7リアーヌ視点
「お父様!」
「リアーヌか。わざわざ執務室に来るってことは何かあったのかな」
父は私の姿を見ると、すぐに笑顔になり、手を広げてハグをしようと待っている。
「私はいつまでも子供じゃないわ」
私がそう言うと、それも嬉しいようで父はにこにこと笑顔になっている。
「で、どうしたんだい?」
いつものやりとりに私は面倒だなって思いながらも父に甘えた声を出してお願いをする。
「あのね、実はね、この間、マードル国との打ち合わせの場にいた文官のことなんだけど」
「ふむ」
「彼のこと気に入ったの! とっても格好いいの。話し方もスマートで……」
「そうか、そうか」
「で、お願いがあるの」
「なんだい? リアーヌのお願いならなんでも聞いてやろう」
「その文官を私の従者にしてほしいの! 彼も隣国に連れていきたいわ」
「打ち合わせの場にいた文官か。確か、ベルロア伯爵子息だったか……」
父はそう言うと、少し困ったような顔をして見せた。
「ベルロア伯爵子息……。ジルベール・ベルロア伯爵子息ね!」
「残念ながら彼は次期伯爵だ。リアーヌのお願いを聞いてやりたいが、こればかりはリアーヌのお願いでも難しいな。それに彼は既婚者だ。そんな男より若くて有能な子息は沢山いるし、リアーヌには似合わないぞ」
「嫌よ!私は彼が気に入ったの。お父様、何とかしてっ! 彼をマードル国に連れていきたいわ。お願い、お父様。ね?」
「うーむ……。こればかりは難しいな。ベルロア伯爵は愛妻家だという噂もある」
「愛妻家? そんなのは噂だけでしょう? 殆どの貴族は政略結婚なんですもの。妻なんてお飾りに過ぎないわ。そうだ、お父様。その夫人を離縁させれば問題ないわよね?」
「いや、貴族同士の契約もあるから難しいだろうが……。うーむ、離縁となれば、隣国へ連れていける可能性はなくもないが……」
父の煮え切らない態度にイライラしちゃう。
「離縁させるのは問題ないわ。私から夫人に諦めてもらうように話をしてくるねっ。ベルロア伯爵子息も国一番の美人な私と一緒にいたいはずよ」
「リアーヌがそこまで言うのなら、仕方がないな。だが、あくまでベルロア伯爵子息がリアーヌと一緒に居たいと言えば、だ。わかったかい?」
「お父様、ありがとう! 早速話をしてくるわ」
ふふっ、お父様の許可も貰ったし、あとは夫人と離縁させればいいだけね。
彼を連れて歩けば隣国の令嬢たちも羨ましがること間違いなしね。結婚相手のヴァルト様が彼の美しさに嫉妬して私を巡って争いになってしまったらどうしましょう。
今から楽しみで仕方がないわ。
私は上機嫌で筆を執った。




