39.余震
「うわああああああああ!!!」
蜂賀の声とともに、獣も毛を逆立てた。驚きすぎて体のあらゆる筋肉が硬直していたため、彼はすぐに動くことができない。
しばらく目と目が合っている状態が続く。
先に硬直が解けたのは獣の方だった。
目をカッと開いて固まる、ロロではない人間。今までにもいろんな人間がみけの家に来ていたが、ここまで人間とは動かないものだっただろうか。
生きているのかどうかの確認はした方がいいだろう。もし死んでたらロロに報告しよう。
よく教えてくれたねって褒めてくれるかもしれない。こないだ人は死ぬと動かなくなるって聞いたから。
「ん・・・。??動かん?死??」
ぽてぽて歩いて蜂賀の足をパンチする。
・・・動かない。
今度は此奴の膝の上から確認してみよう。
「ん。・・・死んだ。」
動かなかった。これは死んでいるだろう。ロロに報告する必要がある。
こんなに短期間で学習の応用ができるとは、みけも運がいい!
みけはちゃんと学習できる子だ。
その証明を早くしなければ!!
「ロロ!!!ロロ!!!」
尻尾をフリフリ、地下室へ戻る。
気が付くと目の前に居たはずのモフモフした三角耳がいなくなっていることに気が付いた蜂賀。今見たものは現実か!?と恐ろしくなった。
思い返せば、あの獣は保護している施設内にしかいないとされている猫というものではないだろうか?
家で飼いたいと、先輩芸能人が保護施設に電話したが、断られたと言っていたのを思い出す。
どんなに飼いたくても、ある条件をクリアしていないと認められないのだそうだ。
確か、羅劫持ちか日本軍に加入しているもの。かつ犯罪履歴がないもの。後は審査が通ったものだったか・・・??
まあ、きっと疲れから見せた幻だろう。
「大丈夫~ヾ( ′д`)ノ゛???なんか悲鳴が聞こえたのと、なんか死んでるって聞いたんだけど??」
「し・・・死んでる!?!?どー言うことっすか!?全然意味わかんないんっすけど!!」
「え?同居人が、ソファー、人、動かない、死。って。」
「ええええ!?!?同居人早とちり過ぎっすよ!?!」
同居人とやらは見ていないが、どこかにいただろうか?
「へへへ~ヾ( *'∀'* )ノ゛すごくかわいく報告してくれるもんだから、上に来るの遅れちゃったよ~。ごめんねえ~ヽ(*´▽)ノ。はいこれ布団~。」
ロロの手には薄手の掛布団1枚と枕。「あざっす。」と受け取り、先ほどの夢?をロロに話した。
めちゃくちゃびっくりしたことや、ついでにロロの収入が臓器提供では!?というところまでもポロっとこぼしてしまった。
「えええええ!?!?何それ!?!?ぼくちんが臓器提供!?!?ウケるwwwwそんなことしてないよお~。」
めちゃくちゃ笑われた。
「あの最新式の奴は、ジェリーに前借して買ったんだよ~。ぼくちんの収入源は主に、採集だね~。後は作品を売ったり?結構高値で売れるんだよ~(o≧ω≦)○」
「そ・・・そうだったんすねえ。めっちゃ気になってたんすよ・・・。聞いといてよかったあ。」
聞かなかったら夜な夜な悶々としてただろうな。そう思った。
「あ、それとね~。あの猫はぼくちんの同居人だねえ~ヾ(-`ω´-o)。猫っていうかなんて言うか。ちょっと違うんだけどねえ~。」
「あ、そうなんすね。」
臓器提供じゃなかったことに比べれば家に猫がいるくらいどうってことないだろう。蜂賀は猫について特に追及することなく、よかった~と寝る準備を始めようとした。
「あ、お風呂沸かしてあるから、入りたいときに入ってねえ~v(・ε・v)」
え、マジっすか。なんでもやってくれるし、本当にここ住みたくなってきた。
もう夜も遅いし、風呂を頂こう。
「じゃあ、ありがたく頂k-ーーーー
「「ん???」」
2人同時に声をあげた。そして顔を見合わせる。
「今・・・揺れたっすかね??」
「うん・・・。多分??」
どうやら、ロロさんも感じたらしい。自分の疲れによるものではないと確信した。
何となく家全体が揺れるような感覚・・・。激しくはないが、とても大きく揺れてた。
そしてそれは今も続いている。
「地震っすかね?」
「そうだねえ~(o-`д-)。たまにあるからそんなに珍しいものでもないけど、怖いよねえ~。」
「そうっすねえ。やっぱ洞窟暮らしだと崩れるのとか怖くないんすか?今もちょっと俺怖いんすけど。」
年に3回ほど、大きな揺れが来るので地震には十分に気を付けている。対策としてはロロ式トーテムポールのほかに、パール君直伝の不可思議な模様を壁のあちこちに描いているくらいだが。
驚くほどにこれが崩れ防止に効果抜群なのだ。
「安心して~(*′∀`)ノ。ぼくちんの家欠片も崩れないから~。お隣のお隣のお部屋が日々入ったときも、びくともしなかったよ~!!」
「あ、あのトーテムポールの!!確かにたくさん刺さってますもんねえ~。」
「そうそう!それもあるねえ。」
いかにこの家(洞窟)が安全かをロロが蜂賀に説明していた時。
『おい!!ロロ!!!』
ロロ以外の人間が家にいるときは、滅多に声を出さないパール君が声を出した。もちろんこの声は蜂賀にも聞こえている。
「な・・・なんすかこの声!?!?全体に響いてるような・・・!?!?」
「パール君!!」
パールに何かあったのか。ロロは急いで地下室に降りて行った。
今まで見たことがない血相で駆けていくロロに、慌てて蜂賀も彼を追いかけた。
「ロロさん!?・・・ロロさーん??」
地下への階段を降りていく。鈍い光しか差し込まない地下室の様子に、ひっぴり腰になっていく蜂賀。地下室の光源はほとんどない様子だった。
「ロロ・・・さん??」
地下室への最後の階段を降りた彼の目に映るのは、何もない空間に話しかけるロロの姿だった。唯一の小さなランプがロロと、その周囲に散らばる絵描きの道具、完成していると思われる作品の数々を鈍く照らしていた。
「何があったの!?!?」
『分からねえ・・・。だが、今まで感じたことのねえ何かを感じるんだ・・・。』
「・・・・それはどういうこと??」
『・・・俺たちと同じ存在か・・・??否、似ているが全く違うもの??それが力を行使したんだ・・・。背筋の凍るような・・・なんだこれは・・・。』
ロロと見えない何かの会話。声のトーンからして話しかけられるような状況ではない。
彼らの邪魔をしないように、とりあえず、周囲の様子を確認する芸能人。
彼らの雰囲気とは対照的に、蜂賀はすげえ~!!と内心興奮していた。
あれなんだ?すごくきれいだなあ~。あ、あれは何かの動物かな~?あ、脚立だ。確かにここはすごく天井が高いかも・・・・はあ!?!?!?
て・・・天井から壁にかけての絵!?!?す・・・すごくきれいだ・・・。
蜂賀は、ぽけーっと周囲を見ていた。その間もロロたちの会話は続く。
『とりあえずは、一回外の様子を見ないと分からねえか・・・。洞窟の中は俺の支配している空間だからな・・・。実際の被害がどの程度か感じるのは難しい。ロロ、外の確認をして来い。』
どうやら、外に出るらしい。
『あと、こいつもつれてけ。一応ちゃんと力は持ってる。』
声の主がそういと、ロロに向かって飛びつく何か。小型で、三角耳で、白くて・・・。
あ、さっき見た猫だあ~。
蚊帳の外にいる男の脳内ではロロの作品を本当に持って帰っていいのかどうなのか。改めてその問題だけがぐるぐる循環していた。




