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「ミレイユ・エスティアナッ!!お前にはもうほとほと愛想が尽きた!!よってお前とはこの場をもって婚約を破棄させてもらうッ!!」


天井は、見上げるほどに高かった。


煌々と降り注ぐシャンデリアの光を浴びて、ドルシェ・サーペンシャルとパルシア・エスティアナはそこに立っていた。


彼らは身を寄せ合い、侮辱と軽蔑の混じった眼差しを向けてくる。

私はそれを真っ向から受け止め、毅然とした態度で二人を睨み返した。


ついに、この日がやって来てしまった。


パーティ当日。

準備は万全。しかし思い通りにいかないのが事件と人生である。


パルシアとドルシェの浮気現場エンカウントを避けた皺寄せが“婚約破棄イベント”という形で現れてしまったのだ。

しかしまぁ、この程度なら想定の範囲内である。

鼻息荒く私を罵るドルシェと彼に枝垂れかかるパルシアへ向き直り、私はすっと息を吸い込んだ。


「婚約破棄、でございますか。それは理由をお伺いしてもよろしくて?」


「り、理由だと? そんなものお前が僕の婚約者に相応しくないからに決まっているだろう!」


「なるほど。“相応しくない”と。では具体的にわたくしのどのような点がドルシェ様の婚約者たるに相応しくないのかお聞かせ願えますか」


「お前は頭の出来が悪いし、作法もなっていない! さっきもパーティの場だというのに兄上にぶつかっていたじゃないか! そんな女を連れているとなっては僕の威信にまで関わるだろう!」


ドルシェは私を責めるように指さして言った。

しかしその指先は微かに震えている。

いつもはドルシェの言葉に力なく頷き、黙って従うミレイユが反応を返したことに違和感を覚えているのだろう。


この騒ぎに周りの参加客たちもなんだなんだと集まり始めた。好都合だが、野次馬にはあまりいい思い出がない。

まぁパフォーマンスだから仕方がないか、と割り切って、私は彼らがさらに喜びそうなセリフを口にした。


「ドルシェ様、お言葉ですがその理論ですと伴侶の不出来を恥とするのではなく、受け入れ導くことこそが、あなた様の威信を真に示すのではございませんか」


「う、うるさい! 屁理屈を捏ねるな! とにかく僕はお前との婚約を破棄してパルシアと結婚するんだ! これは決定事項であり、覆ることはない!」


「パルシアとですか?」


「ごめんなさい、お姉様。でもお姉様には第二皇子であるドルシェ様の婚約者なんて、もともと力不足でしょう?」


そう言って微笑むパルシアは、勝ち誇ったような顔をしていた。

私と同じ紫の瞳を歪め、人を心底バカにした笑顔。

その顔を見て、私は覚悟が決まった。


私たちを取り囲むようにできた人だかりを見渡し、全員に見えるよう、私は大袈裟に傷ついた表情を作る。

反撃開始である。

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