る。

透明な瓶。

中で、液体がわずかに揺れる。

「お代は?」

男が金を出す。

震える手。

小銭。

ジャラ。

カウンターに散る。

勇者が見る。

そして、静かに言う。

「足りませんね」

男の顔が歪む。

「……頼む」

「ツケでいいだろ……」

「前も――」

勇者は首を振る。

「前回は特別です」

「今回は違います」

男が身を乗り出す。

「頼む……!」

「これがないと……!」

声が震える。

目が、血走る。

「……死ぬ」

勇者は一瞬だけ考える。

そして、微笑む。

「それは困りますね」

男の顔に、わずかな安堵。

だが――

「死んでください」

空気が止まる。

「……は?」

勇者の手が動く。

カウンターの下。

刃。

光。

一歩。

距離が詰まる。

その瞬間。

男の視線が、わずかに横へ動く。

ドアの影。

――正義。

一瞬だけ、目が合う。

理解。

ほんの一瞬で。

男の表情が変わる。

怯えではない。

決意。

震える手が、ポケットに入る。

掴む。

握る。

そして――

正義へ、放る。

小さな音。

床に滑る。

正義の足元で止まる。

小銭。

有り金。

男が、口を開く。

血が混じる。

「……頼む」

声は、かすれる。

「……あいつを……」

息を吸う。

震える。

「……やってくれ」

一瞬。

視線が揺れる。

遠くを見るように。

「……あいつに……」

「……罪を……」

言葉を絞り出す。

「……俺の……分も……」

呼吸が途切れる。

最後に。

小さく。

「……あいつに……返してやってくれ……」

息が、落ちる。

その瞬間。

刃が走る。

音はない。

体が崩れる。

床に倒れる。

静かに。

完全に、動かない。

沈黙。

血の匂い。

勇者がため息をつく。

「……困ったお客様ですね」

足元の死体を見下ろす。

そして――

ふと、視線を上げる。

ドアの影。

そこにいる。

正義。

琥珀。

勇者が、笑う。

「……覗き見ですか?」

正義は、足元の金を見る。

拾う。

掌に乗せる。

わずかに握る。

その目は、冷たい。

「依頼は受けた」

小さく、呟く。

琥珀が横で一言。

「契約成立ですね」

正義が踏み出す。

血の上。

音を立てずに。

「琥珀」

視線が、勇者を捉える。

「仕事の時間だ。」

正義の声が落ちる。

その瞬間。

勇者が、わずかに眉を上げる。

「……おや」

初めて見る“客”を見るような目。

警戒は、まだない。

「随分と物騒ですね」

軽く笑う。

「ここはお店ですよ?」

右手が動く。

空中。

指を滑らせる。

何もない場所に――

光。

薄いウィンドウ。

商品一覧。

「まあ、構いませんけど」

スクロール。

タップ。

「トラブル対応も、仕事のうちですから」

光が弾ける。

手の中に――

銃。

黒。

無機質。

現代のもの。

構える。

自然な動き。

「今は何でも手に入る」

引き金に指をかける。

「便利な時代ですよね」

――発砲。

乾いた音。

だが。

「――防ぐ」

琥珀の声。

マイクのスイッチ。

カチリ。

空気が震える。

見えない壁。

弾丸が、ぶつかる。

弾ける。

火花。

床に転がる。

カラン。

勇者の動きが、止まる。

一拍。

「……へえ」

初めての反応。

興味。

ほんの少しの違和感。

「防いだ?」

琥珀が軽く笑う。

「音はね、壁にもなるのよ」

もう一度スイッチ。

低いノイズ。

空気が張る。

勇者は銃を構えたまま、じっと見る。

観察。

測る。

「なるほど……」

呟く。

「ただの一般人ではない、か」

だがまだ――

余裕。

笑みは消えない。

「でも、その程度で」

再び引き金。

連射。

弾丸。

連続で叩きつける。

だが、全て止まる。

弾ける。

床に散る。

音だけが残る。

沈黙。

勇者の笑みが、わずかに薄くなる。

「……おかしいな」

初めての“ズレ”。

視線が、正義へ向く。

ゆっくりと。

「君は……何だ?」

正義は答えない。

ただ――

一歩、前に出る。

バリアの内側。

弾丸の嵐の中を。

何もないように。

歩く。

その姿に。

勇者の目が、細くなる。

「……なるほど」

今度は、はっきりと。

警戒。

「これは、“商品”じゃない」

空中を操作する。

動きが、少し速い。

「いいですね」

笑う。

今度は、戦う者の顔で。

「試してみたくなりました」

光。

次の“商品”が呼び出される。

勇者が指を動かす。

空中。

ウィンドウ。

迷いはない。

一つ、選ぶ。

光が弾ける。

手の中に――

長く、重い。

異様な存在感。

――レールガン。

勇者はそれを、何の感慨もなく構える。

――発射。

光が一直線に走る。

琥珀が反応する。

「――防ぐ」

マイク。

スイッチ。

カチリ。

音。

見えない壁が、展開される。

正義の前。いつも通り。止まるはずの軌道。

だが――当たる。

そのまま、バリアを突き抜ける。

琥珀の目が見開かれる。

「……え」

次の瞬間。

砕ける。

バリアが、割れる。

衝撃が後ろの壁を粉砕する。

粉塵。

琥珀が、その場に立ち尽くす。

マイクを握ったまま。

信じられない、という顔。

「……今の」

小さく、呟く。

「……防げなかった?」

勇者が、軽く銃を下ろす。

「へえ、凄い威力ですね流石は軍の横流し品ですね。」

勇者の指がもう一度動く。

再びレールガンから玉が出る時。

今度は――

正義が一歩、踏み出した。

まるで弾丸の軌道を読んだかのように、自然に前へ。

勇者の正面。

目の前。

瞬間。

弾丸を弾く。

金属音。

火花。

軽く跳ね返る。

レールガンの初速。

威力は――まだ十分ではない。

正義は立ち止まらず、踏み出し、勇者の喉元に刀をつき出す。

「……」

琥珀の目も、微かに大きくなる。

正義は

「レールガン……出たばかりの弾丸は、まだ加速段階だ」

「発射直後に正面から受け止めれば、十分に弾を弾ける」



なるほど、ではその状況を短くまとめるとこんな感じになるよ。

正義の刃が、勇者の喉元に突き当たる。

勇者の目が大きく見開かれる。

「待ってくれ…!俺は現世で、通信販売員をしてた…」

「毎日、ノルマに追われ、その内に過労で倒れこの世界に転生した」

震える声。

正義は一歩も引かない。

「転生先でも、それを利用して、一儲けしようとしたのか?」

勇者の肩が小さく震える。

「闇通販…麻薬…全部、計画通りだったんだ!」

琥珀が横目で見つめる。

正義の眼差しには、迷いはない。

「命乞いは、ここでは通用しない」

勇者は唇を噛み、冷や汗を流す。

刃が微かに圧力を増す。

「……お願いだ…!」

勇者の命乞いが続く。

正義は静かに刃を押し付ける。

目に迷いはない。

そして、低く、確信を帯びた声で――

「罪は世界を選ばねえ」

刃が一閃する。

勇者の身体が崩れ落ち、静寂だけが残る。

琥珀はただ、その光景を見つめる。

主人公は地面に落ちた小銭を見下ろす。

「これだけじゃ、換金してもたかが知れてる」

主人公は琥珀を見て言う。

「好きにしろ」

琥珀は頷き、街を駆ける。


少年の家の前。扉をノックする。

少年は顔を出すと、驚いた目で琥珀を見る。

「お姉さん、こんな時間にどうしたの?」

琥珀は静かに答える。

「お父さんは、病気の治療で遠くの町に行ったの」

そして、少し血のついた小銭を少年に差し出す。

「……ありがとう」

わずかに笑みを見せる少年。

琥珀はうなずくと、何も言わずに立ち去った。


光が揺れ、二人は現代に戻る。

駅前。いつもの街の雑踏。

琥珀はふと、胸の内で少年のことを案じる。

「……あの子、大丈夫かな」

主人公は肩をすくめる。

「そこまでは、俺らの仕事じゃない」

琥珀は少し黙り、視線を地面に落とす。

でも心の片隅には、少年の笑顔が残っていた。

そのまま二人は歩き出す。

日常に戻った街の光に包まれながら――

翌日。営業部。

課長がため息混じりにバッグを見つめる。

「この前のバッグ、ハードオフで半値以下で売ってたわ……」

眉をひそめ、肩を落とす。

「やっぱ通販なんて信用できなわね」

山城が苦笑い。

「そ、そうっすね……」

正義は軽く肩をすくめ、微かに笑う。

蛍光灯の下、いつもの朝の光。

何事もなかったように、日常が戻る。




今回も長めですいません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ