28リアーヌ視点2
「……醜悪ね」
私とジルベールとの会話を聞いた王妃はそう呟いた。
醜悪って酷いわ。
私のどこが醜悪なのよ!
怒って反論しようとした時、国王が話しかけてきた。
「さて、君たちの内輪揉めは我々には関係のない話だ。リアーヌ、君が我が国へ来てからオルターナ国の話は聞いていないだろう?」
「はい。私はずっと客室におりましたから」
「先ほど、オルターナ国のシャル国王からの使者が来た。リアーヌ、君のことをこちらで如何様にもしていいと承諾も得ている。」
「どういうことですか? シャル国王って? お父様はどうなったというの?」
「はあ、全く……。それでも君は王女だったのか?」
国王が嘆かわしいと言いながら説明を始めた。
「リアーヌは好き勝手し過ぎたのだ。後ろの男たちはどこで手に入れた?」
「商会が私に『好みの男を選んで下さい』って言われたから選んだだけです。ジルベールは王宮の文官だったのを私が引き抜いただけです」
「リアーヌ、それは人身売買というのだ。知らなかったのか? お前は王女という身でありながら奴隷を買い付けた。オルターナは奴隷の売買を禁止している。我が国も、だ。つまりお前は罪人だ」
「えっ。私が、罪人……?」
「普通なら死罪だ。お前はオルターナ国では王女という身分でこちらに来た。こちらで処理しても騒ぐ者がでてくるだろう。お前はオルターナ国に強制送還することにした。お前のことはシャル国王がどうにかするだろう」
シャル兄様なら私に苦言を呈してもすぐに解放してくれるわ。
今までのようにまた王女としてのんびり過ごせばいいわね。
「……わかりました。彼らはどうするんですか」
「後ろの奴隷たちはこちらで解放するから心配しなくていい」
「えっ」
なんで?
私のものなのに。
一緒に連れて帰れると思ったのに。
「どうした? 何か問題問題でも?」
「彼らはオルターナ国で紹介されたんで一緒に連れて帰ります」
「罪人に決定権はない。お前はこの国で奴隷を持ち込んだ犯罪者だということを忘れてはならん」
「……承知いたしました」
「陛下! 私はっ、リアーヌ様と共にいます! 生涯リアーヌ様を支えると、誓ったのです!」
「……アーロン」
「リアーヌ様!!」
「ならん。奴隷たちを連れていけ」
「リアーヌ王女、このまま我が国から立ち去ってもらおう」
「わかりました」
こうして私はまたオルターナ国へ戻ることになった。
それにしても私が奴隷を買ったことになっていたなんて。
あの従者、覚えていなさい!
「ベルロア伯爵子息、君のおかげで我が国は非難を受けずに済んだ。感謝する」
「いえ、こちらの方こそぎりぎりになってしまい、申し訳ありませんでした。今後の我が国の対応としましては――」
「――だ。ふむ、では――」
私は一人怒っている間にも、ジルベールは国王と何か難しいことをしゃべっている。
そういえばジルベールはオルターナでもずっとマードル国の外交官と打ち合わせをしていたっけ。
きっと私が婚約破棄されたことでこの国から受ける私への非難をどうにか庇おうとしてくれているのね。
「リアーヌは先に戻りなさい。ベルロア伯爵子息、この後少しいいだろうか」
「畏まりました」
「わかりました」
私は彼を置いて一足先に客室に戻ると、既に荷物は撤去されていた。
「……本当にオルターナに戻るのね」
何のためにここに来たのかしら。
国に戻ったらまた彼らに癒してもらえばいいわ。
ここは私に不親切な国だったわ。
こんなにも美しい私を犯罪者扱いするなんて失礼すぎる。
私は馬車に乗り込むと、ジルベールは国王と話を終えたのか、オルターナ国の馬車に指示を出しているのが車内から見えた。
「ジルベール! 貴方は一緒に戻ってくれるのねっ!」
「そっちの荷物は幌馬車に入れろ。こっちの装飾品はここだ」
「ジルベール!ジルベールったら! 聞こえているんでしょう?」
「……うるさい女だな。静かにしろ」
「えっ」
ジルベールがそんな言葉を……?
私は予想外のことで目を丸くした。
「ジルベールは私と一緒にこの馬車で国に戻ってくれるんでしょう?」
彼は盛大に溜息を付いている。
「お前は一人、この馬車で帰るんだ。馬鹿女」
「馬鹿女!?」
「いいか? 俺は伯爵子息だ。次期伯爵。お前はただの平民だ。そんなことも理解できていないのか。この馬車を使わせてもらえるのもシャル国王の温情だ。理解したなら言葉を慎め! これ以上喋れば俺はお前を殺しかねない」
「……」
ジルベールは厳しい口調で私にそう言い、またすぐに別の騎士たちに指示を飛ばし始めた。
しばらくすると、帰国の準備が終わったようで「出立!」という掛け声が聞こえ、馬車が動き始めた。
国に帰ったらお父様にちゃんとジルベールのことを言わないとだめね。




