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乳母の到着後、授乳の時間を空けることができて十分に休むことができた。産後の体調も思ったほど悪くならず、過ごせている。
「シシュカ、もう少し子爵家でゆっくりしていてほしいんだけどいいかな?」
「ジル、どうしたの?」
「えっとね、どうも王宮の仕事がちょっと残っているみたいなんだ。ほらっ、怪我しちゃって全部忘れてたから仕事が完了できていなかったんだ。ちょっと行ってすぐに戻ってくるからそれまでミラと一緒に待っていてくれる?」
「王宮の仕事なら仕方ないわよ。でも無理はしないでね?」
「うん。もちろんだよ。もうシシュカを不安にさせたりしないから大丈夫」
「わかったわ。そういえばジル」
「シシュカ、どうしたの?」
「最近言葉がもとに戻っているのに気づいたんだけど、記憶が戻ったの?」
「少しだけ、ね? シシュカのことだけ思い出した」
「そっか。お義父様やお義母様のことも徐々に思い出せるといいわね」
「うん、そうだね。でも思い出さなくってもいいよ。僕にはシシュカとミラがいるからね」
「もうっ、ジルったら。お義父様たちが悲しんじゃうわ。で、いつから王都に向かうの?」
「明日、ここを発とうと思ってる。来週には王都に着く予定だよ。仕事を終えたら君を迎えにくるよ。そこからは伯爵領で静かに過ごそう」
「そうね。王都からは遠いけれど、伯爵領ならお隣だし、お義母様もいらっしゃるから安心よね」
「うん。僕が居ない隙に攫われたりしないでね」
「もちろんよ。伯爵領からの警備の騎士達がこれだけいるんですもの。攫われることなんてないわ」
「僕はそれでも心配だよ」
「大丈夫よ。ジルこそ素敵な令嬢によそ見をしちゃだめよ?」
「するわけがないよ。今も、昔も僕にはシシュカしかいないから」
「そうね」
翌日、ジルは名残惜しそうに私に抱き着いていると、従者がジルを馬車に押し込み、「では、シシュカ様、行ってまいります」と挨拶して馬車は出発した。
久々にジルのいない生活。
少し寂しかったけれど、そうもいっていられないの。ミラが忙しく私を呼んでいるからね。
家族に見守られ、私はジルの帰りを待った。
もう、そこには不安はないわ。
ジルは王都に着いてすぐに手紙をだしてくれたの。無事に着いてよかった。そこから数日おきに手紙が送られてきた。
王宮で仕事を終えた後、義父と一緒に領地に戻ってくるみたい。
私が牢屋に送られてからも義父はずっとタウンハウスに残り、貴族院に訴えて動いてくれていた。義父には感謝しかない。
「ミラ、今日は何をして遊びましょうか」
「アー、アー」
「シシュカーーー! ミラーー!」
私がおもちゃを持ちながらミラと話をしていると、遠くから声が聞こえてきた。
「ジル、お帰りなさい」
「僕のシシュカっ! ただいま。ミラ、元気だったかい?」
ミラは突然の声に驚いて泣き始めた。
「ごめん、ごめん。パパが悪かった」
泣き止まないミラを乳母があやしはじめた。私はその様子を横目に、ジルに話しかける。
「ジル、もう仕事は終わったの?」
「ああ、もう終わった。もう、何も心配はいらないよ。一緒に伯爵家に戻ろう。みんな待っている」
ジルは笑顔で両手を広げ、私を優しく包む。
「よかった。ジル、おかえりなさい」
「シシュカ、ただいま」
色々あったけれど、彼を信じて待っていて本当によかった。
【本編完】
本編を最後までお読みいただきありがとうございました!
引き続き番外編も宜しくお願い致します\(^o^)/




