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タイリス皇太子殿下の命令で兵に捕らえられ、連行される二人の背中を見つめる。

ちょうどその時、会場の扉が開いて「ミレイユッ!!」と私を怒鳴りつける声が聞こえた。


「あぁ!お父様!ちょうどいいところにお越しくださいましたわ!」


本当にベストタイミングだ。

きっと私が最後に用意した仕掛けが動いたのだろう。


どうせなら自分の娘が逆賊として捕えられる様も見てもらおうと向き直ったタイミングで、父は私の胸ぐらを掴み上げた。


「各貴族から次々と鉱石売買契約解消の申し出が届いている! 一体どういうことだ! 説明しろ!」


「嫌ですわお父様。その件ならすでに先日ご説明申し上げたではないですか。それを無視して、わたくしの忠告を聞き入れなかったのはお父様の方でしてよ」


父はそれどころではないらしい。

掴まれた首元が苦しくて、タイムタイム!の気持ちで腕を叩けば、父はようやく手を離してくれた。

それにケンケン咳をして、私は懐から最後の一枚を取り出す。


「それは……!」


「我が家の所有する採掘場から発せられている有害鉱素の数値を示したものです。わたくしはこれを王政からの“義務”として諸家の方々に周知したまでですわ」


「なッ、なんてことを……ッ!!」


市街調査に行った際、私は流行病に感染した人々のもとも訪ねていた。

風邪とは明らかに異なるその症状。さらに感染者のほとんどが鉱夫や採掘場の周りで暮らす人々だという点。

違和感を覚えた私は鉱山周辺の環境調査を依頼した。

その結果、人々を苦しめていたのは流行病などではなく、鉱物汚染による鉱山病であったことが判明したのである。


「そしてこれを領民が知ったら──」


「や、やめろ!そんなことをしたら我がエスティアナ家がどうなると思っている!!」


あまりに情けない父親の声に私は声を出して笑った。

「何がおかしい!」と怒鳴る父の振り上げた手が私に届く前に、側近の男が父に耳打ちする。


「なんだ、こんな時に!」


「そ、それが領民たちが屋敷の前に押し寄せているとの報告が!」


「な、なに!?」


「あら、思ったより早かったですわね」


私はすでに、この情報を記者に売っていた。そして特効薬を教えることと引き換えに、このタイミングで領民へ流すように伝えたのである。

結果、私の思惑通り領民たちは反乱を起こし、領主であるエスティアナ公爵家へ押し寄せたのであった。


「ミレイユ……ッ! お前はどこまで私をコケにすれば気が済むのだ!! ここまで育ててやったというのに、その恩を忘れたか!!!」


「恩? わたくしはあなたからそのようなものを受けたことは一度たりともございませんわ。怨みこそあれど、恩だなんて烏滸がましい。あなたこそ、今までわたくしに何をしたのかまさかお忘れではないですよね」


「なんて女だッ! もう良い、お前をエスティアナから勘当する!! どこぞで野垂れ死ぬがいい!!」


「あら、言われなくても出て行きますわ。それに野垂れ死ぬのはそちらではなくて? 民の反感を買い、収入源は絶たれ、実の娘は国逆として捕らえられた。エスティアナはもう終わりでしょうに」


パッと扇を広げ、父をなじるように眺める。

こうして見るとつくづく憐れな人だった。

少しでも思い通りにいかないとすぐに声を荒げ、手を上げ暴力で捩じ伏せようとする。

貴族の風上にも置けないような男。

父のような人間は、家と共に沈むのが相応しい。


「お父様。いいえ、エスティアナ公爵。最後にこれだけは申し上げておきますわ。──あなたたち家族の敗因はわたくしを馬鹿だと決めつけ愚弄したことです。パルシアと二人仲良くせいぜい地獄で後悔なさい」


私はそれだけ吐き捨てると、身を翻してさっさとその場を後にした。

後ろで私を口汚く罵る声が聞こえるが、すべて無視をする。もう父ではなくなったただの男の言葉に、微塵も興味はなかった。

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