27リアーヌ視点
「リアーヌ様、ヴァルト様がお呼びです」
「分かったわ」
はあ、面倒だわ。
マードル国へ来て歓迎されると思っていたのに。
ずっと王宮の一室で待機させられているままなのよね。
やることもない。それは別にいいんだけれど、私が連れてきた男たちはみんな取り上げられてしまったの。
おしゃべりもできないし、私に新しく付けられた侍女はずっとだんまりでつまらないのよね。
私は従者の後に続いて歩いていく。
通路を歩いていると、両側に騎士達が一定間隔で立っている。
あの騎士、かっこいいわね。
あとで私の部屋に来るように言おうかしら。
「私はどこへ向かっているのかしら?」
「……」
私を呼びに来た従者は一言もしゃべるつもりはないみたい。
なんだか感じが悪い。
あとでお父様に言いつければいいわよね。
到着したのは少し広い会議室のような部屋だった。
部屋にはマードル国の国王、王妃、王太子、私の夫になるヴァルト第二王子が席に着いていた。美しい私を前にしてもみんな笑顔一つ見せない。
おかしいわ。何か仕組まれているのかしら。
「リアーヌ、席に着いてくれ」
「アヴェランド国王陛下、並びにユリナ王妃陛下にお会いできたことを嬉しく思います。ヴァルト様を支えるべく、オルターナ国から来ました。王家の一員としてお迎えいただき、心より感謝いたします」
私は挨拶をしてから向かいの席に座った。私の後ろには騎士が立っている。
どういうことかしら。
挨拶をしたのにも拘わらず、国王たちからの言葉は返ってこない。
しばらくの間、沈黙が続き、私はなんだか気まずい思いをしていると、ようやく国王が口を開いた。
「リアーヌ、我が国に来て二週間が経った。ここの暮らしはどうだったか?」
「えっと、供の者たちがおらず、客室に留め置かれ、不便ではあります。私はいつ頃王子宮に入るのでしょうか?」
私が当たり前のように質問をすると、なぜか王妃は扇子で口元を隠し、眉間に皺を寄せている。
「そのことなのだが、リアーヌ王女。ヴァルトとの結婚は破談になった」
「えっ? なぜですか? こんなに美しい私を妻に迎えないなんておかしいです」
「君がオルターナ国で騒ぎを起こしたからだよ」
「私は何も騒ぎなど起こしていません」
「ではこの証拠を見てもそう言えるのかい?」
ヴァルト様が立ち上がり、私に書類を渡してきた。
分厚い書類。一つ一つ目を通すだけでも大変だわ。
書かれている内容は、私を馬鹿にするものばかりだった。
「なに、これ。こんなこと……。私は知りません」
「おかしいな。この報告書は一人が書いたものではないし、王宮書記官や、私設書記官などの第三者からの押印もあるんだが?」
「知りません。私は何も、知らないのです。信じて下さい」
「貴女はそう言っていても、連れてきた彼らはなんて言っているのかしらね?」
王妃が冷たい視線を向けながら話す。
嘘よ。
全くのでっちあげに決まっているわ。
私は知らないと言い張っていると、部屋の扉が開かれ、私が選別し、オルターナ国から連れてきた男たちが一人を除き、手を繋がれた状態でみんな部屋へと入ってきた。
「えっ。何? どうして彼らは手錠をしているのでしょうか?」
「彼らは君が連れてきた奴隷なんだろう?」
「奴隷? 違います。私の世話係に任命された者たちです。それにジルベールは私の恋人だし」
「……恋人? 彼には妻がいただろう?」
「彼をここへ連れてくるために要らない物は処分させたんです」
「処分か。酷いものだな」
王太子が私に嫌悪感を滲ませながら話をしている。
「後ろにいる者たちは君のことを好きだとは思っていないようだぞ? 一人を除いて」
「彼らは私のことが好きなはずです。自ら志願して付いてきてくれたのです」
私はそう言いながら彼らに視線を向けるけれど、アーロン以外、みんな無表情で私を見ている。
ジルベールなんて私を軽蔑しているような態度を取っていた。
「ジルベール! 何とか言って欲しいわ。彼らは奴隷ではないと言って。みんな私を愛していると。彼らに教えてあげて」
「……何を仰っておられるのやら。私は貴女と会話もしたくないし、視界にだっていれたくないというのに」
「そんなっ。私はジルベールをこんなにも愛しているわ。あんな醜い女よりも美しい私が恋人でいる方が貴方にとって幸せでしょう?」
「それ以上、私の妻を侮辱するな」
「それにあの醜い女は既に処分済みだわ。貴方が何を言おうともう遅いわ」
「……醜悪ね」
私とジルベールとの会話を聞いた王妃はそう呟いた。




