55.side o
「・・・・・??お前・・・あなたは有名人だったのか・・・ですね??」
「え!?!?知らないっすか!?・・・え!ちょっとショックなんすけど。テレビとか見ないんすか!?!?」
「・・・・私が言うのもなんだけど、結構有名人なのよ?この人。」
数分前の悲壮な空気は何だったのか。
早くも兄妹は大人未満のロロ達と打ち解けたようだった。
皆元気だなあ・・・・
妹はどうやら初めてみる”猫”という存在に興味津々のようである。遠足にでも出かけるかのように先頭を行くロロとその腕に鎮座する三角耳のしっぽに視線が釘付けだ。今、もうすでに手はワキワキと撫でる準備を始めていることに本人は気が付いていないのだろう。
改めて高いビルの最上階を目指して歩く一同。
上がって下がってまた上がるのはもう高齢に差し掛かるおいちゃんにとっては結構厳しい道のりである。
それでも置いて行かれまいと足に鞭を撃ち、置いて行かれないよう、その若々しさを感じる足取りに食らいつく。
(ああは言ったけれんどもなあ・・・。)
おいちゃんは前を歩くロロの背中を見つめながら先ほどの出来事を思い出していた。
『・・・ぼくちんたちも連れて行くの・・・・??』
キュッと力の入った肩とは裏腹に、力の抜けた口元であったなあ。
ああ。先ほど感じた違和感はこれであったか。
まだ16にもならない少年。
聡い子であると出会ったころから感じてはいたが、今日改めて彼の聡さに背中に冷や汗を流した。
彼は危険であると。
(おらもいつまでもあの場所で商売はでぎねえがらなあ・・・・とととっ!)
疲労がたまっている足が段差に引っかかってしまった。
「わだだだ!!・・こっこけ!!こけ・・・!!こけ!!!」
またしても冷や汗とアドレナリンがドバっと湧き出す。
「「あ!!!」」
倒れると思った瞬間固く閉じた目を開く。
背中にはいくつもの人の手の感触と、顔を覗き込む少年少女たち。
「大丈夫かしら!?」
「足ひねってねーっすか!?」
「おいちゃん~!?!?」
「「!?!?!(あわあわ)」」
「・・・・・・・。」
『いつか嫌になるときが来るかもしれない。嫌、来るだろう。けど、それでも私は・・・・
背中に感じる小さな手。
あの時彼が救えなかったと嘆くあの手と、自分のしわくちゃな手がどれほどの価値をもっているのだろう。
きっと・・・きっと。
届かないこともあると知る自分は。彼のようになれるだろうか。
不思議で聡明で。
どこか現実離れをしているあの子に、どうか救われてくれと願う。
掃き溜めから湧いてでたような相貌をしていたあの子の顔が、年を重ねるごとに明るく、地に足のついた表情を浮かべるようになったあの子の顔が。
失った分。いや、それ以上の未来を。
他人に対してそう思えるようにしてくれたあの子を。
この年にして未来を語ることさなるとはなあ・・・・
「あんがとなあ。大丈夫だでなあ。」
見て見ぬふりをしていた自分に「今更」の呪いが手招きしていることは重々に承知していた。
今回は少し短めなので、次回は長めを目指して書きたいと思いました。




