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「いいえ。シシュカ様、悪いというより、良い知らせですね。シシュカ様、おめでとうございます。ご懐妊の兆候がみられております」
「えっ!?」
私は一瞬フィル先生が何を言ったのかさっぱりできなかった。
「えっと、あの……」
「私は医者ですので詳しくは産婆に調べてもらわねばなりませんが、妊娠の初期のようです。流産しやすい時期ですので当分は安静にしておいた方がよいと思います」
「は、はいっ! 安静ですねっ。安静にするわっ」
私は先生の言葉にビクッと肩が跳ね、つい力強く頷いてしまった。
その様子を見た先生はふっと笑顔になった。
「私は専門ではないのでここからは産婆を呼んだ方がよいでしょう。ですが体調を崩すようなことがあればすぐに私を呼んでください」
「わかりました。フィル先生、ありがとうございます」
私は口元がむずむずしているのに気づいた。
嬉しい気持ちと、突然知らされた驚きもある。まさか、こんなにすぐに赤ちゃんが私の元へやってきてくれるとは思ってもみなかったもの。
ジルは喜んでくれるかしら。
きっと泣いちゃうかもしれないわね。
お義父様たちにも知らせたいけれど、まだ妊娠初期だって言っていたし、落ち着くまでは黙っていた方がいいわよね。
男の子の名前と女の子の名前を考えないとね。
ジルはどんな名前を考えてくれるかしら。
私が一人夢を追いかけている間にマティが助手から注意事項を聞いてメモを渡してもらっていたようだ。
「ではシシュカ様、我々は戻ります」
「先生、ありがとうございました」
フィル先生と助手の人は笑顔で病院に戻っていった。
先生を見送った後、すぐにエドがマティから診断結果を聞いたようだ。
「シシュカ様、ご懐妊おめでとうございます。ジルベール様もお喜びになられますね」
「そうね」
「今晩にでも話をなさいますか?」
「そのつもりだけど、今日も帰りが遅いと思うのよね。起きていられるかしら。明日の朝にでも話すのが良さそうね」
「畏まりました」
「そういえば先生は当分の間安静にって言っていたわ。安定期に入るまではお茶会や舞踏会の参加は控えた方がいいわよね?」
「馬車は揺れますし、当分の間は控えた方がよろしいかと存じます」
「わかったわ」
じわじわと広がる実感ににやけが止まらない。マティはすぐにお茶を淹れてくれる。
「シシュカ様、今日からはこちらのお茶に変えておきますね」
「マティ、ありがとう。ジルが帰ってくるのが待ち遠しいわ」
「奥様、あまり無理しないようにお願いします」
「ええ、そうね」
私は優しい花の香りに包まれながら、ゆっくりとお茶を味わった。




