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反撃開始である。


「そんな!では、あの噂は本当だったのですか!?」


「あの噂?」


ドルシェとパルシアは揃って首を傾げる。

か弱く見えるようにと扇で覆った口元で、私は笑みを浮かべた。


「はい。──ドルシェ様とパルシアが共謀してタイリス殿下の暗殺を目論んでいる、という噂です」


「はぁ!?」


ざわっ、と会場全体の空気が揺れた。


「ドルシェ様がタイリス殿下を?」「まさか皇太子の座を狙っておられるのか!?」「あの方はエスティアナのご令嬢よね?なんて恐ろしい…」と様々な憶測が飛び交う。


「な、なんて不敬なことを! そんな噂ごときに惑わされるなど、お前は“能無し”にも程がある!」


「そうよ! 私とドルシェ様がそんな恐ろしいことを考えるわけないじゃない!」


バッ!と集まった人々の視線の中心で、ドルシェとパルシアは真っ赤になって反論した。

それに私は扇を閉じて「まぁ!」とわざとらしく驚く。


「わたくしがなんの根拠もなく皇太子殿下暗殺だなんて大それた事を口にしたとお思いですか?」


言うが早いか、私は懐からある物を取り出し、人々の視線に晒した。

それを見た瞬間、ドルシェとパルシアの顔色がさっと悪くなる。


いつのまにか騒ぎは会場全体を巻き込むほどになっていた。

人だかりの中には名のある公爵や、殿下──タイリス皇太子の姿も見える。

もう、引き返すことはできなかった。


「そ、それは!」


「ドルシェ様の部屋にあった二つの小瓶のうちの一つですわ」


紫色の小さなポーションガラス。

高く掲げると中で黄緑色の液体がたぷんと揺れた。


「これ、なんだろうなーと思って中身を調べさせていただきましたの」


「なッ……!」


「そしたらびっくり!なんとこれ、毒じゃないですか!……それも即死性の」


「……ッッ!!」


「ねぇドルシェ様? この毒、一体なんのためにお持ちだったんですか? 護身用? それなら普通はナイフとかですよね?……あ!まさか!」


沈黙。


「皇太子殿下を暗殺するため……だったりして」


痛いほどの静寂がその場を支配した。

誰かの息を呑む音、衣擦れの音がやけに大きく聞こえる。


その静寂を最初に破ったのはドルシェだった。


「で、でたらめだ!僕はそんなもの知らない!!すべてこの女が仕組んだ罠だ!!」


ドルシェは裏返った声で捲し立てる。

目は左右に泳いでいて、明らかに平静を失った人間のそれだった。


「まぁ嫌ですわ、ドルシェ様ったら。これを見つけたのはわたくしではなくってよ」


「なんだと……!?」


「随分と優秀な侍女をお持ちのようで。羨ましい限りですわ」


言って、私はすっと横にずれた。

私の後ろから一人の女が現れる。


「お前は……!」



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