48.春の様子
春の実家は神社である。
その神社少し小高い場所にあり、本殿からは見下ろす形であたり一帯を見渡すことが可能だ。
小高いおかげかは分からないが、隆起した地面から出てくるポアポアした何かが近づくことは無い。
ここ。春の実家である千亀利神社は今周囲の住民の避難所になっている。
本殿のみならず、庭や蔵の方にも簡易的なスペースを設け、避難してきた人々の保護にあたっている。
「それでいかがいたしました?」
春たちの居住スペース。簡素な、しかし実にこだわりぬいた外観をしている。
その奥。一番声が漏れないと考えられる部屋に3人の影。
「総理??」
豊かなつやのある黒髪を後ろで縛り、頭を下げる男に冷ややかな視線を向ける神主。そして、隣に同じように正座で座る春。
「す・・・・すまない・・・。私をここにしばらく置いてはくれないか・・・・??」
春の父、悠の話し相手はどうやら直談判しに来たらしい。
「・・・なぜこんなところにいらっしゃるのですか??非常事態ですが?」
頭を下げようと父・悠の態度は変わらない。さめざめとした視線に充てられ、総理は顔色をどんどん悪くしていった。
しばらくの沈黙ののち、溜めに溜めた怒りが口からこぼれる。
「・・・それがあなたの判断なのですね。」
「ひいっ!!」
ずざざっと膝がこすれる音がした。
彼は黒髪をたなびかせ、勢いよく立ち上がると、普段ではありえないほどの足音を立てて部屋を出て行った。
春は小さな声で「クズが」と、彼が言っていたのを聞き逃さなかった。
やれやれ。私の父は少々人情に篤い。いいところではありますがね。
春はふうっと息を吐きだし、腰を抜かした覇気のかけらもないおじさんを見つめる。父によく似た素っと切れ長な目は、暗い色を落とし、毒々しさを秘めていた。
蛇に睨まれた蛙。生きた心地がしない中年のおじさんは2周り以上も年下の小童に恐怖を抱いていることに何の疑問も抱かない。
なにせ親よりもこの子供のほうが何を考えているかわからないからだ。
ほら。今もうっすらと口端があがって・・・
「そんな。ハハハ。取って食いやしませんよ。父が決めたことに私は従います。ですからこちらのお部屋をお貸しいたしましょう。ご自由にお過ごしください。食事は・・・・「い・・・いや。それはとんでもない。ここに置かせてもらえるだけで十分だ。」・・・そうですか。」
早くこの子から離れたい一心の、哀れな蛙。
「その脂肪があればあと2日は大丈夫そうですもんね。では布団はそちらの押し入れに。私も用事がありますのでこれで。失礼しますね。」
「あ・・・・ああ。どうもありがとう。」
「いえいえ。」
やっとこれで恐怖の時間から抜け出せる。
ホッとした感情が湧き上がってきた。
春が部屋を出ていく。
「ごゆっくり」
扉があと数センチで閉まるといったところで放たれた、置き土産の皮肉が蛙の精神を削った。
*******
「私の所は大丈夫です。私じゃないところは大丈夫ではなさそうですが。」
ロロとジェリーは合流できたのか。
それならば、ほとんど心配はないですね。
パソコンを通じて確認した2人の顔+蜂賀とおじさんは元気そうだった。(みけは探索中)
「え?何~(。-´ェ`-)??その含みを持たせた言い方~??」
「また何かやらかしたの??・・・隠さずに言いなさい?後から言われたってできることもできなくなってるかもしれないじゃない。」
ロロ達は、この感じを知っていた。だが、それがいいことなのか。悪いことなのか。全く判断ダン付かない。
・・・・今回はどっちなんだ・・・??どっちなんだあ~??
「なんか期待されてるみたいですけど、違いますよ??全く期待外れだと思いますよ??」
ふむ・・・。これは・・・・・。
「この間の作戦でターゲットにしていた女性がいたじゃないですか?」
・・・・そんなに面白くない案件かもしれない。
「彼女・・・やられたかもしれないですね・・・・。あっちに持ってかれたかもしれないです。」
この間の女性とは、尾行して、蜂賀にお金を献上させたあの女性の事だろう。連絡を取ってもおかしくない、怪しまれない相手として、とてもベストなポジションだったと思うのだが・・・??
それがもう持ってかれたというのか??
昨日の今日の話だぞ??
「今日会ったばっかじゃない!?!?流石に早すぎだわ!!」
「そうだよ!!!ヾ(;・`ω・´)ノ゛数時間前の話じゃないか!!・・・・あれ??もうちょっとだっけ??・・・・昨日の話じゃないか!!」
そんな短期間で何ができるというのか。
獲物が取られたというよりは、その得体の知れない手法を不気味に感じる。
「・・・彼らは何の話さしてるだでか??」
「ああ。そんなに気にしなくて大丈夫っすよ?変に首突っ込むと余計なことないんで。」
「そうだでか?蜂賀ちゃんがあそういうならあんまり聞がんとごお。」
「それが吉っす。なんかやばい組織を内密に調査してる見たいっすけどね。」
「・・・・・もうおらだちもそれは巻き込まれてるんじゃねえが??」
後ろに控えている二人は首を突っ込まないようにした方がいいと言っているが、それができていたら今ここにはいないのである。
「彼女のGPSが何やら変な位置にあるのです。彼女の居住スペースではない。そんなところに緊急事態が発生する前と後、まったく動きがみられないのです。・・・これは私が後れを取ったということなのでしょうねえ・・・。」
ぎくりと肩を震わせたジェリーとロロ。
パソコン越しに見た春は、最初から少し機嫌が悪そうであった。
それでもまだ残虐な笑みを浮かべていなかったので、セーフティゾーン。
自分が後れを取ったという事実を口に出すことにより、イラつきがそのセーフティゾーン突き抜けてしまったらしい。
「私が目の前で獲物を取られた・・・・と。なるほどですねえ。」
それは笑顔なの・・・??パソコン越しでよかったあと思う4人であった。




