孤立の魔族、連携の勇者
四天王三人が同時に動いた。ムラクが魔法陣を展開する。シュラは杖を地面に小突き、周りからアンデッドが湧く。ゼルガが地面を踏み砕いた。
「来るぞ!!」
俺が叫ぶ。
ゼルガが突っ込んでくる。一直線。圧倒的な質量。だがその前に――
シオンの盾が地面に叩きつけられる。
「ここは通しません!!」
ゼルガの大剣が振り下ろされる。衝撃が爆発する。シオンの体が数歩後ろへ滑る。
だが――止まる。
「マキア様!!」
「分かってる!!」
俺はゼルガの横へ踏み込む。だが。
「甘い」
背後から声。ムラクだった。黒い槍が首を目掛けて飛んでくる。その瞬間、風が走る。
ムラクの魔法が弾かれる。
「背中は任せなさい」
アネモネの風刃だった。ムラクが舌打ちする。
「魔法使いが厄介だな」
その間にもシュラがアンデッドを召喚している。
「《死霊招来》」
地面から無数の腕が伸びる。
「あいつらを足止めなさい」
だが。光が広がる。
「《聖域展開》!」
リナリアだった。アンデッドの腕が一瞬で崩れ落ちる。
シュラが目を細める。
「聖女……」
「相性が悪かったようだな」
リコリスが笑う。
影が伸びる。シュラの魔法陣が乱れる。
「今です!!」
シオンが叫ぶ。盾でゼルガを弾き上げる。巨体が浮く。
「いけ!!」
俺は踏み込む。剣を振るう。だがゼルガは空中で体勢を戻す。大剣を振るう。
刃がぶつかり、地面が割れる。力が重い。押し負ける。だが――
「一人じゃない!!」
横から影の槍が叩き込まれる。リコリスだった。 ゼルガの体勢が崩れる。さらに――
「《エアロ・バースト》!」
アネモネの風が爆発する。ゼルガが完全に浮いた。俺は笑う。
「悪いな」
剣を振り上げる。
「これがパーティ戦だ」
斬撃。ゼルガの鎧が砕ける。巨体が地面へ叩きつけられ、ゼルガが倒れる。
ムラクが苦笑いをする。
「うそぉ……」
シュラも頷く。
「個人戦なら絶対負けないのにぃ!!」
「連携の差が出ちゃったねぇ」
俺は剣を構える。
「今更気づいたのか?」
シオンが盾を構える。リコリスとアネモネが魔法を展開する。リナリアの光が強くなる。俺たちは並んだ。
ムラクがため息をつく。
「やっぱりさ、パーティって面倒だよね」
シュラが笑う。
「でも」
魔力が膨れ上がる。
「それでもこっちももう引けないんだ」
俺は剣を握る。
「なら連携の差ってやつを」
剣を構える。
「最後まで教えてやるよ」
次の瞬間、戦いが再び爆発した。
ムラクの姿が消えた。
「また来るぞ!」
俺が叫ぶ。その瞬間、背後に気配。だが――短剣が盾に弾かれた。
「もう見えてます」
シオンだった。
ムラクが驚いた顔をする。
「え、嘘!?これ初出しだよ!?」
シオンが静かに言う。
「同じ動きしかしない策士なんて警戒するに決まっているでしょう。何を隠してるかわからないので」
その瞬間。
「今よ」
アネモネの魔法陣が光る。風が爆ぜる。
「《エアロ・ランス》」
無数の風槍がムラクへ向けられる。ムラクが慌てて跳び退く。
「危なっ!?」
だが着地した瞬間――地面の影が伸びた。
リコリスだった。
「捕まえた」
影がムラクの足を縛る。
「うわっ」
動きが止まる。
「マキア様!!」
シオンが叫ぶ。
「任せろ!!」
俺は地面を蹴った。一瞬で距離を詰める。
ムラクが焦る。
「ちょ、ちょっとまっ――」
剣が振り下ろされる。
ムラクが吹き飛び、地面を転がる。
「ぐっ……」
立ち上がろうとした瞬間、光が落ちる。
「《聖槍》」
リナリアの魔法だった。
光の槍がムラクを貫いた。ムラクの体が崩れ落ちる。
「……まじかよ」
そのまま動かなくなった。シュラの顔から笑みが消える。
「二人……」
シュラの魔力が膨れ上がる。地面が震える。
「舐めないで」
杖を叩きつける。
地面が割れる。無数のアンデッドが這い出てくる。
「《死霊軍勢》」
数が違う。数十、いや百はいる。
「もう巻き込みを考える必要はないの!!」
アネモネが舌打ちする。
「多すぎ」
だがリナリアが前に出る。
「大丈夫」
両手を広げる。光が広がる。
「《聖域拡張》」
光が地面を染める。アンデッドが次々と崩れていく。シュラが歯を食いしばる。
「……聖女」
リコリスが笑う。
「終始相性が最悪だったな」
アネモネが魔法陣を重ねる。
「終わりにしましょう」
風が集まる。俺が剣を構える。
シオンが前に出る。
「道を作ります」
盾を構える。シュラが魔法を放つ。黒い槍。だが全部、盾が弾く。
シオンが叫ぶ。
「今です!!」
俺は走る。一直線。シュラが慌てて魔法陣を作る。だが遅い。影が腕を縛る。
リコリスだった。
「止まれ」
シュラの動きが止まる。その瞬間、風が吹き荒れる。
「《エアロ・バースト》!!」
アネモネの魔法。シュラの体が浮く。そして――光が収束する。
「マキア!」
リナリアが叫ぶ。
俺は剣を振り上げる。
「終わりだ!!」
シュラの体が地面に叩きつけられる。静寂が落ちた。動く者はいない。
シオンが盾を下ろす。
「……終わりましたね」
俺は息を吐いた。
アネモネが肩を回す。
「疲れた」
リコリスが笑う。
「あぁ、中々厄介だった」
リナリアが小さく呟く。
「でも」
城門を見る。
「ここからが本番」
全員が視線を向ける。黒い城門。ゆっくりと――門が開き始めた。中は暗い。城の内部はほとんど光が届かず、奥へ続く長い石の通路だけがぼんやりと見えていた。
俺は一歩踏み出す。瓦礫と血の匂いが残る城門前を越え、魔王城の中へ入る。




