53.忘れぬ冒険心
おいちゃんは下を向いたまま肩を震わせる。
耐えかねる空気に、周囲の人たちはそわそわしていた。
そんな中、まだ空気と呼ばれるものを読むのが苦手なみけはくりくりなお目目を輝かせて、どーしたの?とロロの足を叩いた。
「それにさあ~。普通は危険な場所にこんなかわいいぼくちんたちが行く!ってなったら止めるじゃんねえ~(*´ェ`*)??」
ジェリーは何のことだかさっぱりだったので、神妙な顔は保ったまま、頭を空っぽにした。
彼女は彼らがどういった経緯でここまで来たのか知らなかったからだ。
「・・・・いくら仲良しだからってさあ(´・ω・`)。おいちゃんの身分ってさあ。国家機密なんじゃないのお~???」
少しトーンを落としたロロの帽子は少し寂しそうな顔をしていた。
「・・・・ぼくちんたちに協力してくれたのはなんでなのかなあ~(тωт`)」
ロロはおいちゃんがその身分を明かしたときから違和感を感じていた。
おいそれと一般人に明かすものではないからだ。
羅劫を持つというだけでも、恨みの対象、妬み、強奪の対象になる。そのなかでも特殊な力を保有するとなったらもっと狙おうとする輩の母数は大きくなるだろう。
そのための軍属。身の安全とお互いの監視。
いくら子供。されど子供。口の緩い未成年達に明かす意味が分からなかった。
さらには引き止めもせず、その身の内を明かし、ついてくると来た。
一見無鉄砲な少年たちを心配しての行動に見えるが、いささかやりすぎ感が否めない。
違和感と違和感を繋いで見えたのは、今回のこの天災は起こるべくして起こったのだということ。
あの宗教団体の異様な広まり方はなぜだったのか。
表に出ていないのに着実に入信者を増やしていた。
国が何の関心も見せなかった。
誰一人としてニュースにならなかった。
兄妹が見た通り、結構強引な手も使う集団であるように見受けられる。しかし、行方不明者の報道は無かった。
ネットで少し噂になる程度。
しかしネット経由で異変を感知できるようになったのも、今回のこの事件が起きる近日中の話である。
もう隠す必要が無くなったということであったのだろうか。
その真意は測り切れないが、気づかぬうちに事は進んでいた。
それは彼の宗教団体に後ろ盾がいることを理解するのには十分で。
おいちゃんが接触してきた理由は・・・・・
とまあ、ここ最近の異様な出来事に、疑惑が浮かぶのは当然であったのだ。
・・・・・一部何の疑いも持たなかった人はいるが。
「・・・ぼくちんたちも連れて行くの・・・??」
「「!?!?」」
普段の様子からは想像もできないほどに悲しそうな声色で言うものだから。
「そ・・・・そんな!?!?」
「や・・・やっぱり・・・・おいちゃん!!何をするつもりっすか!?!?」
「お・・・お兄ちゃん・・・!!」
「・・・・・!!」
「(´・д・`)ショボーン」」
「・・・・ロロ??どうしたのぜ??」
全員が息をのむ。
ピン!と張った紐を伝うように、驚愕が伝播した。
おいちゃんは肩を震わせたまま、下に向けていた顔を両手で覆う。
「・・・・・フフフッ。」
小さな吐息のような声であったが、神経質になった体はその音を聞き逃さない。
気でも触れたか。
「フフフフ!!あっはっはっはっはっはっはっは!!はひゃひゃひゃ!!!」
彼は体をねじり、片手をロロたちの方に向けて、タンマの形をとると、
「ちょ、ちょっと待ッでなあ・・・!!はひゃ!」
と、言った。
「「「・・・・・・・。」」」
はひゃひゃという笑い声が空気に溶け込む。
「あれえ?」
なんだか様子が想像していたものと違うなあなんて。思ったり思わなかったり。
「・・・・・こ・・・これがよくある、悪役が正体を見破られたときに見せる高笑いね・・・!!!」
「なるほど・・・。こ・・・これがそうなんすね・・・・!!」
「「???」」
有名人を見るような。・・・・蜂賀は有名人であるのだが。そんな目をおいちゃんに向けるジェリーと蜂賀を見て兄妹は不思議そうな顔をしていた。
「ち・・・違えよお~!!そっ!そないなごと思うとったんがあ!!はひゃ!ハハハ!!!」
「・・・・・・・違う(0ω0´●)????」
「ちげえよお~!!!はひゃひゃ!!!」
*******
「ふう~。落ちづいたでなあ。」
しばらくして発作が収まったおいちゃんが、こんな隅っこで話すことでもねえと、中央広場にあるベンチに皆を座らせる。
ベンチに座った少年少女たちを見ながら、前に立ったおいちゃんは腰に手を当て、ひとつづつ説明してくれた。
「いんやあ。ロロぢゃんのいうどったこともあながち間違えでもねえんだども。」
「ええがあ?まず、おらは上からはなんも言われでねえのな?おめえさん達をどうごうするつもりはねえよ。」
「おめえさん達について来たのも心配だったっでのが1番の理由だでな。まあ、おらもおらで調べもんしたかったっでのもあるけんども。」
曰く。
ここ最近商売をしている職業柄、不穏なうわさが流れるようになったこと。
常連がふっと来なくなったり、軍の上層部がせわしなく動き回っていたこと。
特殊な能力を持つため、大きな事件や事故があった場合、協力要請のお願いが来るものであるのに、何の連絡もなかったこと。
さらに。
「動きが制限されてただよ。」
知り合いの軍に所属している人たちの話を聞くと、明らかに派遣されない部分が浮かび上がってきたのだとか。
正規の場所からの移動。
理由は別の人が担当するなど、引継ぎもくそもねえじゃねえと文句を言っていたそうな。
「こらあ。なんがあるなあって思うただよ。そいで今回の事でなあ。」
「・・・・なんが隠しでっどは思うとっだが、こんなことさなるう思わながっだなあ。」
んま、今回の事さ、軍上層部に何が関係があるとは分からねども。
でもよお。おらの商人の感が言うんだべなあ。
こらあ、やっでるわ。っでな。
ロロが気づいたことに商人、腹の探り合いが本業である彼が、気づかないことなどあり得ない。
少し得意げにおいちゃんは続ける。
「んで。こらあ。調べねば男がすだるってもんよお。と思うたとこでロロぢゃんが来だってわけよ。」
隠している秘密がどんなものなのか。好奇心が隠しきれていないおいちゃん。
「ちょっくら、正義でも掲げて来るばい!っづってな!!」
「・・・・・好奇心で身を滅ぼすことになるよ。それえ・・・・。」
「・・・・いくつになっでも。冒険心&好奇心さいうのは無くならねえのよ。」
もういつ死んでもええってぐれえ、十分にこの世さ楽しんだがらなあ。
最後にゃ、爆弾に火をつけてみたいお年頃なのよ。
ご老人ってつおい。
そう思うのです。




