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「旦那様っ!」
「エド、どうしたんだ。外が騒がしいみたいだが」
「それが。王宮騎士が邸の周りを取り囲み、シシュカ様を出せと……」
「なにっ? どういうことだ」
「すまない、ベルロア伯爵。突然押し入って悪いが、シシュカ夫人を連れていくことになった」
「どういうことだ? 私は何も聞いていないぞ!」
「先ほど陛下から命令が下った」
押し入ってきた騎士がそう言って命令書を広げて見せた。
『シシュカ・ベルロア次期伯爵夫人は第三王女の再三の出頭要請に対し、無視をしたため、捕縛命令を下す。』そう紙に書かれていた。
「再三の出頭要請……? 先日、突然呼ばれたけれど、体調不良でお義父様が代わりに事情を聞きに行っただけよ。それ以降は何も来ていないわ!」
私の言葉など知らないとばかりに騎士は私に近づいてきた。
「国王陛下の命令だ。すぐにシシュカ夫人を捕えよ。抵抗すれば斬る」
「キャッ」
騎士がそう言うと、何人もの騎士が執務室になだれ込み、私を後ろ手に縛って執務室から引っ張り出される。
「シシュカ!」
「ジル、来ちゃだめよ。ジル、私はどうなってもいいの。ジル、私を捨ててちょうだい」
「嫌だ! シシュカ! シシュカ!!!」
ジルが追いかけてこようとするけれど、それを騎士が止めに入った。
「シシュカーーーー!!」
ジルの叫ぶ声だけが聞こえてくる。
まさか陛下がここまでするとは思わなかった。
なぜ陛下はこんな横暴なことをするの。
再三の要請といっても私には何のことだかさっぱり分からない。
ジルも私も二人で仲良く暮らしたいだけなのに。
私はゆっくり騎士に引かれ、馬車まで歩いていく。騎士は私を無理やり歩かせるようなことはないみたい。
いつから王家はこんなにも横暴になったの? もっと理性的だと思っていたのに。でも、リアーヌ王女を溺愛する陛下ならやりかねない。
愚鈍な私だってこの先がどうなるかは分かる。
きっと私を罪人に仕立て上げてジルと別れさせ、リアーヌ王女とジルを結婚させてずっと陛下は彼女を手元に置いておこうとする。
私はこれから拷問され、殺されてしまう可能性だってある。
王家にとって私は邪魔者。
私は怖くなりカタカタと震えた。
「馬車に乗れ」
騎士の命令を聞こうとするけれど、足が震えて上手く歩けない。
涙が止めどなく溢れてくる。私は何もしていないのに、なんでこんなことになってしまったの。
「……」
歩けない私を騎士は無言で抱え上げ、馬車に乗せた。
私は腕を縛られたまま、馬車は王宮へと出発した。




