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助けて下さいっ!王女様が私の旦那様を狙ってくるんですっ!  作者: まるねこ


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 領地へ向かうこと四日。


 ようやく私は長旅から解放された。


 懐かしい私の家。


 私がここを出てから何も変わっていないわ。嬉しく思うと同時に牢屋での苦しい生活を思い出して胸がキリキリと痛む。


「よく戻ってきてくれた」

「シシュカ、無事に戻ってこられてよかったわ。こんなに痩せてしまって。それにこの髪……。辛かったでしょう」

「お父様、お母様。心配をかけてごめんなさい」


 私は両親の顔を見て今まで抑えていた感情が吹きだし、涙が止まらなかった。


 嗚咽を上げて泣く私に両親はただただ抱きしめてくれた。


「シシュカ、落ち着いたかしら。客室に医者を待機させているわ。すぐに医者に診てもらいましょう」

「……はい」


 私はそのまま両親と兄とともに客室へと向かった。


「シシュカ様、お久しぶりです」

「先生! お久しぶりです」

「大怪我を負ったと聞いて急いでやってきました。早速ですが、まず背中から診ましょうか」


「シシュカ、何かあったらすぐに俺たちを呼ぶんだぞ?先生、シシュカのことをしっかり診てやってくれ」

「お兄様、大丈夫よ」


 先生も兄の言葉に軽く頷いている。


 兄はそう言って部屋には母と侍女を残し、父と共に執務室に向かった。


「包帯を取りますね」


 私は先生に斬られた背中を見せた。


 日にちも経っているため、傷口はちゃんと塞がっているみたい。


 ヘレナさんが私を見つけ、すぐに手当てをしてくれたおかげで化膿はしていなかった。


 ただ、傷跡は残るし、ひきつれを起こして上手く歩けないかもしれないみたい。


 先生の言葉を聞いて苦しくなった。


 ずっと寝ながら移動していたから気づいていなかったけれど、上手く歩けないと思うと、どうしていいか分からない。


 これからずっと杖を使った生活になるかもしれない。


 でも悪いことばかりではなかったの。


 お腹の子は無事に育っているみたい。


 過酷な環境に晒され、あれだけの大怪我をして、さらに馬車で長距離を移動してきたのに……本当に奇跡だと先生も言っていたわ。


 とにかく今は安静が必要と言われたの。母は先生の言葉に涙を流しながら聞いていたわ。




 私は子爵家に戻ってからは今までにないほどゆっくりとした時間が流れていった。


 家族には伯爵家で捕縛されてから平民が入る牢屋で過ごしていたこと、数日毎にリアーヌ王女に呼び出され、暴力を受けていたことを家族に話をした。


 当然みんな怒り心頭で王家に殴り込んでいきそうだったのをなんとか押しとどめた。


 私の体調を鑑みて詳しくは教えてもらえなかったけれど、私が捕まってから伯爵家も大変だったみたい。


 義父はすぐに陛下へ直談判し、私を返すように迫ったけれど、貴族牢に私はいなくて、それ以上は知らぬ存ぜぬを通し、私の行方が全く分からなくなったと聞いたらしい。


 もちろんそんな言葉を信用するわけもなく、義父と今まで持っていた証拠を全て貴族院に提出した。


 貴族院もリアーヌ王女が気に入らない従者たちを次々と牢屋に入れていることを知り、水面下では色々と調査を行っていたのだとか。


 義父はリアーヌ王女が隣国へ向かうまでの間に書類を全て揃え、貴族たちを呼び出そうと奔走している状況らしい。


 私が斬られたあの日から既に一週間以上経っている。


 ここから領地までかなり距離があり、現在の状況はどうなっているのかは分からない。


 兄の話ではジルはずっと私の居場所を探し、各方面に協力を取り付けるために動き、隣国の外交官とも話し合いをしていたという。


 ジル……。

 私はここに居るわ。

 早く、貴方に会いたい。


 私はそっとお腹を撫でながら彼を待った。




「シシュカ、体調はどうだ?」

「お兄様。おかげさまで大分楽になってきました」

「そうか、よかった。シシュカが生きていたことが本当によかった」


 兄はそう言って私の頭を撫でてくる。いつまでも子供じゃないのに。


「お兄様、いつまでも子供扱いして。もうすぐ私は母になるんだからね」

「ははっ、そうだな」


 兄は笑顔でそう言った後、すぐに真剣な表情になった。


「お兄様、どうしたの?」

「ああ、実は悪い話なんだが……」


 兄は姿勢を正し、息を吐いた後、それを言葉にした。


「実は、ジルベールのことなんだが」

「はい」

「リアーヌ王女がわがままを言って彼を無理やり隣国へ連れて行ってしまった」

「えっ……。でも彼は次期伯爵で、愛人にはなれなくって……」


「ああ、そうだ。隣国へ向かう直前にリアーヌ王女がまた我儘を言って陛下がそれを許可したんだ」

「……なんてこと。そんな自分勝手なことがまかり通るの?」

「話はそれだけじゃない」


 そう言って兄が私の目の前にそっと差し出した一通の封筒。王宮の印が押されている。


 私は震える手でゆっくりと紐を解き、中の書類を取り出して確認する。


「お兄様、こんなことって……」


 私はその書類を見て手が震えた。


 だって、そこに書かれていたのは私の死亡と離縁が決定したという通知書類だったもの。


「シシュカ、シシュカは今、死んだことになっている。髪を切られただろう?あれで死亡したと報告されたんじゃないか」

「……そんな。でも、そうなれば私はどうなるの?それにお腹の子供も。ジルは大丈夫なの?」


「ジルベールのことは分からない。だが、王女が出国した今、ようやく貴族院も王家を追求する準備が整った。お前が前に出てリアーヌ王女のしでかしたことを公表すれば、シシュカの死亡届や離婚決定は取り消されることになるだろう」


「本当? でもリアーヌ王女は隣国へ出国してしまったんでしょう?」

「王女のことは隣国の王に任されるはずだが、こちらで犯罪者となれば相手も王子との結婚はなくなるだろうな」


「ジル……」


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王国が無くなりそうだな
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