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助けて下さいっ!王女様が私の旦那様を狙ってくるんですっ!  作者: まるねこ


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35番外編リアーヌ

「お父様っ!」

「リアーヌ、よく無事に戻ってきた」


 父は王宮の入り口で待ってくれていたようで、笑顔で私を出迎えてくれたの。


「聞いてっ。マードル国の国王ったらとっても酷いのっ」

「話を聞くからまず、部屋に入ろうか」


 父は少し困った表情で話をしながら王宮の客室へと入る。


 あれ?

 客室なの?


 私は疑問に思ったけれど、父に付いて入室する。


 後ろにいた騎士たちも私たちを見張るように一緒に入ってきた。


 客室って相変わらず狭い部屋ね。

 それなのに騎士は気にせず、一緒に入ってくるから嫌になってしまうわ。


「お父様、ここは客室でしょう?」


 客室に入ると、質素な旅装をしている母がいた。母は私の姿を見ると、ため息を吐いた。


「お母様も。こんな狭い客室にどうしているの?」

「リアーヌ、お前のせいよ!!」

「フルーリア、まあ、そう言うな」

「アディラード! 貴方も貴方よ! 貴方がリアーヌを甘やかしてきたからこうなったのよ!」

「だが、そうは言ってももう遅いだろう」


 父と母は今にも怒鳴り合いになりそうよね。


「お父様もお母様もそんなに怒らないでっ」

「そ、そうだな……」


 父は私の声でハッとしたのかその場で言い合うのを止めて私に優しく微笑んだ。


「リアーヌ、よく聞くんだ。私たちは今からカルシュットの地へ向かう」

「えっ、どうして?」

「私は国王の座を降り、リンディ公爵となった。お前は王族籍を抜かれ平民となっている」


「なぜっ? カイル兄様は……? そういえばシャル兄様が国王になったと聞きました」

「ああ、カイルも王族籍を抜け、リンディ公爵子息となり、今は文官の一人として王宮で働いている。詳しい話は馬車に乗ってから話そう」

「……わかったわ」


「では、アディラード。私はこれで。もう、会うこともないでしょう」

「えっ、お母様は一緒にいかないのですか?」


 私が母に聞くと、母は眉間に皺を寄せ、醜い顔で私を睨みつけた。


「何を言っているのかしら。私はアディラードと離縁し、公爵家に戻ります。いいですか、リアーヌ。私から最後の忠告よ。お前は平民なの。生涯誰とも接触せず、慎ましやかに暮らしなさい。それが貴方の唯一生き残る道よ」

「どういうことですか!?」


 私は聞き返そうとしたけれど、母はそれ以上口にすることなく、父をひと睨みして部屋を出て行ってしまった。


 母はどうして父と一緒に行かないのかしら。


「さあ、リアーヌ。わしらもそろそろ行こうか。馬車を待たせている」

「えっ。だって、私は今ここに戻ってきたばかりだわ。疲れているし、部屋に戻って休みたい」

「わしらはもう王族ではない。シャル国王の好意でこの部屋を貸してもらっているだけだ」

「……」


「アディラード様、馬車の準備はできております」

 一人の従者がそう言うと、父は頷いて立ち上がる。

「リアーヌ、ではいくぞ」


 私は文句を言いながら父について行くしかできなかった。




 馬車は私たちを乗せるとすぐに出発し、王宮を出ていく。


 またしばらくしたらシャル兄様が私を呼び戻してくれるわよね。そう思い、窓からの景色を楽しんでいる。


「リアーヌ、疲れただろうが、よく聞くんだ」


 そう言って父は車内で私が出国した後の話を始めた。


 ベルロア伯爵が発起人となり、貴族院大会議が開かれ、父は公爵になったの。


 そして私は平民となり、当初は修道院に入れられる予定だったみたい。

 だけど、父のこれまでの功績を鑑み、父の嘆願を受け入れられたの。


 そうして公爵家から一歩もでないという条件で私は修道院行きを免れた。


 父は一代限りの公爵になった。


 これから私たちは王領のカルシュットという街にある保養地として使っていた邸に住むことになるようだ。


 カイルお兄様はリンディ公爵子息になってはいるけれど、父が亡くなれば兄は爵位を失う。

 平民として暮らすことができないと考えた兄は、爵位がある間に王宮の文官となってこの地に残ることを選んだ。


 母はというと、父と離縁し、公爵家に戻ると言っていた。でも父の顔色は優れない。


 父は離縁することを望んでいなかったのかしら。


「お父様、私の恋人たちが隣国で解放されてしまったの」

「それは、仕方がない。リアーヌの美しさなら恋人などすぐにできる」

「そうよね。でも、どうして私はお父様の子供なのに公爵令嬢ではなく、平民なの?」


「よくお聞き、リアーヌ。お前はその美しさで他の貴族をたくさん傷つけてきた。その罰だ」

「そんなのおかしいわ! 私が綺麗なのは当たり前だし、みんなは私を好いていて当然よ。恋人の邪魔をする人たちの方がおかしいわ」


 父は私に諭すように優しく話をする。


 でも、納得できないわ。

 だって、私は国一番の美女だもの。

 周りがおかしい。納得がいかないわ。


 私が憤慨しているけれど、父は「こればかりは貴族院が決めたことだからしかたがない」と話をするばかりだった。




 そうして一週間ほど馬車は街道を進み、ようやくカルシュットの地へとやってきた。


 新しい邸は王宮とは違い、街の外れにあり、森に囲まれた場所に建っている。静かといえば聞こえはいいけれど、何もないのよね。退屈になるわ。


 日当たりの良い部屋が用意されていて、私は毎日この部屋で過ごすことになった。


 部屋は広いし、侍女も付いているし、今までとそう代り映えはないかしら。


 ただ、恋人たちのいない生活はとても寂しいものね。当初は部屋から一歩も出る事を許されなかったけれど、大人しく過ごしているうちに父から邸内なら出歩いてもいいと許可が出たわ。


 父はというと、この邸に来てどっと老けたようね。

 窓の外をじっと眺めている時間が長くなっている。




 ある日、父のもとに一通の手紙が届いた。


 父はその手紙を読み、「そうか」とだけ呟いていたの。父に聞こうにもまた窓の外を見つめるばかりで話せる雰囲気ではない。


 後から従者に聞いたら、母は自ら修道院へ入ったみたい。


 自ら進んで修道院に入るなんて頭がおかしいわ。馬鹿よね。私は死んでも修道院なんて退屈なところに入りたくないわ。


 私が邸内を歩き回れるようになってから少しずつ、邸で働く従者と話をするようになった。


 彼らはたまに私の部屋にきて話し相手になってくれているの。以前のような恋人とは違い、あんまり格好良くはないけれど、こればかりは仕方がないわよね。我慢するわ。


 でも、やっぱり退屈で、退屈で、仕方がない。


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― 新着の感想 ―
功績を鑑み… 化物を作り、庇い、貴族に圧政を押し付けた暴君の 功績… よく許されたなぁ… 化物共々幽閉でも良さそうなのに…と思いました。
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