38番外編リアーヌ4
「リアーヌ様、どうしてそんな悲しい顔をしているのですか?」
「アーロン。私にはアーロンだけなのに。お父様はアーロンを手放しなさいって言うの」
「えっ、そんな……。ずっとリアーヌ様の傍に居たいんです」
「でもね、お父様は許さなかったの。それもこれも私が王女じゃないせいなのよ。私が王女だったらアーロンを悪く言う人たちを黙らせたのに。私を王女じゃなくさせたあの豚女のせいだわ。
そのせいでジルベールが私を馬鹿女呼ばわりしてきたんだもの。ジルベールなんて嫌いよ。あんな顔だけの男、私には必要ないわ。アーロンだってそう思うでしょう?」
「そうですね。リアーヌ様には釣り合わない男だったんです。ジルベールのせいでリアーヌ様はこんなに悲しい目に遭っている。それに彼のせいで私も無理やりリアーヌ様と引き離されることになったんですね」
「そうね……。ジルベールなんて嫌いよ。《《もう要らないわ》》。アーロン、今まで私に尽くしてくれてありがとう。私から離れても、私のことを思い出してね」
「リアーヌ様……」
従者は私の言葉を終わるのを待っていたように衛兵を連れて部屋に入ってきた。
アーロンはそのまま連れていかれたわ。彼はこのまま王都で牢屋に入ることになるらしい。
まあ、それは仕方がないわよね。
そこから私はまた退屈な日々が始まったの。
邸に出入りしている男たちは年寄りばかりでつまらないし、退屈だわ。
……どうしてこうなってしまったの?
私はいつものように自室でのんびりとお茶をしていると、外が騒がしくなった。
何かあったのかと思っているうちに足音は私の部屋の前までやってきて、ガチャリと扉が開かれた。
「!!? 貴方達は誰?」
「リアーヌ嬢、殺人未遂教唆の疑いのため、捕縛する」
「えっ? 何? どういうこと?」
私は訳も分からないまま、捕らえられ、馬車に乗せられた。
なんでこうなったの?
手錠を嵌められて私はどこへ連れていかれるの……?
私は震えて涙が止まらない。
私が連れてこられたのは久しぶりに訪れた場所だった。
そう、王宮。
一体私はなぜここに連れてこられたのか。
「おい、歩け」
せかされるように手錠に繋がっている縄が引かれ、仕方なく歩いていく。
そうして連れてこられたのは貴族牢だった。
なんで?
私は悪いことなんて何もしていないのに……。
「大人しくしていろ」
鉄格子の扉は開かれ、手錠を外されるとすぐに私は中へと押し込まれた。
悲しくなってベッドで泣いていると、鉄格子の扉の先からコツコツと足音が近づいてくる。誰かが扉の前で立ち止まった。
「リアーヌ、久しぶりだな」
扉越しに聞こえてきた声で私はぱっとベッドから飛び起きた。
「シャル兄様!! ここから出して。私は何にも悪いことなんてしてないわっ! ずっと邸にいたでしょう?」
「ああ、そうだな。リアーヌは邸から出ていない。だが、アーロンは違うだろう?」
「えっ? アーロン? 彼が何かしたの?」
私は一瞬何のことか分からずに兄に聞き返した。
「ああ、彼は王宮入口に着いた時、騎士の不意を突いて逃げ出し、ジルベールに大怪我を負わせ捕まったよ。彼はリアーヌ様のためにといっていたがな」
「アーロンがジルベールに怪我を負わせたの……? ねえ! シャル兄様ったら! アーロンのことはどうでもいいの! 私をここから早く出してっ」
「お前という奴は、全く救えないな。お前がそんなやつだから俺は心置きなく鬼になれる。最後に会って決心もついた。さようなら、美しい妹だったもの」
兄は侮蔑した様子で私を突き放すように言葉を捨ててまたコツコツと牢屋を去って行ってしまった。
……一体、私はどうなってしまうの?
誰か、助けて。
助けてよっ。




